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第7話 校舎内の落書きで救われる人

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 ◆ ◆ ◆

「怖いよね」
「自分の物に落書きを描かれたら呪われるって言われてるよ」
「3年2組の先輩、ロッカーに落書きされて、帰りに交通事故に遭ったって」
「うわぁ、絶対に呪われてるじゃん」
「それも一人じゃないよね? 2人目の先輩は階段から落ちて、3人目の先輩は高熱が出て休んでるって」

 2年の廊下を歩いているだけで、悪霊の落書きについての噂が聞こえてくる。
 学校の中の噂っていうのはすぐに広まるし、不思議と全学年に届く。

 甲斐枝部長から依頼を受けて、もう一週間が経つけど、悪霊なんて見つからなかった。
 どんどん落書きが増えて、描かれていない場所のほうが少ないくらい。

 部長が長谷川先生を通して先生たちを止めているから、落書きは増えるいっぽうだ。
 だからか

「あの、訳あり新聞を見て……。助けてください。私、絶対、呪われたんです」
「僕は呪われたんだと思います。助けてください」

 訳あり新聞を見て助けを求めにくる生徒が増えた。
 つまり、校内に貼った新聞を見てくれる人たちが増えたということだ。
 嬉しいのか、そうじゃないのか、複雑な気持ち。

 だって、甲斐枝部長は全然解決させようとしない。
 話を聞いて、見て、「大丈夫だよ、君は呪われてない」と言ってあげるだけ。
 それで安心してみんな帰っていくんだけど、本当にそれでいいの?
 落書きが校舎内に増えていくのを楽しみながら見てていいの?

「部長、いいんですか? このままで」

 やっと静かになった部室で、私は部長に問いかけた。
 気になるけど、自分にできることがない。

「小森くん、君はおかしいと思わないか?」

 窓際の椅子に座る部長は余裕そうに足を組んだ。

「え?」

 部長にはもう謎が解けているってこと? と私は困惑した。

「いままでで実際に大きな事故に遭ったり体調を崩して入院してるのは3年2組の3名のみ。あとはちょっとした風邪や体育で転んだとかそんな普段でも起こりうる些細なことばかりだ。他の小さなことにカモフラージュされてるが、この3名を見れば自然と答えが出てくるだろう?」

 部長からのヒントを得て、改めて考えてみる。
 悪霊の落書きによって実際に呪われたのは同じクラスの3名のみ。
 落書きは校舎内全体にあって、みんなが呪われてもおかしくない状況なのに。
 
 ――もしかして、狙われて呪われた?

「ってことは……」
「そう、おそらく、君の考えている通りだ」

 私がぼそりとこぼすと、甲斐枝部長はニコッと笑った。
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