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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第176話 進路説明会だそうです (2)

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「皆さん静粛に、落ち着いて下さい。」

ひろし様降臨より現在。体育館は喧騒に包まれております。どうも、俺です。
誰も先生の話しなんぞ聞いておりません。本当にどうするの、これ。
あ、壇上に誰か出て来た。
あれって康太君じゃね?康太君来てたんだ。今にも頭抱えそうな顔してるし、後ろにいるの確かマネジメント部の吉川さんじゃん。二人とも御愁傷様です。

「え~、私立桜泉学園中等部の高木康太です。この学校には小学校時代の友人も通っているので、今日はとても楽しみにしていました。いましたが・・・、うちの馬鹿が何かごめん。
親友~、悪い、僕じゃどうにもならない。済まないけどあれやって!」

"ブフッ"
はぁ~?何言っちゃってんのよ康太君。
"あれ"やってって"あれ"だよね。
えぇ~、やるの~?
まぁ、親友の頼みじゃやるけどさ~。
はぁ~。
木村君、悪い。ちょっと抜ける。


"!?"
喧騒が止まる
先ほどまで騒いでいた生徒が
興奮を隠そうともしなかった保護者が
その動きを一斉に止める

"たんったんったんっ"

一人の男子生徒が
壇上に向けて歩を進める。

彼は木製階段の前で足を止めると懐からコンパクトを取り出し、おもむろにメイクを始めた。
その間、二~三分。

"パチンッ"
コンパクトを閉じる音がやけに大きく響く。
"たんったんったんったんっ"
階段を上る足の音
スラッと伸びた背筋
普段見慣れた筈の学生服が
まるで彼の為に作られた
オーダーメードの逸品の様に

「やぁ、諸君。"Saki"だ。」

彼らは今、伝説のモデル"Persona"との邂逅を果たした。


「いや親友、マジ助かった。」
説明会の為に用意された関係者控え室。
互いにテーブルを挟み休憩する俺たち。
事態はなんとか終息したが、説明会としてアレで良かったのかどうか…。
目の前には頭を深々と下げる康太君。
まぁ、あの状況じゃ仕様がないよね。
誰も話しを聞ける状態じゃ無かったし。
でもさっきのアレ何?
大物政治家の応援演説か何か?
分刻みのスケジュールなのかな?
だったらやらない方が良くない?
って言うか、うちの学校以外だったら暴動起きるか会場全滅よ?

乾いた笑いを浮かべる康太君。眼が泳ぐ吉川さん。
「アレね、各学校からの要望だったんだよ。私立桜泉学園としては反対したんだけどね。」
各中学校への学校説明会出席。
これは桜泉学園の男子生徒としては当然の義務。
各中学校の進路担当者はそこを突いてきた。
曰く、桜泉学園男子生徒たる"ひろし君"を派遣して欲しいと。
その要望のあまりの多さに頭を抱えた学園であったが、そこはひろし様、器が違う。
"だったら全部行きましょう"(満面の笑み)
それなら不公平感は生まれない。
出演が短い時間でも文句は言えない。
考え得る中での最善策。
ひろし様、各学校行脚の真っ最中であります。(合掌)

いや~、今頃他の中学校阿鼻叫喚の騒ぎじゃね?笑えないわ~。

「で、親友、さっきのが前に話ししてたペルソナモードって奴。」

そうだよ、"Saki"ってのがモデル名。自身の技術を全面に出した、ほぼほぼ化粧した俺だね。
影響は"Noir"よりかなりマイルドになっております。
因みに大崎先生はもっと凄いからね。
あの人ハッキリ言って化け物よ?
会場の観客を全て掌握するって、意味分からないから。
吉川さん、さっきから黙っちゃってどうしたの?

「いえ、佐々木さんのその顔なら、うちのスカウト余裕でイケると思いまして。」

はぁ?
あのね、俺のっぺりよ、審査通る訳無いでしょうが。
仮に通ったとして、女子生徒に素顔がバレたらどうするの?炎上騒ぎなんてもんじゃないからね?燃やされるの俺だから。
仮に桜泉学園に行くとなったら、始めから素顔晒すからね。

"はぁ~、そうですよね~。"
何か落ち込む吉川さん。
自分で言っておいて何だけと、ダメージデカイぞこれ。
完全なる自虐行為、自業自得で独り傷つく繊細な私なのでした、まる。
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