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お願いですから、小綺麗にしないでください!
①
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今日は入学四日目にして初の合同授業だった。
悪魔組の黒いブレザーに混ざって、私の白いブレザーがさらに浮いた。
だって、天使組が横に固まっているから、真っ白の横、黒い中の白一点は目立つ。
「あれが例の?」
「何のためにいるのかしらね」
「あいつ本当に悪魔なのか?」
「ダサい」
天使組からの酷い言われようである。
もっと、こう天使って優しいんじゃなかったでしたっけ?
まあ、光くんと灯くんが特別に優しいだけかもしれない。
「ほら、整列しろ。これから魔力と加護の実力試験を行う」
――は?
私たちの前に立った加賀美先生が突然、そんなことを言って、私は真顔になった。
「試験と言っても学園側がお前らの実力を知るために行う検査みたいなもんだ。他の生徒には見えないように行う」
先生が指差した校庭の一角には数枚のパーティションを組み合わせて囲ったような大きな白い壁が立っていた。
あの向こう側で何かをやるのだろうけど、こんなの聞いてません。
あ、でも逆に堂々とやってる風にしておけば、誰も私を疑ったりしないのでは?
なーんだ、それなら良かっ……
「あいつ、前回も先生に当てられなくてずるいからな。見に行ってやろうぜ」
「きっと強い力を持ってるんでしょうね」
「一人だけ生徒会の親衛隊隊長に選ばれるくらいだからな、どんなもんか見てやろう」
まずい、とてもまずい。この人たち、私の試験を覗き見するつもりだ。
悪魔組からも天使組からもそんなコソコソした声が聞こえてきた。
「壁の中にこれと同じ人形があるから、破壊するか光らせろ」
先生、全然気にせず話を進めるじゃないですか。
破壊するか光らせろってなんですか?
物理的破壊でもいいですか?
私は先生の横に置かれた黒いトルソーの人形を絶望の眼差しで見つめた。
ぶん殴るか……。
ダメだぁ、そんなことしたら、みんなに物理的に攻撃してるの見られちゃう。
「順番にやるぞ、大河内」
そうこうしているうちに始まってしまった。
力が強い人によってはドコーンとかキュイーンとかすごい音がしていた。
なんでわざわざ、こんな人間をあぶり出すようなことをするんでしょうか。
「きゃあー! 京極様! 今日も元気いっぱいですわね!」
闇くんのときもすごい音というか、煙が上がってて、あ、これ人形燃やしたな、と思った。
それなのに、女子たちは壁の上から見えるそれを目撃して、きゃーきゃー言っていた。
「キャー! 西園寺様! 昼間なのにこんなにまばゆいなんて!」
光らせすぎです、光くん。
壁から出てきた加賀美先生もサングラスをかけていました。
ちょっとワイルドでした。
「きゃーっ! 東条様―! 私も飛ばされたいー!」
――塵になりますよ?
ドゴーン! と人形が壁から飛んで行ったんですけど、東条くん。
しかも最終的には粉々になって、どこに行きました?
「きゃー! 伊集院様、ダイナミック!」
灯くんのは全然可愛い攻撃じゃなかった。
雷直撃だよ、あれ。
ピシャーンってすごい音で、人形がどうなったのか想像するのも怖い。
生徒会四人の実力は本当にすごかった。
一般の生徒が誰もかなわないことが分かったし、だからこその生徒会なんだなと思った。
それなのに、私は……。
「次、白鳥」
ついに私の番が来てしまった。
とりあえず、呼ばれるままに壁の中に入る私。
でも、周りには生徒たちが固まっているのが分かった。
たぶん、壁の隙間から見えるんだと思う。
「加賀美先生、まずいですって。私、力なんて持ってないですよ。みんな覗いてますから、止めてください」
人形を見定めている様子で、私は小さな声で先生に抗議した。
「まあ、やってみろよ」
私の後ろに立ったと思ったら、先生は笑いを含んだ声で言った。
――この悪魔……!
絶対に何も起こるはずないのに、私は人形に向かって勢いよく右手をパーにしてかざした。
シーン。
「おい、何も起こらないぞ?」
外から誰かの声が聞こえた。
そりゃ起こりませんって、私、人間なんですって。
そう思ったときだった。
パチッと人形から小さな音が鳴った。
それからボッと小さな火が点いて炎が大きくなっていく。
――あれ、これって、闇くんの。
それにすごい光ってる。まぶしい。
――これは光くん?
「わっ」
周りを確認しようとしたら、急に壁が上空高く吹っ飛んでいった。
集まっていた生徒たちの姿があらわになる。
――待ってください、加賀美先生も何かやってませんか? 絶対、いま目隠し用の壁吹っ飛ばしたの先生ですよね?
後ろに立った先生に文句を言いたいけど、振り向いている場合じゃない。
まばゆい光を放ちながら激しく燃えさかる人形がガタガタと揺れ始める。
なんだか嫌な予感がすると思ったら、それはパンッと弾け飛んだ。
瞬間、誰かの加護が私を透明なバリアで囲う。
視界を巡らせるとにこっと笑う灯くんと目が合った。
東条くんもふんっと鼻で笑ってるし、闇くんも満足そうにこっちを見て頷いてるし、光くんも華麗にウインクしてきた。
――やめてくださいぃぃ! 目立ちたくないんですぅぅぅ! 気を遣ってくださるのは嬉しいんですが、生徒会四人の力なんか使ったら私がバケモノになってしまいますぅぅぅ!
