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オリエンテーション合宿はトラブルがいっぱい!
③
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「ひとまず、早く上がれ。戻るぞ」
晩くんがこちらに手を伸ばそうとしていて、まずいと思った。
このままだと本当にバレちゃう。
胸元を隠す? でも、それで、どうにかカバー出来る?
どうしよう、心臓バクバクいってる。
「あの、俺、もうちょっと浸かっていきます」
ポーカーフェイスでとりあえず、言った。
「は?」
ホラーなライトに照らされる戸惑った晩くんの顔。
「水行が趣味で」
さらにポーカーフェイス。
お願いだから、諦めてください。
「何言ってんだ? 風邪引くぞ?」
――あぁああ、通用しない!
ぐっと腕を掴まれた。
「放っておいてくれませんか。一人で戻れるので」
意地でも上がれない私。
本当に心臓がはち切れそう。
「あんまりおかしなこと言うと怒るぞ? 黙って、こっちこい!」
「わっ!」
抵抗虚しく、びしゃびしゃのままで私は晩くんに引き上げられた。
「見ないでください……!」
自分の身体を隠すより、晩くんの両目を隠すほうがすべてを隠せると思って、私は瞬時に彼の両目を両手で塞いだ。
そして、それと同時につい反射的に言ってしまって、私はしまったと思った。
「もしかして、お前……」
私に両目を隠されたままで、晩くんは呟いた。
お願いだから、言わないでほしい。
そんな私の願いは届かず……
「人間なのか?」
晩くんはそう言った。
――何か、隠し通す何かを言わなきゃ……。でも、何を?
私は考えるために沈黙を作ってしまった。
それがいけなかった。
「人間なんだな?」
もう一度言われて、それでも上手い答えを見つけられなかった。
それは私が人間だと認めるということ……。
「っ……お願いします……! 密告しないでください……っ! うち、貧乏で、弟もまだ小さくて……、家族と自分のためにいま学園をやめるわけにいかないんです……っ!」
気付いたら、涙ぐずぐずで彼に訴えていた。
こんなこと言ったって、私も門松さんのときみたいにみんなの前でつるし上げられるに決まってる。
そう思ったのに
「泣くな」
私に両目を隠されたまま、そう言って晩くんは自分のジャージを脱ぎ始めた。
そして、手探りで、それを私の肩に掛ける。
「うぐ、晩くん……?」
汚い泣き方で、彼のことを見つめる。
どういうこと……?
「着ろ」
それだけ言って、彼は自分から私に後ろを向かせた。
くるりと後ろを向く視界。
私は言われた通り、急いで晩くんのジャージを着て前をちゃんと閉めて……
「……っ?」
ぎゅっと後ろから晩くんに抱きしめられた。
「お前が男でもいい。……お前の秘密、俺が絶対に守ってやる。だから、俺のそばに居ろ」
いつも冷たいのに、耳元で囁く晩くんの声はあたたかくて優しかった。
「へ?」
思わず、間抜けな声がもれる。
女だってことはバレてない……?
でも、いま、晩くん、なんて言った?
俺のそばに居ろ?
なんだろう、これ、なんか、ドキドキする。
私の心臓、壊れちゃったかも……。
「泣き止んだのか?」
またぐるりと回されて
「はひ」
正面から両方のほっぺたをつままれる。
もう優しくない、不機嫌そうな顔。
「へんな顔したままあいつらのところに戻れないからな」
そう言って、晩くんは懐中電灯で道を照らしながら先を歩き始めた。
「置いてかないでください……!」
私も慌てて彼の後を追いかける。
ねえ、晩くん、さっき、どんな顔してたんですか?
――神様、なんだか、私の心臓が変です。
晩くんがこちらに手を伸ばそうとしていて、まずいと思った。
このままだと本当にバレちゃう。
胸元を隠す? でも、それで、どうにかカバー出来る?
どうしよう、心臓バクバクいってる。
「あの、俺、もうちょっと浸かっていきます」
ポーカーフェイスでとりあえず、言った。
「は?」
ホラーなライトに照らされる戸惑った晩くんの顔。
「水行が趣味で」
さらにポーカーフェイス。
お願いだから、諦めてください。
「何言ってんだ? 風邪引くぞ?」
――あぁああ、通用しない!
ぐっと腕を掴まれた。
「放っておいてくれませんか。一人で戻れるので」
意地でも上がれない私。
本当に心臓がはち切れそう。
「あんまりおかしなこと言うと怒るぞ? 黙って、こっちこい!」
「わっ!」
抵抗虚しく、びしゃびしゃのままで私は晩くんに引き上げられた。
「見ないでください……!」
自分の身体を隠すより、晩くんの両目を隠すほうがすべてを隠せると思って、私は瞬時に彼の両目を両手で塞いだ。
そして、それと同時につい反射的に言ってしまって、私はしまったと思った。
「もしかして、お前……」
私に両目を隠されたままで、晩くんは呟いた。
お願いだから、言わないでほしい。
そんな私の願いは届かず……
「人間なのか?」
晩くんはそう言った。
――何か、隠し通す何かを言わなきゃ……。でも、何を?
私は考えるために沈黙を作ってしまった。
それがいけなかった。
「人間なんだな?」
もう一度言われて、それでも上手い答えを見つけられなかった。
それは私が人間だと認めるということ……。
「っ……お願いします……! 密告しないでください……っ! うち、貧乏で、弟もまだ小さくて……、家族と自分のためにいま学園をやめるわけにいかないんです……っ!」
気付いたら、涙ぐずぐずで彼に訴えていた。
こんなこと言ったって、私も門松さんのときみたいにみんなの前でつるし上げられるに決まってる。
そう思ったのに
「泣くな」
私に両目を隠されたまま、そう言って晩くんは自分のジャージを脱ぎ始めた。
そして、手探りで、それを私の肩に掛ける。
「うぐ、晩くん……?」
汚い泣き方で、彼のことを見つめる。
どういうこと……?
「着ろ」
それだけ言って、彼は自分から私に後ろを向かせた。
くるりと後ろを向く視界。
私は言われた通り、急いで晩くんのジャージを着て前をちゃんと閉めて……
「……っ?」
ぎゅっと後ろから晩くんに抱きしめられた。
「お前が男でもいい。……お前の秘密、俺が絶対に守ってやる。だから、俺のそばに居ろ」
いつも冷たいのに、耳元で囁く晩くんの声はあたたかくて優しかった。
「へ?」
思わず、間抜けな声がもれる。
女だってことはバレてない……?
でも、いま、晩くん、なんて言った?
俺のそばに居ろ?
なんだろう、これ、なんか、ドキドキする。
私の心臓、壊れちゃったかも……。
「泣き止んだのか?」
またぐるりと回されて
「はひ」
正面から両方のほっぺたをつままれる。
もう優しくない、不機嫌そうな顔。
「へんな顔したままあいつらのところに戻れないからな」
そう言って、晩くんは懐中電灯で道を照らしながら先を歩き始めた。
「置いてかないでください……!」
私も慌てて彼の後を追いかける。
ねえ、晩くん、さっき、どんな顔してたんですか?
――神様、なんだか、私の心臓が変です。
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