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第6話 真横から見えない巨大な仏像の謎
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◆ ◆ ◆
『真横から見えない巨大な仏像の謎。訳あり新聞部、初の校外活動! 危機一髪!』
読んだってぜったい誰も信じてくれないだろうから、今回の訳あり新聞にはあえて本当のことをそのまま書いた。
内容はとてもこわいものになっている。
それがよかったのか、新聞が貼り出された廊下で数人の生徒が代わる代わる読んでいるのを見かけた。
ほんと、人間ってこわいもの好きだよね。
こわいもの見たさ、ってやつ?
そう思いながら、私は今日も訳あり新聞部の部室を目指す。
「おい、甲斐枝……」
廊下を曲がったところから、あきれるような声がした。
長谷川先生だ。
訳あり新聞部の部室の前で甲斐枝部長と話をしている。
「校内新聞を読んだんだが、今回の内容、かなり危険な内容だよな?」
「やだな、先生、フィクションですよ」
なんでこんなところで会話してるんだろう。
部室に入れなくて、仕方なく、私も近くに立ってみる。
ちらっと私のことを見たけれど、長谷川先生はそのまま会話を続けた。
「本当か? 危ないことするんなら、今後の校外活動は禁止だからな?」
「だから、昨日説明したじゃないですか」
「昨日の説明も意味が分かんなかったんだよ。なんだ夢オチって」
「いや、本当にそうなんですって。ね? 小森くん?」
なんでこっちに話を振るんだろうか。
二人の視線が私に向く。
「……夢オチです」
本当のことだから、そう言うしかない。
これ以外に説明なんて出来ないのだ。
あれは危険な状況だったけど。
「なんだいまの間。言わされてるな? 脅されてるのか?」
長谷川先生が真剣な表情でそんなことを言うから、ちょっと笑いそうになってしまった。
甲斐枝部長に限って、そんなことはないのに、ほんとにおかしい。
急に刑事ドラマみたいな会話に巻き込んでくるから面白すぎる。
笑いをこらえるために口を閉じていたら、長谷川先生はなにかを勘違いしたみたいだ。
「ほら、なにも言わない。脅されてるんだな? ――さて、じゃあ、話を聞かせてもらおうか。甲斐枝、生徒指導室に来い」
「え、うそ、僕たち別に物理的には危険なことしてないですって。それに学校外のことなんて他の生徒たちが食いつきそうじゃないですか……あ、引っ張らな――」
結局、甲斐枝部長は生徒指導室へとつれていかれてしまった。
ごめんなさい部長。
笑いをこらえるために必死だったんです。
先生が真剣な話をしているところを笑えないでしょう?
仕方なかったんです。
それにしても、今回は本当にどきどきした。
部長と一緒にいると、危ないこともあるんだなって。
――私、このまま、この部にいてもいいのかな……?
私は後ろを振り向いて、去っていく二人の背中を見つめた。
『真横から見えない巨大な仏像の謎。訳あり新聞部、初の校外活動! 危機一髪!』
読んだってぜったい誰も信じてくれないだろうから、今回の訳あり新聞にはあえて本当のことをそのまま書いた。
内容はとてもこわいものになっている。
それがよかったのか、新聞が貼り出された廊下で数人の生徒が代わる代わる読んでいるのを見かけた。
ほんと、人間ってこわいもの好きだよね。
こわいもの見たさ、ってやつ?
そう思いながら、私は今日も訳あり新聞部の部室を目指す。
「おい、甲斐枝……」
廊下を曲がったところから、あきれるような声がした。
長谷川先生だ。
訳あり新聞部の部室の前で甲斐枝部長と話をしている。
「校内新聞を読んだんだが、今回の内容、かなり危険な内容だよな?」
「やだな、先生、フィクションですよ」
なんでこんなところで会話してるんだろう。
部室に入れなくて、仕方なく、私も近くに立ってみる。
ちらっと私のことを見たけれど、長谷川先生はそのまま会話を続けた。
「本当か? 危ないことするんなら、今後の校外活動は禁止だからな?」
「だから、昨日説明したじゃないですか」
「昨日の説明も意味が分かんなかったんだよ。なんだ夢オチって」
「いや、本当にそうなんですって。ね? 小森くん?」
なんでこっちに話を振るんだろうか。
二人の視線が私に向く。
「……夢オチです」
本当のことだから、そう言うしかない。
これ以外に説明なんて出来ないのだ。
あれは危険な状況だったけど。
「なんだいまの間。言わされてるな? 脅されてるのか?」
長谷川先生が真剣な表情でそんなことを言うから、ちょっと笑いそうになってしまった。
甲斐枝部長に限って、そんなことはないのに、ほんとにおかしい。
急に刑事ドラマみたいな会話に巻き込んでくるから面白すぎる。
笑いをこらえるために口を閉じていたら、長谷川先生はなにかを勘違いしたみたいだ。
「ほら、なにも言わない。脅されてるんだな? ――さて、じゃあ、話を聞かせてもらおうか。甲斐枝、生徒指導室に来い」
「え、うそ、僕たち別に物理的には危険なことしてないですって。それに学校外のことなんて他の生徒たちが食いつきそうじゃないですか……あ、引っ張らな――」
結局、甲斐枝部長は生徒指導室へとつれていかれてしまった。
ごめんなさい部長。
笑いをこらえるために必死だったんです。
先生が真剣な話をしているところを笑えないでしょう?
仕方なかったんです。
それにしても、今回は本当にどきどきした。
部長と一緒にいると、危ないこともあるんだなって。
――私、このまま、この部にいてもいいのかな……?
私は後ろを振り向いて、去っていく二人の背中を見つめた。
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