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頑張ったのに風邪を引きました!

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「貧乏人とは遊ぶな! 貧乏がうつるぞ!」

 『なかよし』と名前がついた公園に足を踏み入れた瞬間、私を知っている子たちは叫びながらみんな逃げ出した。

 貧乏なんてうつるわけがないのに……。

 学校でも外でも私はいつも一人だった。

 砂場で一人、いつも山を作って、穴を掘って――

「……くん」

 声が聞こえた。

 眠りの世界以外からの声。

「雪くん」

 寝起きのぼんやりする視界に光くんの綺麗な顔が映り込む。

「光くん……?」

 私の喉、ガラガラ。
 それにすごく熱い。

 ――ああ、そうだ……、私、オリエンテーション合宿から帰ってきて、風邪引いて熱出したんだった。

「雪くん、大丈夫?」

 心配そうに私の顔を覗き込む光くん。

「……光くん、……どうして?」

 どうしてここに居るんだろう。
 私、みんなに悪いと思って学園の保健室で寝てたのに。

 ここ、光くんの部屋だ。

「あんなところで寝てて、自分の弱ってる姿を誰彼構わず見られるのは嫌だろう?」

 誰彼って、学園はお休みの日だから、誰もいなかったんだけど……。
 保健医の先生も誰も。

「悪魔組に加護はないし、僕と灯だったら、僕のほうが治癒の加護は強い。それに僕には中堂もついてるし」

 そう言いながら、光くんが私のおでこに熱冷ましのシートを貼ってくれる。
 それから、ちらっと寝室の扉のほうを見た。
 今日は閉まってる。

「君に神の加護を」

 光くんが優しく微笑んで、私の頭に手をかざすとぽわっと光って、心地よくて、身体が少し楽になった。

 風邪なんて、一人で堪えれば大丈夫だと思ってた。
 まさか、こんなに熱が上がって、ツラくなるなんて……。
 ここにはお父さんもお母さんも弟の皐もいない。

 ――あー、ダメだなぁ……、なんで人って熱出ると気持ちまで弱るんだろう……。

「光くん……、ごめ……なさ……」

 なんで泣いちゃうかなぁ、私。

 拭っても拭っても涙は溢れてきて……。

「大丈夫だよ」

 掛け布団の上から光くんが私のことをぎゅっと抱きしめてくれる。
 でも、ダメなんだ。

「風邪……移ります……ひっく、……離してください」

 天使だって、きっと風邪引くんだ。
 悪魔と思われてる私が風邪引いて変に思われてないってことは。
 だから、光くんも。

「ないよ」
「え?」

 静かな声が聞こえて、私はきょとんとしてしまった。

「君は僕のお気に入りだからね、離す気はないよ」

 ニコッと笑った顔が私の隣に横になって、トントンと寝かしつけるように布団を叩く。

「君は一人じゃない。甘えていいんだよ」

 そんなこと友達に言ってもらえたことない。

「ひかるくん……っ」
「よしよし」

 またたくさん涙が溢れてきて、止まらなくなって、でも、私が泣き疲れて眠ってしまうまで、光くんは私のそばに居てくれた。
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