「おかしいだろ、あいつ。悪魔なのに、魔力と加護、どっちも使えてたぞ?」
「た、ただ者じゃねぇ」
時すでに遅し、もう周りから怯えられてます。
悪魔組の黒いブレザーに混ざって、私の白いブレザーがさらに浮いた。
だって、天使組が横に固まっているから、真っ白の横、黒い中の白一点は目立つ。
「あれが例の?」
「何のためにいるのかしらね」
「あいつ本当に悪魔なのか?」
「ダサい」
天使組からの酷い言われようである。
もっと、こう天使って優しいんじゃなかったでしたっけ?
まあ、光くんと灯くんが特別に優しいだけかもしれない。
「ほら、整列しろ。これから魔力と加護の実力試験を行う」
――は?
私たちの前に立った加賀美先生が突然、そんなことを言って、私は真顔になった。
「試験と言っても学園側がお前らの実力を知るために行う検査みたいなもんだ。他の生徒には見えないように行う」
先生が指差した校庭の一角には数枚のパーティションを組み合わせて囲ったような大きな白い壁が立っていた。
あの向こう側で何かをやるのだろうけど、こんなの聞いてません。
あ、でも逆に堂々とやってる風にしておけば、誰も私を疑ったりしないのでは?
なーんだ、それなら良かっ……
「あいつ、前回も先生に当てられなくてずるいからな。見に行ってやろうぜ」
「きっと強い力を持ってるんでしょうね」
「一人だけ生徒会の親衛隊隊長に選ばれるくらいだからな、どんなもんか見てやろう」
まずい、とてもまずい。この人たち、私の試験を覗き見するつもりだ。
悪魔組からも天使組からもそんなコソコソした声が聞こえてきた。
「壁の中にこれと同じ人形があるから、破壊するか光らせろ」
先生、全然気にせず話を進めるじゃないですか。
破壊するか光らせろってなんですか?
物理的破壊でもいいですか?
私は先生の横に置かれた黒いトルソーの人形を絶望の眼差しで見つめた。
ぶん殴るか……。
ダメだぁ、そんなことしたら、みんなに物理的に攻撃してるの見られちゃう。
「順番にやるぞ、大河内」
そうこうしているうちに始まってしまった。
力が強い人によってはドコーンとかキュイーンとかすごい音がしていた。
なんでわざわざ、こんな人間をあぶり出すようなことをするんでしょうか。
「きゃあー! 京極様! 今日も元気いっぱいですわね!」
闇くんのときもすごい音というか、煙が上がってて、あ、これ人形燃やしたな、と思った。
それなのに、女子たちは壁の上から見えるそれを目撃して、きゃーきゃー言っていた。
「キャー! 西園寺様! 昼間なのにこんなにまばゆいなんて!」
光らせすぎです、光くん。
壁から出てきた加賀美先生もサングラスをかけていました。
ちょっとワイルドでした。
「きゃーっ! 東条様―! 私も飛ばされたいー!」
――塵になりますよ?
ドゴーン! と人形が壁から飛んで行ったんですけど、東条くん。
しかも最終的には粉々になって、どこに行きました?
「きゃー! 伊集院様、ダイナミック!」
灯くんのは全然可愛い攻撃じゃなかった。
雷直撃だよ、あれ。
ピシャーンってすごい音で、人形がどうなったのか想像するのも怖い。
生徒会四人の実力は本当にすごかった。
一般の生徒が誰もかなわないことが分かったし、だからこその生徒会なんだなと思った。
それなのに、私は……。
「次、白鳥」
ついに私の番が来てしまった。
とりあえず、呼ばれるままに壁の中に入る私。
でも、周りには生徒たちが固まっているのが分かった。
たぶん、壁の隙間から見えるんだと思う。
「加賀美先生、まずいですって。私、力なんて持ってないですよ。みんな覗いてますから、止めてください」
人形を見定めている様子で、私は小さな声で先生に抗議した。
「まあ、やってみろよ」
私の後ろに立ったと思ったら、先生は笑いを含んだ声で言った。
――この悪魔……!
絶対に何も起こるはずないのに、私は人形に向かって勢いよく右手をパーにしてかざした。
シーン。
「おい、何も起こらないぞ?」
外から誰かの声が聞こえた。
そりゃ起こりませんって、私、人間なんですって。
そう思ったときだった。
パチッと人形から小さな音が鳴った。
それからボッと小さな火が点いて炎が大きくなっていく。
――あれ、これって、闇くんの。
それにすごい光ってる。まぶしい。
――これは光くん?
「わっ」
周りを確認しようとしたら、急に壁が上空高く吹っ飛んでいった。
集まっていた生徒たちの姿があらわになる。
――待ってください、加賀美先生も何かやってませんか? 絶対、いま目隠し用の壁吹っ飛ばしたの先生ですよね?
後ろに立った先生に文句を言いたいけど、振り向いている場合じゃない。
まばゆい光を放ちながら激しく燃えさかる人形がガタガタと揺れ始める。
なんだか嫌な予感がすると思ったら、それはパンッと弾け飛んだ。
瞬間、誰かの加護が私を透明なバリアで囲う。
視界を巡らせるとにこっと笑う灯くんと目が合った。
東条くんもふんっと鼻で笑ってるし、闇くんも満足そうにこっちを見て頷いてるし、光くんも華麗にウインクしてきた。
――やめてくださいぃぃ! 目立ちたくないんですぅぅぅ! 気を遣ってくださるのは嬉しいんですが、生徒会四人の力なんか使ったら私がバケモノになってしまいますぅぅぅ!
「おかしいだろ、あいつ。悪魔なのに、魔力と加護、どっちも使えてたぞ?」
「た、ただ者じゃねぇ」
時すでに遅し、もう周りから怯えられてます。
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