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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第143話 去らば洋一君、また会う日まで。 (4)

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「石川君、今日はありがとうね。もうベスポジ、あんなにいい場所で撮影させてもらって良かったの?」

「あぁ斉藤、今日はよろしくな。俺の最後の雄姿だ、しっかり撮ってくれよ。」

「うん、任せておいて。
石川君たちのお陰で予算が潤沢だからね。いいカメラ買っちゃいました♪
今年卒業って言うのが残念だけど、後輩も育ってるし映像研究会は安泰だよ。
今まで本当にありがとうね。」

「それを言ったら、こっちだってずっと世話になりっぱなしじゃないか。今の鬼ごっこ同好会があるのは、斉藤たち映像研究会のお陰だ。今まで本当にありがとう。これからも後輩たちをよろしく頼む。」

「あの人たちって、今日一緒に仕事するモデルさん?なんか皆格好いいって言うかオーラがあるね。」

「そうだな、やっぱりプロって奴は俺たちとは住んでる世界が違うのかもな。
じゃあ俺も準備があるから。
絶対カメラは止めるなよ?」

「?うん、分かった。それじゃ頑張ってね。」

「応!行ってくる。」

石川洋一はクルリと背を向け、一人舞台裏戦場へと向かう

「傾注せよ。」

「「「はい、"Saki"講師!」」」

「これまでのあなた方は決してモデルなどではありません。ただ、服を着て歩くだけのマネキンです。」

「「「はい、"Saki"講師!」」」

「今日、この時から、あなた方のモデル人生が始まります。私は最初に言いましたね、あなた方には"ペルソナ"になって貰うと。
頂きは遥か彼方、世界で待ってますよ。」

「「「はい、"Saki"講師!」」」

「では逝きなさい、我が教え子たち。先ずはこの国を、至るは世界!
変革の始まりです!!」

「「「はい!"Saki"講師!!」」」

今ここに本物のモデル戦士が誕生した。
いざ、ランウェイ戦場へ。


(side : 雑誌記者)

「"ティーンBoys"さん、おはようございます。」

「あら、"街角男子"さん、おはようございます。もう体調の方は大丈夫何ですか?」

「えぇ、お陰さまで。これはもう、"Noir"様のお陰ですかね~。
あの後通院していた精神科の先生に診てもらったんですけど、すっかり症状が改善していてびっくりされましたから。肩こり腰痛眼精疲労、すべて改善ってどこの漢方薬ですか。もう様を付けないと名前も呼べませんよ。」

「貴女もなの?私もあれから凄く体調がいいの。昔からの生理不順が改善って意味分からないわよ。本当に"Noir"って何者なんでしょうね。」

中央都ビックサイトB会場で開催される"Sin"秋冬コレクション。各業界からの注目のなか、モデルたちがどのようなランウェイを見せるのか。
会場は異様な熱気に包まれていました。

先ほどまでの音楽が止み、一瞬の静寂の後、再びのリズムと共に飛び出すモデルたち。

「"ティーンBoys"さん、どうなってるんですか!?
あれってチーム黒子のモデルじゃ無いですよ、あの先頭で見事なウォークを魅せてる彼、西京芸能のモデル加藤修一ですよ!
他にも後藤雅司もいます。モデル業界じゃ、二流三流って言われてる人たちじゃないですか!」

本当に何がどうなっているの、あの動き、服を見せ、自分を見せ、互いに高め合い観客を魅せる、まるで超一流の海外モデルの様に。このインパクトは初めてチーム黒子が登場したあのランウェイ以来、完成度はさらに上を行っている。

「これは、今回の主役は完全に彼らじゃないかしら。」

「えぇ、底力と言いますか、これがプロのモデルだと言われている様な、圧倒的なパワーを感じます。」

理屈は全く分からないけど、何かが起きているのは確かな様です。

「やっぱり凄いですよ、"チーム黒子"。先輩モデルたちに全く怯んでない所か、さらに洗練された表現力が、見えるはずのない恋人たちの戯れを見事に体現してるじゃないですか。」

"恋人たちの戯れ"、確か今回のメインテーマだったかしら。デザイナーの意図を正確に理解している証拠、やっぱり彼らは世界の舞台に立つべき逸材。

世界が変わった
秋色に染まる街路樹

"コツンッ、コツンッ"

ゆっくりと舞い落ちる木の葉の向こうから

"コツンッ、コツンッ"

楽しそうに笑い合い歩く男女

"コツンッ、コツンッ"

一人は彼
隣で寄り添い笑顔を向ける私

"コツンッ、コツンッ"

その私が優しい瞳でこちらに微笑む
"想いはいつか叶うわよ。"

"コツンッ、ワサッ"

舞い散る黒き羽根フェザー
広がる漆黒の翼が
温かく"私たち"を包みこむ

止まらない涙
鳴り止まぬ拍手

会場はスタンディングオベーションの人々で埋めつくされました
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