32 / 41
なんだ、この心臓の異音は ~Side東条 晩~
①
しおりを挟む
「人間なんだな?」
その問いに答えは返ってこなかった。
華奢な手で塞がれた視界。自分の手で剥がせば、すべてが見える。
だが、俺にはそれが出来なかった。
「っ……お願いします……! 密告しないでください……っ! うち、貧乏で、弟もまだ小さくて……、家族と自分のためにいま学園をやめるわけにいかないんです……っ!」
目の前で号泣されて、次第に指の間に隙間が生まれて、悪魔に暗さなんざ関係なくて、泣き顔だけ、すげぇ見えた。
――なんつー顔して泣いてんだよ。
俺が悪魔だって言ったってこんな顔で泣かれて、酷いことなんて出来るわけねぇだろ。
「泣くな」
急いで、俺は自分のジャージを脱いで、目の前のやつの肩に掛けた。
「うぐ、晩くん……?」
――くっ……、この顔は反則だろ……。
なんだ、この心臓の異音は。
相手は男だぞ? しかも人間の。
「着ろ」
ひとまず、自分の心臓を落ち着かせるためにも、やつに後ろを向かせる。
――はぁ……、どうしちまったんだ……、俺の心臓。
そう思いながら、完全に解放された目でやつのことを見る。
俺のジャージを着たその背中がすごく小さくて、頼りなくて、なぜだかすごく守ってやりたくなった。
気付けば、やつのことを後ろから抱きしめていて……。
「お前が男でもいい。……お前の秘密、俺が絶対に守ってやる。だから、俺のそばに居ろ」
――何言ってんだ、俺。
俺はこの生意気な男の興味を引こうと思っていただけで……、逆に引かれてどうすんだよ……。
その問いに答えは返ってこなかった。
華奢な手で塞がれた視界。自分の手で剥がせば、すべてが見える。
だが、俺にはそれが出来なかった。
「っ……お願いします……! 密告しないでください……っ! うち、貧乏で、弟もまだ小さくて……、家族と自分のためにいま学園をやめるわけにいかないんです……っ!」
目の前で号泣されて、次第に指の間に隙間が生まれて、悪魔に暗さなんざ関係なくて、泣き顔だけ、すげぇ見えた。
――なんつー顔して泣いてんだよ。
俺が悪魔だって言ったってこんな顔で泣かれて、酷いことなんて出来るわけねぇだろ。
「泣くな」
急いで、俺は自分のジャージを脱いで、目の前のやつの肩に掛けた。
「うぐ、晩くん……?」
――くっ……、この顔は反則だろ……。
なんだ、この心臓の異音は。
相手は男だぞ? しかも人間の。
「着ろ」
ひとまず、自分の心臓を落ち着かせるためにも、やつに後ろを向かせる。
――はぁ……、どうしちまったんだ……、俺の心臓。
そう思いながら、完全に解放された目でやつのことを見る。
俺のジャージを着たその背中がすごく小さくて、頼りなくて、なぜだかすごく守ってやりたくなった。
気付けば、やつのことを後ろから抱きしめていて……。
「お前が男でもいい。……お前の秘密、俺が絶対に守ってやる。だから、俺のそばに居ろ」
――何言ってんだ、俺。
俺はこの生意気な男の興味を引こうと思っていただけで……、逆に引かれてどうすんだよ……。
10
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる