上 下
278 / 525
第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第276話 夏の合宿は女の戦場 (2)

しおりを挟む
お前たちスコップは持ったか?

「「「はい!」」」

帽子はちゃんと被れよ、熱中症はシャレにならんからな。具合が悪かったら作業途中でもちゃんと申告する事、水分と塩分の摂取は欠かすなよ。それじゃ出発。

今年は昨年好評だった凸凹フカフカ砂浜ダッシュからスタートです。映像研究会部長の吉田は昨年部長だった三峯先輩ドSと違って常識人。映像の撮り方も迫力のあるアクション系ではなく表情やら人間性を切り抜く様なドキュメンタリーチックなものを好んで作ります。
玄人好みと言うかあまり大衆向けではない気がしなくもないんですが、ヨウツーベのアップはあくまで部活動の一環。当初の目的である不登校生徒問題や部費確保、同好会存続の為の実績作りはすでにこなし終わってるので、うるさく言うつもりはありません。
流石に三年目ともなると他の動画配信者のクオリティーも上がってきているため、以前の様なトップ配信者の先行利益的な売り上げは無くなっていますが、これは最初から分かっていた事。今後ヨウツーベ配信をどうするか、映像の方向性をどうするかは次の世代が考えるべき問題。俺たちは下地を作っておしまい、老兵はただ去るのみなのです。

吉田~、そっちの準備は大丈夫か?
「おう、佐々木。ウチの連中もだいぶ慣れて来てるからな。ヨウツーベ動画の方は任せてくれ。あと映像研究会の各映像大会出品作品の為にそっちの映像を使わせてもらう件、了承撮れたか?」

あぁ、ウチの連中は問題ない。あらかじめ映像コンテンツへの使用は同意書取ってるからな。その辺は抜かりないさ。
じゃあ、今年もよろしく。体調管理だけは気を付けろよ、お前の所の女子、夢中になると我を忘れるから。
「アハハハ、面目もない。水分摂取はこまめに摂らせる事にする。こっちこそよろしく。」

俺たちは互いの拳を打ち鳴らし、海岸沿いの砂浜戦場に向かうのであった。


(side:野口絵実)

「みっちゃんくみちゃん、今日もお疲れ~。」
私は一日の訓練を終え備品の整理を行っている二人に声を掛けた。

「お疲れ絵実ちゃん。佐々木君今日も飛ばしてたね~、まさか初日から全員と砂浜ダッシュ勝負するとは思わなかったよ。どれだけ体力有るんだか。でも不思議なのがあれだけフカフカの砂浜の上を走ってるのに、佐々木君だけ全然砂を飛ばしてないの。
ろくに足跡すら残らないってどうなってるの?
それでいて自己鍛錬とか言ってる時にはしっかり砂を蹴飛ばしてるんだよね、訳分かんない。絵実ちゃん何か知ってる?」

「う~ん、流石に私もあれはよく分かんなかった。佐々木君て時々人間離れすることがあるから、そう言う事もあるのかもって軽く流すことにしてるし。
深く考えたら負けなんだと思うよ、きっと。」

「お~、流石は佐々木君の飼い主。彼の事がよく分かっていらっしゃる。本当に冗談抜きでしっかり手綱を握っておいてね、私たちまだ死にたくないから。」
真剣な顔をして私に懇願する二人。本当に去年の合宿でこの二人に何があったの?

「でも絵実ちゃんもこの合宿で決めに行くんでしょ?」
ん?何の事だろう。私が訝しげな顔をすると呆れたような顔をする二人。

「もう絵実もしっかりしてよ、私たち三年生なんだよ?もう半年もしたら卒業なんだよ?ここで意中の相手をしっかりGETしておかないと、チャンスはいつまでも待ってはくれないんだよ?」
「そうだよ、男子たちはそれぞれどの学校に行くか分からないんだから、しっかりとした関係を築いておかないと。懐かしい青春の思い出なんて言ってたら泣きを見るのはこっちなんだからね。」
二人に言われハッと気付く、もう卒業なんだ。あまりにも騒がしく、あまりにも刺激的で、あまりにも濃厚な日々で。だから勘違いをしていた、思い違いをしてしまっていた、こんな毎日がいつまでも続くだなんて。
佐々木君があまりに飄々としているから、いつもバカやってのっぺりしてるから。
彼は本当は凄い人だって言う事をすっかり忘れてしまっていた。
鬼ごっこ同好会を立ち上げて、不登校をなくして、モデルをやって、ドラマにも出て、作曲家で、自身も芸能人で。
私は何にもない、でも彼の傍にいたい、彼の傍にいるって決めたじゃないか。

女野口絵実、この夏、本気見せます獲りに行きます
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです

.
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...