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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第206話 思い出はコーヒーの香り (3)

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「ねぇねぇ、この後何処に行こうか?」

「ちょっと待って、今パンフレットで確認するから。
えっとね~、"二年C組執事喫茶"?
執事喫茶ってあの秋野原で流行りだしてるって言う奴かな?ちょっと気になるんだけど。」
顔を見合せる二人。

「「行って見ようか、執事喫茶!」」
乙女は何時でもロマンを忘れないのだ。

「結構並んだね。」
「そうね、でもそれだけ人気があるって事でしょう?それって期待大じゃない?」

「次のお嬢様方、お待たせ致しました。二年C組執事喫茶、夢空間をお楽しみ下さい。」
礼儀正しくお辞儀をする案内係の執事さん。何このクオリティー、否が応にも高まる期待。

「「「お帰りなさいませ、お嬢様方。」」」
優雅に振り返り挨拶をくれる執事さん達。
キャーキャー、何このドリームランド、みんな執事服がピシッと決まっていて凄く格好良いんですけど~!

「お嬢様方、長旅でお疲れではないでしょうか。お席にご案内致します。
どうぞこちらへ。」
席へと誘導してくれる執事さん。その所作、歩く姿勢、マジ執事さん。
キャー、少女漫画の世界じゃない、完璧なんですけど~!

「お嬢様、本日のお飲み物は如何いかが致しましょう?」

「えっ、あの、その、な、何か温かい物を頂ければと。」

「そうですね、それでしたらコーヒーなど如何でしょう?身体が暖まって宜しいかと。」

「はっはい、では二人分お願いします。」

「畏まりました。御ゆっくりご歓談をお楽しみ下さい。」(ニッコリ)
優雅に一礼をして去って行く執事さん。どうしようどうしよう、私執事さんに微笑まれちゃったんですけど。
えっ、微笑まれたのは私の方?違うでしょう、私よ。
それはひとまず置いて起きましょう、今はそれどころじゃないわ、何よここ、文化祭でやっていいレベルじゃ無いじゃない。二年C組、どうなってるのよ。
私たちはこの圧倒的な夢空間に、ただただ戦慄するのでした。


クッハハハハハッ、圧倒的ではないか、我が軍は。
どの席も恍惚とした表情で執事さんを見詰めるお嬢様方、お客様満足度九十九パーセント達成ではないでしょうか!?
今回の執事喫茶、無論ただの執事喫茶ではございません。
我がマブダチ、真弓ちゃんの協力のもと、執事服は全てクラスメート女子の身体に合わせてサイズ調整してあります。スタジオGreenスタッフの皆さん、嬉々として協力して下さいました。
そのうえ、わたくし究極の指導官をご用意致しました。
元ユーロッパ王宮勤務、本物の執事を知る唯一の人物、我が家のメイドノエルさんです。(拍手)
彼女の凄い所は我が国の執事喫茶を理解した上で執事の基本を叩き込んだ所。
結果誕生したのがこの"女子の理想、漫画に出て来そうな執事軍団"。
ノエルさん、いい仕事するわ~。一緒に真弓ちゃんオススメの執事喫茶に通ったのは無駄じゃなかったわ~。

「ちょっとどうなってるのよ、何で執事喫茶なのに男性執事がいないのよ!一人くらいいるんでしょ、さっさと出しなさいよ!」

うゎ~、やっぱり出たよ、コンセプトが分かってないお嬢様方。
お~い、鈴木君堀田君西山君木村君、出番だよ~。ちょっと早めだけど出動だよ~。


「「「スタンッ、スタンッ、スタンッ」」」

「どうかなさいましたか、お嬢様方?」

「何よ、私は今この執事と話しをしてるのよ、メイドの出る幕じゃないわ・・・えっ?」

美しい立ち姿勢のメイド達。
スラリとした高身長の者、彼女の後ろに隠れる様にこちらを伺う者。でも彼女たち?彼ら?えっ、解らない、何?でも凄く美しくて・・・。

「お嬢様、少し気持ちが高ぶり過ぎだぞ?レディーがそんなでは行けないな。」
高身長の凛々しくも美しいメイドが言う。

「お嬢様、あの僕、喧嘩は良くないと思う。あ、いえ、思いますです。」
後ろに控えたメイドが上目遣いで話した後、恥ずかしそうに顔を隠す。

「「「お嬢様方、わたくしどものおもてなし、お受け頂けませんか?」」」(ニッコリ)

「あ、う、あ、あ、う~~ん。」(ドサッ)

「執事の皆さん、お嬢様方はお疲れの様です。控えの間保健室へご案内してくださいますか?」

「「「はい、メイド長。」」」

「当屋敷へ御逗留の旦那様、お嬢様方。お騒がせ致しまして、申し訳ありません。
引き続き癒しの夢空間、二年C組執事喫茶をお楽しみ下さい。」

「「「パサッ」」」
一切の乱れもない優雅なカーテシー。
メイド達はゆったりときびすを返し、使用人室へと戻って行った。

キャー、えっ何、キャー、アレって伝説の男の娘って奴?えっ何よあの素敵なお姉様、もしかしなくても男子達なの?何この背徳感、私新しい扉が完全に開いちゃったんですけど~!!
キャ~~~~~!?❤️

止まらぬ悲鳴、治まらぬ興奮、彼女たちは知ってしまった、新たなる世界。
教室世界は混沌の中に突入するのであった。


後日。
「「「おい、佐々木」」」
どうしたの男子の皆さん、そんな複雑な顔して。悩み過ぎは身体に良くないよ?

「「「最近、女子連中が俺たちの事をお姉様って呼んで見詰めて来るんだが!?」」」
いや、それはその、皆がそれだけ魅力的って事じゃないかな?

「佐々木君、女子たちが僕の事見ながら物欲しそうな顔したり、頭を撫でさせてくれませんかって言って来たりするんだけど?」
いや、その、西山君はとても男らしいと思うよ、うん。

「「「よそのクラスの子が、私たち女子にラブレターを渡して来るんだけど?」」」
あら、女子の皆さんもお揃いで。

え~っと、さっきから皆さんどうしたのかな?
とりあえずその手に持つ張り扇を下に置かない?
ジリジリ近付かれると怖いんだけど?
話し合いをしましょう、話し合いを、同じクラスメート、話せば分かり合えるはず、そうしましょう。

「「「佐々木!覚悟しろ!!」」」

ギャーーーーーーーーー!!
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