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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー
第203話 ドラマの反響
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「う、う~ん。」
大きく伸びをしてから布団を出る。
寝間着姿のまま階段を降り、リビングへ。
欠伸を一つ吐いて、いつもの席に着く。
そっと差し出される湯飲み。
”ズズズズズズズッ”
渋めの緑茶、温度は丁度飲み頃。
庭先では黒丸がトンボを追いかけている。
「おはようノエル。今朝はハムエッグとパンでお願い。飲み物はホットミルクで。」
「畏まりました、Saki様。」
二階の自室に戻り制服へ着替える。
今日も一日が始まる。
「おっはよ~っす、皆さん朝からご機嫌だね、何かいいことでもあったの?
おはよう木村君、もしかしてスッピン?それってヤバくない?女子群がってきちゃうんじゃない、大丈夫?」
「あぁ、佐々木おはよう。この前話した私立桜泉学園の内定が決まってな。そろそろ素顔を隠すのも限界が来てたんで、この際だからこの顔で過ごす事にした。
お前たちの協力もあって、精神的にかなり強くなった様でな。鈴木医師にも太鼓判を貰えるほどにはなったよ。まだ幼い子に飛び掛かられると一瞬ひるむが、恐怖心は抱かなくなったよ。この世にはもっと怖いものがたくさんあると知ったのが良かったのかもしれないな。」(遠い目)
うん?そうか?
まぁ、世の中怖いものだらけだし、いいんじゃないか。がんばれよ、英雄君。
話は変わるけど、何でクラスの皆さんこんなに騒いでるん?おっちゃんにも教えてクレメンス?
「お前昨日のドラマ見なかったのか?石川先輩の”学園探偵ゼット・あぶない二人”。
俺たちが出演した回が昨日放映されたんだ。」
あ~、あのちょい役やった奴、昨日だったんだ。録画はしてあるんだけどまだ見てないや、昨夜は遅くまで仕事してたんだよね。なんか月子さんから新曲寄越せってせっつかれてさ、俺あの人に逆らえる気がしない。
「それはなんか悪かったな、月子姉さんにはほどほどにする様に言っておく。それでドラマの方なんだが、お前のやった敵役のボス、ものすごい話題になってるぞ。」
は?
チョッと待って、あれって一瞬よ?俺のやった事って、立って歩いて「行くぞ」って言っただけよ?
話題になる要素あるの?
「お前も少しはSNSとか気にしろ。話題トップが学園探偵ゼット絡みの記事で埋め尽くされてるぞ。特に謎のボスは誰かって事で論争が起きている。」
いやいやちょっと待とう、あの仮面、取って出るのは”のっぺりくん”よ?そんなんバレたら俺殺されちゃうじゃん。
またですか、また封印ネタが増えちゃうんですか!?
”ピリピリピリ“
おっとスマホが呼んでいる。
おや、こんな時間に町田さんからレインって珍しい、なになに?
”おはようございます若。学園探偵ゼットの監督より、若を含めたお三方へ出演依頼が来ておりますがいかがなさいましょうか?”
