天使と悪魔の学園へ、ようこそ! ~男装地味子の絶対バレてはいけないヒミツ♥~

純鈍

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これが最後の審判のお時間です!

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「加賀美先生、こちら、いいお部屋ですわね」

 朝比奈さんがゆったりとソファに座りながら、加賀美先生の休憩室を見回す。

「そりゃ、どうも」

 壁際に立った加賀美先生は困惑するようなそんな表情で返事をした。
 私はそんな先生の横に立っている。

「ですが、東条様、こんなお時間に呼び出すなんて、少し非常識ではありませんこと?」

 ソファに対面するように椅子に座った晩くんを見て、朝比奈さんが言った。
 いまは夕方の六時半を過ぎていて、もう陽は沈んでいる。

「レディをあまり待たせるのは良くないと思ってな」
「あら、紳士的ですこと」

 冷たい瞳の晩くんと悪魔な微笑の朝比奈さん。

「それに生徒会の皆様もおそろいで」

 わざとらしく朝比奈さんが晩くんの後ろに立つ生徒会の三人を手で差す。

「お前が提示した条件のために呼んだんだ」

 彼女にそう言ったあと、晩くんが私に「すまない、三人に話した」とアイコンタクトした。

 それに応えるように私も「いいえ、分かっています」と黙って首を横に振る。

 もとはといえば、私が生みだした問題だ。

 生徒会のみんなはどうして私をそんなに守ってくれるの?
 自己を犠牲にしてまで、私なんかを……。

 胸が苦しくなる。

「そうでしたか」

 立ち上がって、一歩一歩と朝比奈さんが生徒会メンバーの後ろを歩く。
 その足はすぐに止まった。

「でも、結構ですわ」

 ぴしゃりと朝比奈さんが言い放つ。

 生徒会の三人が一斉に振り向いた。

「は? 満足いくまで生徒会の全員と付き合ってみればいいだろうが」

「いいえ」

 闇くんの言葉に朝比奈さんが静かに首を振った。

「おい……」

  再び何かを言おうとした闇くんの唇に朝比奈さんがそっと人差し指を添える。

 みんながせっかく助けようとしてくれたのに。
 ああ……、ここまでなんだ、と思った。

「密告してください」

 私は突っ立ったまま、ぼそりと呟いた。
 無意識じゃない。
 怖くて大きな声が出なかっただけ。

「おい!」
「雪ちゃん!」
「雪くん!」
「雪!」

 みんなにそんな顔をさせたくなかった。
 心配と悲しみの入り交じった表情なんてさせたくなかったよ。

「白鳥……? 何言ってんだ? ――なあ、朝比奈、お前は成績も良いし、家柄的にも将来は安泰だ。そんなに躍起になって白鳥を密告する必要が本当にあるのか?」

 加賀美先生もそう言ってくれるけど、先生はいち教師として私を特別扱いなんてしてはいけなかったんだ。

「もういいんです。密告してください」

 私は朝比奈さんの前に行って、そう告げた。

 ほんとはずっと考えてた。最初から高望みだったの。
 普通の中学に行って、奨学金を借りて高校に行って、卒業して仕事して返せばよかったんだ。
 
 生徒会のみんなを巻き込む前にこうしてれば良かったんだ。
 四人と一緒に居たいなんて思っちゃいけなかったんだ。
 また私、失敗しちゃった……。

 いつもすぐに動けなくて、周りに迷惑を掛ける。
 分かってる、自分が最低だってこと。
 鈍感で、それでいて真っ直ぐすぎて、人をイライラさせる。
 自分の欠点くらい、分かってるつもりだった。

「その必要はございませんわ」

 朝比奈さんの一言が私の思考を止めた。

「え?」

 ふっと微笑む朝比奈さんに戸惑う。

 ――どういうこと?
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