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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー
第130話 我が名は”Noir(ノワール)” (5)(side:鬼龍院静香)
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スタジオS&B代表マザー佐々木との会談から数日。
私は言われた通り、”Sin”新作発表会に係わったすべての人間に例のポスター広告を配布した。中には自宅療養中の者や通院している者もいたが、彼女の言葉には”それを押しても成し遂げよ”という強い意志が感じられた。
会場として指定された我が校の体育館は、埋め尽くさんばかりの人で溢れていた。
そこには学園を休んでいた生徒をはじめ、生徒保護者、報道関係者、学園職員、現場スタッフとして働いていたもの、理事会や来賓のお歴々。あの時この場にいたもの全てが揃っていた。
皆一様に配布されたポスター広告を握りしめ、恍惚とした表情でその時を待っている。
空気が変わった。
”カツンッ、コツンッ、カツンッ、コツンッ”
ドアの向こう、体育館ロビーから響く靴の音。
”ガチャッ、ギィーッ、バタン”
”カツンッ、コツンッ、カツンッ、コツンッ”
彼の御方はゆっくりとした足取りで、
中央花道を歩まれます。
”カン、カン、カン、カン、カン”
壇上への階段を上り切ると優雅にこちらへと振り返り、
じっと私たちをご覧になられました。
「皆、済まなかったな。
私と彼のもの、"hiroshi"と言ったか、そのものが酷く迷惑を掛けたようだ。」
何を仰います。あなた様が私どもに迷惑などと、あなた様は至高の存在、決してそのような…
「私の闇と”hiroshi”の光が皆の心を酷く搔き乱してしまったようだ。
ここに謝罪しよう。
今解き放とう、光と闇に縛られしそなたらの心を。」
”サクラ咲く 校庭の 片隅で
君と~ 笑い会えたなら
どんなに 楽しい 事でしょう
決して~ 夢何かじゃ ない~"
低音のゆったりとしたメロディー
アカペラで歌われるその歌は
マイクなど使っていないにも関わらず
なぜかしっかりと耳に届いている
一音一音一語一語に至るまで
まるで噛み締めるかの様に
思い出されるのはまだ若く教師になりたてだったあの頃。
初めて担任を任されたあの時、
初めて教え子を送り出した卒業式、
泣き、笑い、笑顔で巣立って行った生徒たち
教師として生きていく
決意を新たにした在りし日の自分
なぜ忘れてしまっていたのだろう
自然と流れ落ちる涙
悲しみや怒りや感動と言ったものではなく
心から、身体から、泉の様に湧くその流れに
彼の御方の
いや、”Noir”の歌声が
優しく私を包み込む
それは夜の静寂の様な
昼間の喧騒を癒す温かみ溢れる黒き翼
会場にいる全ての者が
年齢や、性別や、肩書や、地位や、財産に関わらず
皆一様に涙している
”hiroshi”の代表曲、「君と二人で」を歌い終わった”Noir”は
ゆっくりと階段を降り、一人花道を戻って行きました。
ドアノブに手を掛け外に出ようとした彼は不意に立ち止まり、こちらに向かい小さく呟きました。
”お前たちは、もう大丈夫だ。”
逆光に照らされた彼の背中は
とても大きく頼もしく、そして優しく見えました。
私は言われた通り、”Sin”新作発表会に係わったすべての人間に例のポスター広告を配布した。中には自宅療養中の者や通院している者もいたが、彼女の言葉には”それを押しても成し遂げよ”という強い意志が感じられた。
会場として指定された我が校の体育館は、埋め尽くさんばかりの人で溢れていた。
そこには学園を休んでいた生徒をはじめ、生徒保護者、報道関係者、学園職員、現場スタッフとして働いていたもの、理事会や来賓のお歴々。あの時この場にいたもの全てが揃っていた。
皆一様に配布されたポスター広告を握りしめ、恍惚とした表情でその時を待っている。
空気が変わった。
”カツンッ、コツンッ、カツンッ、コツンッ”
ドアの向こう、体育館ロビーから響く靴の音。
”ガチャッ、ギィーッ、バタン”
”カツンッ、コツンッ、カツンッ、コツンッ”
彼の御方はゆっくりとした足取りで、
中央花道を歩まれます。
”カン、カン、カン、カン、カン”
壇上への階段を上り切ると優雅にこちらへと振り返り、
じっと私たちをご覧になられました。
「皆、済まなかったな。
私と彼のもの、"hiroshi"と言ったか、そのものが酷く迷惑を掛けたようだ。」
何を仰います。あなた様が私どもに迷惑などと、あなた様は至高の存在、決してそのような…
「私の闇と”hiroshi”の光が皆の心を酷く搔き乱してしまったようだ。
ここに謝罪しよう。
今解き放とう、光と闇に縛られしそなたらの心を。」
”サクラ咲く 校庭の 片隅で
君と~ 笑い会えたなら
どんなに 楽しい 事でしょう
決して~ 夢何かじゃ ない~"
低音のゆったりとしたメロディー
アカペラで歌われるその歌は
マイクなど使っていないにも関わらず
なぜかしっかりと耳に届いている
一音一音一語一語に至るまで
まるで噛み締めるかの様に
思い出されるのはまだ若く教師になりたてだったあの頃。
初めて担任を任されたあの時、
初めて教え子を送り出した卒業式、
泣き、笑い、笑顔で巣立って行った生徒たち
教師として生きていく
決意を新たにした在りし日の自分
なぜ忘れてしまっていたのだろう
自然と流れ落ちる涙
悲しみや怒りや感動と言ったものではなく
心から、身体から、泉の様に湧くその流れに
彼の御方の
いや、”Noir”の歌声が
優しく私を包み込む
それは夜の静寂の様な
昼間の喧騒を癒す温かみ溢れる黒き翼
会場にいる全ての者が
年齢や、性別や、肩書や、地位や、財産に関わらず
皆一様に涙している
”hiroshi”の代表曲、「君と二人で」を歌い終わった”Noir”は
ゆっくりと階段を降り、一人花道を戻って行きました。
ドアノブに手を掛け外に出ようとした彼は不意に立ち止まり、こちらに向かい小さく呟きました。
”お前たちは、もう大丈夫だ。”
逆光に照らされた彼の背中は
とても大きく頼もしく、そして優しく見えました。
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