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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第118話 ビックジョーの恋 (2)

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「おはよ~っす、皆さんお元気~
…ではないのね。」

"はぁ~。"

岡田~、ちょっとあれどうにかしてよー。あれは君の管轄でしょうが。
えっ?違うの?
だっていつも一緒につるんでたじゃん、お前子分やってたじゃん。
俺様系わがまま男子に仲間意識はない?漠然とした力関係だけ?
何それ。それじゃあ何、
”ふっ、お前なかなかやるじゃないか、覚えておいてやろう。”
”ふん、貴様もな。名は何と言う、覚えておいてやる。(キリッ)”
ってのを本当にやってたって事?

”コクコク”

嘘でしょう?みんなそんなの見た事ある?

”コクコク“

うっそ~ん。木村君、そんな事ないよね、みんなが僕を騙そうとしてるんだよね。

「お前は朝から何を騒いでいる。あいつらが自尊心の塊なのはお前もよく知っているだろう。俺も昔はそうだったからな。
”これでも俺様はお前のことを認めているんだぞ。(キリッ)”」

”ブホッ”
やめて、お願い、腹筋が腹筋が、しかもビックジョーのモノマネって、超似てるんですけど。クラスの連中肩震わせてるじゃん、必死に堪えてるじゃん、駄目もう限界。
「ばっははははははははは、もうダメ、無理、苦し~~~。」


「うるさい、誰だ騒いでるのは!佐々木、また貴様か!朝の貴重なこの時間を心静かにすごそうとは思わんのか。
これだから低俗なやからは、それに比べ可憐なあの人は今頃。
いや、こんな無粋な輩に教える事ではなかったな。
とにかく朝は静かにすごせ、いいな!」

ビックジョー、重症じゃん。
これ相手にされなかったり振られたりしたらどうなっちゃうの?
ストーカーになるとか、コワインデスケド…。

「はい皆さん、席について下さい。朝のHRを始めますよ。
あ、佐々木君、先に言っておくわ。校長先生がお話があるから昼休み校長室に来て欲しいそうよ。
じゃあ出席を取ります。」

校長先生がお話?なんか嫌な予感しかしないんですけど。


(side:加藤清美)

”はぁ~、”
今日何度目だろう。深い溜息を吐きこれからの事を考える。
また彼のお世話にならないといけないとは…。
一年C組佐々木君。今年度になってから何度もお世話になっている男子生徒。
本来なら私たち教職員が対処しなければならない問題を、思いもよらないアイディアで解決に導く青年問題児
彼の活躍暗躍は入学式当日から始まった。

私がこの中学校の校長として赴任してきたのは今から三年前。
当時はこの学校の生徒たちの質の高さに驚いたものでした。
これまでいた学校は、どこも横暴な男子生徒や暴走する女子生徒、そんな彼ら彼女らに怯え殻に引き籠る男子生徒や女子生徒であふれていました。
教職員の役割とは、そんな彼らをいかになだめ、まともな授業を行うかに注視せざるを得ませんでした。
その点この学校の生徒たちは違った。
女子生徒はまず暴走する事は無い。多少の騒ぎが有っても生徒間同士で解決しいつの間にか沈静化してしまう。
男子生徒のいわゆる”俺様系わがまま男子”も、多少の騒ぎを起こすことが有っても大きな問題にまで発展する事が無い。たまに彼らが保健室に運ばれることがありますが、怪我をしていると言う事でもなく、大した問題ではないのでしょう。
保険養護教諭の話では入学したての男子生徒によくみられる、この学校特有の現象との事。周りの男子生徒がすぐに保健室まで搬送してくれるのでとても助かっているとおっしゃっていました。
生徒同士が助け合い、より良い学校環境へと変えていく。
この中学校は、本当に素晴らしい生徒であふれています。

春になり今年も無事新入生を迎える事が出来ました。
また例年のごとく何人かの新入学男子生徒が保健室に搬送されましたが、これはもはや風物詩と言っていいでしょう。
新しく入る新任の先生方にはこの話をしていますが、古くから務めるベテランの先生方はなぜか苦笑いをします。
やはり男子生徒が倒れると言うのはそれだけインパクトが強いモノなのでしょう。
保険教諭の話では、これまでも搬送してきてくれる生徒は決まって桜町小学校出身者との事。
桜町小学校。
不登校児童ゼロを達成した奇跡の小学校。
その六年間の歩みは”桜町小学校の軌跡”として教育関係者の間では広く知られています。
その教育の中で培われた相互補助の精神が、これまで見られなかったこのような素晴らしい生徒を形作っているのでしょう。桜町小学校校長木村菜々子先生には、一度ゆっくりお話を聞かせていただきたいものです。

佐々木君はそんな桜町小学校出身生徒、通称”桜町っ子”の一人で、入学式の搬送騒ぎでも一番に救護搬送を行っていました。
そんな彼と直接会ったのは、彼が”鬼ごっこ同好会”の部活設立申請とそれに伴うヨウツーベチャンネル開設許可を貰いに来た時でした。
彼のプレゼンはとても中学校に上がりたての生徒とは思えない堂々としたものでした。少し夢見がちだとは思いましたが、ヨウツーベ配信を通じ不登校生徒の登校したいという意欲を掻き立てるという取り組みは斬新で、その裏付けとして提出された桜町小学校の詳細な資料は、彼の計画に強い説得力を与えていました。
何より生徒自らが不登校生徒問題に取り組もうとしてくれている。
その行為自体が嬉しかった。
私は全責任は自分が取る事を宣言し、彼の計画とそれに伴う各種申請にGOサインを出しました。

その後の彼ら桜町っ子で構成された”鬼ごっこ同好会”の動きは素早いモノでした。
各クラスの不登校生徒のお宅に直接訪問し説得、見る見る間に不登校生徒を再登校へと導きました。私たち教職員が何年にも渡って出来なかった事をいともあっさりと。
私たちは何とも言えない敗北感と共に、”負けてられない”という強い熱意が沸き起こりました。

その後の出来事はもはや語るまでもありません。
結果的に見れば素晴らしい成果の連続なのですが、これまでの三年間とは比べ物にならない混乱と激務の連続。
確かに頼ったのは私たちです。
解決に導いたのは佐々木君たちです。
でももう少し穏便な方法は無かったのでしょうか?

今現在我が校で起こっている一連の事態。私たち大人では踏み込むことの難しい思春期特有の現象ではありますが、放置しておけば必ずや大問題に発展するでしょう。
男女の心の成長に伴う恋愛トラブルは、大問題に発展したケースが全国の学校で多々報告されています。

”コンコンコン“
”一年C組佐々木です。御呼びにより参りました。”

「はいどうぞ、入って来て下さい。」

はぁ、佐々木君本当お願い、頼って居ながらこんな事言っては申し訳ないんだけど…。

今度こそ穏便に済ませてください!
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