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加賀美先生、一晩だけで良いんです!
③
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◆ ◆ ◆
「ん……」
ふと目が覚めて、ぼんやりとする視界。
部屋の中、ベッドライトだけで薄暗いや。
カーテンの隙間から見えている窓の外はまだ暗いし……、まだ夜か……。
「んー」
もっと寝ようと思って寝返りを打ったときだった。
――あれ?
不機嫌そうな東条くんの顔が視界に入ってきた。
ベッドに肩肘をついて、私を見つめてる。
もしかして、加賀美先生って誰かに変身も出来たりする?
「あの、先生、なんかふざけてますか?」
思わず、尋ねてしまった。
私の苦手な東条くんに変身するなんて、意地悪過ぎる。
「おい、お前がふざけんなよ」
すごく冷たい言い方だった。
怒ってる。
――あー、これ加賀美先生じゃない、かも。だって、そういえば、先生の休憩室にはベッドなんてなかったもん。
「東条くん? 俺、先生のとこで寝てませんでしたっけ?」
身体を起こしながら私は東条くんに言った。
食堂で親子丼をごちそうになって、着替えもないから、明日、寮に戻ってきてシャワー浴びればいいかと思って、ソファで横になってたら寝ちゃって……。
「俺が連れ戻した。お前、もう加賀美のとこに行くな」
東条くんも身体を起こして私と向き合う。
なんてことをしてくれたのだろうか。
せっかくの安心時間が。
「でも、俺にだって、一人になりたいときはあるんですよ」
いじけるように手をもじもじとさせながら控えめに言う。
いくら生徒会の親衛隊隊長だからって四六時中生徒会と一緒にいる必要はないはずだ。
「っ、お前は俺らのモノだろうが」
「ふぇ?」
突然、ぎゅっと右手を握られてびっくりする。
東条くんがこんな行動に出るとは思っていなかった。
「教師なんかに触らせんなよ」
「どこも触られてません」
左手を降参するように上げる。
なにをそんなに怒っているのだろうか。
加賀美先生には犬猫みたいに頭わしゃわしゃとかされたけど、それ以外は別に触られてない。
「ああ、クソッ」
「わっ」
今夜の東条くんは一体、どうしたのだろうか。
急にガバッと私を抱きしめたりして。
「仕方ねぇから、お前には俺のことを晩と呼ばせてやる」
「はあ」
どうして、そんなことを言うのか。
意味が分からなくて、私は間の抜けた声を出してしまった。
「なんで、お前はそんな……――もういい、風呂入って着替えろ。制服、皺になるぞ」
私から身体を離して、東条くんはすごく嫌そうな顔でベッドから降りた。
言われて初めて自分がまだブレザーを脱いだだけの制服姿であることに気付く。
――制服、脱がさないでいてくれたんだ。
危なかった、これで着替えさせられてたら、多分、東条く……晩くんに私が人間で女だってバレてた。
ほっと気が抜ける。
一人になりたかったけど、連れ戻されてしまったのなら仕方ない。
誰も探しに来てくれなかった初日よりはいいじゃないか、と思うことにした。
というか、晩くん、心配して迎えに来てくれたのかな?
「あの……」
「それと、一人になりたいなら、してやるから」
私がお礼を言う前にそう言って、東条くんは部屋から出て行って、次の朝も戻ってくることはなかった。
「ん……」
ふと目が覚めて、ぼんやりとする視界。
部屋の中、ベッドライトだけで薄暗いや。
カーテンの隙間から見えている窓の外はまだ暗いし……、まだ夜か……。
「んー」
もっと寝ようと思って寝返りを打ったときだった。
――あれ?
不機嫌そうな東条くんの顔が視界に入ってきた。
ベッドに肩肘をついて、私を見つめてる。
もしかして、加賀美先生って誰かに変身も出来たりする?
「あの、先生、なんかふざけてますか?」
思わず、尋ねてしまった。
私の苦手な東条くんに変身するなんて、意地悪過ぎる。
「おい、お前がふざけんなよ」
すごく冷たい言い方だった。
怒ってる。
――あー、これ加賀美先生じゃない、かも。だって、そういえば、先生の休憩室にはベッドなんてなかったもん。
「東条くん? 俺、先生のとこで寝てませんでしたっけ?」
身体を起こしながら私は東条くんに言った。
食堂で親子丼をごちそうになって、着替えもないから、明日、寮に戻ってきてシャワー浴びればいいかと思って、ソファで横になってたら寝ちゃって……。
「俺が連れ戻した。お前、もう加賀美のとこに行くな」
東条くんも身体を起こして私と向き合う。
なんてことをしてくれたのだろうか。
せっかくの安心時間が。
「でも、俺にだって、一人になりたいときはあるんですよ」
いじけるように手をもじもじとさせながら控えめに言う。
いくら生徒会の親衛隊隊長だからって四六時中生徒会と一緒にいる必要はないはずだ。
「っ、お前は俺らのモノだろうが」
「ふぇ?」
突然、ぎゅっと右手を握られてびっくりする。
東条くんがこんな行動に出るとは思っていなかった。
「教師なんかに触らせんなよ」
「どこも触られてません」
左手を降参するように上げる。
なにをそんなに怒っているのだろうか。
加賀美先生には犬猫みたいに頭わしゃわしゃとかされたけど、それ以外は別に触られてない。
「ああ、クソッ」
「わっ」
今夜の東条くんは一体、どうしたのだろうか。
急にガバッと私を抱きしめたりして。
「仕方ねぇから、お前には俺のことを晩と呼ばせてやる」
「はあ」
どうして、そんなことを言うのか。
意味が分からなくて、私は間の抜けた声を出してしまった。
「なんで、お前はそんな……――もういい、風呂入って着替えろ。制服、皺になるぞ」
私から身体を離して、東条くんはすごく嫌そうな顔でベッドから降りた。
言われて初めて自分がまだブレザーを脱いだだけの制服姿であることに気付く。
――制服、脱がさないでいてくれたんだ。
危なかった、これで着替えさせられてたら、多分、東条く……晩くんに私が人間で女だってバレてた。
ほっと気が抜ける。
一人になりたかったけど、連れ戻されてしまったのなら仕方ない。
誰も探しに来てくれなかった初日よりはいいじゃないか、と思うことにした。
というか、晩くん、心配して迎えに来てくれたのかな?
「あの……」
「それと、一人になりたいなら、してやるから」
私がお礼を言う前にそう言って、東条くんは部屋から出て行って、次の朝も戻ってくることはなかった。
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