男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora

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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第237話 雪山ラプソディー (4)

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数メートル先もハッキリとしない猛吹雪、まるで白い天幕に覆われ自分だけが隔離されて仕舞った様な感覚。ホワイトアウトとは良く言ったものだ。視界が白一色で、距離感がまるで分からない。
そんな危険極まりない野外に連れ出されたのは誰か?はい、わたくしお茶の間の箸休め、のっぺり佐々木で御座います。
緊急事態であるのにも拘らず、山姫さんはこののっぺりに何の用なんでしょうか?先程から悪い予感が止まりません。 連れて来られた先にあるのはスノーモービル?後方には二台のソリが連結されています。

「なぁ少年、あの山で滝行をやってるって事は、もう気配は読める様になったんだよね?」
山姫さんの言っている事は増山のおっちゃんが話していた感覚の事だろうか。
「メイドのお嬢さんが言うにはかなり広範囲で気配を飛ばす事も出来るそうじゃないか。
私も出来るには出来るんだけど、規模が大きいのと大雑把でね。大体の方向性は分かるんだけど、ピンポイントの特定が苦手で。
普段は代わりのモノが捜索を担当するんだけど生憎今回はいなくてね。少年に代わりを頼みたい。」

えぇ~、行き成り言われてもそんな事出来る訳・・・うん、なんか出来そう。

「とりあえずの方向は、ロッジから見て左側かな。」
俺は山姫さんが指差す方向を向きゆっくりと目を閉じた。

あ、本当に何かいる。

「見つけた様ね、現場に近づいたら指示をお願い。運転は任せてちょうだい、ここの地形は完璧に把握してるから。目隠ししたって山頂まで行けるわよ?」

俺たちは白い闇の中をただひたすら駆け抜けた。山姫さんはその言葉通り、完全にコースを把握しているようだった。

「少年、本当に気配はこの辺なのね?
そうするとコースアウトした可能性が大ね。
もう一度、細かく探って見てくれる?」

俺はゴーグルを外し、目を閉じる。
焦る心を沈めただただ周囲と一体化する。

全ての音が消える。吹雪の音も、木々の間から聞こえる風鳴りも、スノーモービルのエンジン音も。

ここは舞台、俺はそこに立つ一人のモデル。

"ミツケタ"

自然と身体が動く。
雪山だと言うのに雪に沈む事もなく、優雅に進める歩み。

地形の把握、重心の掛け方、身体の使い方。
鬼ごっこで鍛えてきた、モデルとして培ってきた。
その全てが融合し昇華する。

"ふわっ"

舞い降りる。
彼はそうとしか表現が出来ない程、優しく優雅に三人の遭難者の元に現れた。

こちらを見て何か呟くビックジョー。救助が来た事でこれ迄の緊張の糸が切れたのだろう、彼は意識を手放してしまった。側に寄り添う女性二名も同様にゆっくりと倒れ込むのだった。

「"要救助者三名発見。発見時には意識があったが、現在意識不明。一名は右足に負傷が診られる模様、搬送準備頼む。此れよりそちらに移送する。"」
"了解。こちらの準備は完了している。順次移送されたし。"
「"了解。連絡を終わる。"」

「ビックジョー、良く頑張ったな。お前は大した漢だよ。」
俺は両手で彼を抱き上げると、やりきった顔のヒーローにそっと語り掛けるのであった。


(side : 大塚丈一郎)

「う、う~ん。」
ゆっくりと目を開く。徐々に覚醒していく意識、ここは一体…。

「あ、目が覚めたんだ。」
声のする方へ顔を向けると柔らかな髪を靡かせた一人の天使。

「やはり俺は死んだのか・・・。」
短かったが悪くない人生だった。悔やまれるのはあの二人を助ける事が出来なかった事。
「渡辺真由美、お前も死んでしまったんだな。助ける事が出来なくて悪かった。」
俺は目の前の天使に深く頭を下げるのだった。

「何言ってるのよ、助かったの。私たちみんな救助されたの、ここは病院よ。何、あなた未だ寝惚けてるの?」

「いや、だってお前は天使になって、だってそんなに綺麗になって…。」

「ば、馬鹿、何言っちゃってんのよ。それより足の方はどうなのよ、痛んだりしてないかしら?」
顔を朱に染めながら聞いてくる彼女。
そう言えば確か右足を骨折してたはず、俺は布団を剥いで右足を確認する。その足は骨折のため大きく腫れ上がって…いない?包帯は巻かれているが足はスラッとしたままだ。無理に動かさない限り痛みも無いだろう。
それに身体に全く疲れが溜まっていない。
一体どうしたというのか?

「もしかして貴方も?私も以前傷めて可動域が狭くなっていた肩が、スムーズに回るようになってるのよね。」

そう言えば彼女は舞台裏で肩を痛めた事があったはず。その肩をぐるぐる回す彼女に目を見開く俺。
じゃあ、俺が見たあの天使は本当の事だったってのかよ。

「それより貴方に伝えたい事があったの。私を助けに来てくれてありがとう。」
"チュッ"
言うや否や頬に軽い口づけをする彼女。
え?いや、その、えぇ~!?

"バンッ"
突然開かれる扉、
「大塚さ~ん、心配じだんでずじょ~!」
そこには涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした木島由香が立っていた。

「待て、待つんだ木島さん、取り敢えずタオルで顔を拭こう。」

「大塚ざ~ん。」

「うゎ~!待ってくれ、渡辺部長~、どうにかしてくれー!」

「あっはははははっ。」

そこには無事生還したことを喜び会う若者たちの姿があった。
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