・・・Oh,No~。orz
(side:西方澄子)
「何なのよこれは、どう言う事だか説明しなさい!」
澄子は苛立たしげに社長室のデスクに拳を打ち付けた。
「も、申し訳ありません。社長にはゴードンさんの要望は出来る限り聞くようにと仰せつかっていたものですから。」
この度の失態、それは今人気の学園ドラマ「学園探偵ゼット・あぶない二人」に出演オファーがあったのにも拘らず、それを蹴ってしまった事であった。
役どころは物語にほとんど絡まない端役。背後に大物の敵が控えている事を匂わすだけの、セリフも一つしかないつまらないもの。
澄子自身、台本を渡されてふざけるなと思ったほどであった。
配役が決まったのも他の事務所に断られて急遽回って来たやっつけ仕事。何の旨味もなく、新人剛田清史の経験になればと送り出しただけに過ぎなかった。
清史が現場でへそを曲げても致し方が無いとは思っていたし、すぐに引き上げた判断自体は間違っていたとは思っていない。
問題はその後なのだ。
清史の代わりに入った代役、この人物の演技が、今や世間の話題を独り占めしてしまっているのだ。
「で、この役者が誰なのか分かっているんでしょうね。」
「いえ、それが全く。私どもはすぐに現場を離れてしまっており、その後急遽配役されたとしか。現場にはほかに主役のスタジオCherry所属石川洋一君と、今回代役で呼ばれたスタジオS&B所属の木村君、吉村君の二人しか。」
スタジオCherry、確か"hiroshi"が所属している弱小芸能事務所。在籍者はこのドラマの主役の二人と"hiroshi"のみ。まさかこの役者は"hiroshi"?
彼のカリスマ性ならありうるのかもしれない。
「チィッ、使えないわね。まぁいいわ、この件に関しては致し方が無いとして、今後学園探偵ゼットにウチの人間を入れる手筈は整ってるんでしょうね?」
「それが、社長が仰られる様な主人公側に付くような役柄になると難しいかと。敵役でしたら今後何とか入れそうですが、いつものように無理やり役柄を変更させることは難しいと思われます。
このドラマはスポンサー企業が皇グループで占められているので、こちら側があまり強く出れない状態でして。」
くそ、本当にイライラする。今話題の人気ドラマに西京芸能の人間が一人も出ていない?冗談にもほどがある。しかもテレビ局に対して圧力もかけられない。相手は大企業グループがバックについている、そんなことをしたら今度はこっちが干されてしまう。
西方澄子は知らなかった。
かつて自分が追い出した人間が、二つの芸能事務所に係わっていると言う事を。
そしてその人物の元、怪物たちが呻き声を上げようとしていると言う事を。
彼女は知らなかった、これから起きるであろうさらなる混乱を。
芸能界は今、激動の時代を迎えようとしていた。
大きく伸びをしてから布団を出る。
寝間着姿のまま階段を降り、リビングへ。
欠伸を一つ吐いて、いつもの席に着く。
そっと差し出される湯飲み。
”ズズズズズズズッ”
渋めの緑茶、温度は丁度飲み頃。
庭先では黒丸がトンボを追いかけている。
「おはようノエル。今朝はハムエッグとパンでお願い。飲み物はホットミルクで。」
「畏まりました、Saki様。」
二階の自室に戻り制服へ着替える。
今日も一日が始まる。
「おっはよ~っす、皆さん朝からご機嫌だね、何かいいことでもあったの?
おはよう木村君、もしかしてスッピン?それってヤバくない?女子群がってきちゃうんじゃない、大丈夫?」
「あぁ、佐々木おはよう。この前話した私立桜泉学園の内定が決まってな。そろそろ素顔を隠すのも限界が来てたんで、この際だからこの顔で過ごす事にした。
お前たちの協力もあって、精神的にかなり強くなった様でな。鈴木医師にも太鼓判を貰えるほどにはなったよ。まだ幼い子に飛び掛かられると一瞬ひるむが、恐怖心は抱かなくなったよ。この世にはもっと怖いものがたくさんあると知ったのが良かったのかもしれないな。」(遠い目)
うん?そうか?
まぁ、世の中怖いものだらけだし、いいんじゃないか。がんばれよ、英雄君。
話は変わるけど、何でクラスの皆さんこんなに騒いでるん?おっちゃんにも教えてクレメンス?
「お前昨日のドラマ見なかったのか?石川先輩の”学園探偵ゼット・あぶない二人”。
俺たちが出演した回が昨日放映されたんだ。」
あ~、あのちょい役やった奴、昨日だったんだ。録画はしてあるんだけどまだ見てないや、昨夜は遅くまで仕事してたんだよね。なんか月子さんから新曲寄越せってせっつかれてさ、俺あの人に逆らえる気がしない。
「それはなんか悪かったな、月子姉さんにはほどほどにする様に言っておく。それでドラマの方なんだが、お前のやった敵役のボス、ものすごい話題になってるぞ。」
は?
チョッと待って、あれって一瞬よ?俺のやった事って、立って歩いて「行くぞ」って言っただけよ?
話題になる要素あるの?
「お前も少しはSNSとか気にしろ。話題トップが学園探偵ゼット絡みの記事で埋め尽くされてるぞ。特に謎のボスは誰かって事で論争が起きている。」
いやいやちょっと待とう、あの仮面、取って出るのは”のっぺりくん”よ?そんなんバレたら俺殺されちゃうじゃん。
またですか、また封印ネタが増えちゃうんですか!?
”ピリピリピリ“
おっとスマホが呼んでいる。
おや、こんな時間に町田さんからレインって珍しい、なになに?
”おはようございます若。学園探偵ゼットの監督より、若を含めたお三方へ出演依頼が来ておりますがいかがなさいましょうか?”
・・・Oh,No~。orz
(side:西方澄子)
「何なのよこれは、どう言う事だか説明しなさい!」
澄子は苛立たしげに社長室のデスクに拳を打ち付けた。
「も、申し訳ありません。社長にはゴードンさんの要望は出来る限り聞くようにと仰せつかっていたものですから。」
この度の失態、それは今人気の学園ドラマ「学園探偵ゼット・あぶない二人」に出演オファーがあったのにも拘らず、それを蹴ってしまった事であった。
役どころは物語にほとんど絡まない端役。背後に大物の敵が控えている事を匂わすだけの、セリフも一つしかないつまらないもの。
澄子自身、台本を渡されてふざけるなと思ったほどであった。
配役が決まったのも他の事務所に断られて急遽回って来たやっつけ仕事。何の旨味もなく、新人剛田清史の経験になればと送り出しただけに過ぎなかった。
清史が現場でへそを曲げても致し方が無いとは思っていたし、すぐに引き上げた判断自体は間違っていたとは思っていない。
問題はその後なのだ。
清史の代わりに入った代役、この人物の演技が、今や世間の話題を独り占めしてしまっているのだ。
「で、この役者が誰なのか分かっているんでしょうね。」
「いえ、それが全く。私どもはすぐに現場を離れてしまっており、その後急遽配役されたとしか。現場にはほかに主役のスタジオCherry所属石川洋一君と、今回代役で呼ばれたスタジオS&B所属の木村君、吉村君の二人しか。」
スタジオCherry、確か"hiroshi"が所属している弱小芸能事務所。在籍者はこのドラマの主役の二人と"hiroshi"のみ。まさかこの役者は"hiroshi"?
彼のカリスマ性ならありうるのかもしれない。
「チィッ、使えないわね。まぁいいわ、この件に関しては致し方が無いとして、今後学園探偵ゼットにウチの人間を入れる手筈は整ってるんでしょうね?」
「それが、社長が仰られる様な主人公側に付くような役柄になると難しいかと。敵役でしたら今後何とか入れそうですが、いつものように無理やり役柄を変更させることは難しいと思われます。
このドラマはスポンサー企業が皇グループで占められているので、こちら側があまり強く出れない状態でして。」
くそ、本当にイライラする。今話題の人気ドラマに西京芸能の人間が一人も出ていない?冗談にもほどがある。しかもテレビ局に対して圧力もかけられない。相手は大企業グループがバックについている、そんなことをしたら今度はこっちが干されてしまう。
西方澄子は知らなかった。
かつて自分が追い出した人間が、二つの芸能事務所に係わっていると言う事を。
そしてその人物の元、怪物たちが呻き声を上げようとしていると言う事を。
彼女は知らなかった、これから起きるであろうさらなる混乱を。
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