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まだ3日目なのに襲われました!
⑥
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◆ ◆ ◆
「ようこそ、僕の部屋へ」
寮に帰って、今日は西園寺くんの部屋に足を踏み入れた。
扉を入って、ぎょっとする。
なんか、西園寺くんの部屋だけ、知らないお兄さんが居るんですけど……!
キッチンのほうにコックさんみたいな格好をした若いお兄さんが立っていた。
なんか顔が厳つくて、別の意味での調理もしてませんか? って感じだ。
「ああ、中堂さんは僕専属のシェフ兼パティシエなんだ。好きなものを頼むといいよ。全部作ってくれるから」
私の視線に気が付いたのか、西園寺くんが説明してくれた。
――西園寺くん、桁違いだった!
とりあえず、ぺこっと軽く頭だけ下げておいた。
ぺこっと頭を下げ返されて、あ、良い人なんだ、と思った。
あの人も天使なのかな。
「ああ、ただケーキとかは仕込みが必要だから、本日のケーキとかしかないんだけど」
思い出したように西園寺くんが言った。
「いえ、あの、大丈夫です。なんでも好きです」
高級食材とか食べたことないから分かんないけど、貧乏な私はなんでも食べないといけなかったから好き嫌いがない。
「じゃあ、中堂さん、コースで出してもらっていいですか? デザート重視で」
いつもそうしてるのか、西園寺くんの言葉に無言で頷いて、中堂さんは料理を準備し始めた。なんだか落ち着かない。
「そんなに緊張しなくて良いんだよ? ここを家だと思って良いんだから」
白いクロスのかかったテーブルにつきながら、西園寺くんは私に言った。
「正直、無理です。初めての体験にドキドキしています」
私も彼の真似をしながら椅子に座り、何かを言った。
緊張して、無理しか覚えてない。
だって、お金持ちのお家になんて遊びに行ったことはないんですって。
もういま、私、表情なくしてますって。
「君は本当に正直で面白いな」
目の前に座っている西園寺くんが楽しそうでなによりだ。
この後、どんどん見たこともないような料理が出てきて、緊張で味なんか分からないだろうと思ったけど、食べてみたら美味しくて、ほっぺがふにゃふにゃになった。
最後に出てきたケーキの盛り合わせなんて、いまの自分が男子であることを忘れて堪能してしまった。男の子って、甘いもの苦手な子多いのに、私はやってしまった。
「甘いものを喜んでくれたみたいで、僕は嬉しかったよ」
西園寺くんは甘いものが好きらしい。
だったら、私甘いもの好きで良かったかな。
「美味しかったです。ごちそうさまでした」
私の言葉に西園寺くんは静かに頷いて、中堂さんのほうを向いた。
「中堂さん、お疲れさまでした」
「はい、坊ちゃん」
――喋った。
私はぺこっと頭を下げて去っていく中堂さんを暫く見つめてしまっていた。
「中堂ばっかり見てないで、僕のことも見てもらっていいかな?」
「へ?」
いつの間にか、私の横に移動していた西園寺くんが王子様みたいに片膝をついて、こちらを見上げていた。
――ちょっと拗ねながらもすごいキラキラしてる! もう逆に目が痛い!
「お風呂、一緒に入るかい?」
「は? い、いえ、遠慮しておきます」
完全なる不意打ちだ。
お風呂タイムは好きですけど、ここは拒否させていただきます。
「いいじゃないか、男同士だし、恥ずかしがることはないだろう?」
首を傾げながらそんな風に言うなんてあざと天使過ぎます。
でも、まずいんですって! 女なんですって! 私!
「西園寺くんの裸を見るなんて、恐れ多いです! 目が取れてしまいます!」
私は両目を両手で隠しながら大きな声で言った。
いや、もうどうにでもなれ、くらいの勢いで言った。
「そう、そんなに言うなら仕方ないね。僕のこと、そんな神々しいものだと思ってくれてるんだ。ありがとうね」
あー、なんか逆に喜ばせてしまったみたいです。
でも、諦めてくれたからよしとします。
そして、西園寺くんは先にお風呂に入っていきました。
「ようこそ、僕の部屋へ」
寮に帰って、今日は西園寺くんの部屋に足を踏み入れた。
扉を入って、ぎょっとする。
なんか、西園寺くんの部屋だけ、知らないお兄さんが居るんですけど……!
キッチンのほうにコックさんみたいな格好をした若いお兄さんが立っていた。
なんか顔が厳つくて、別の意味での調理もしてませんか? って感じだ。
「ああ、中堂さんは僕専属のシェフ兼パティシエなんだ。好きなものを頼むといいよ。全部作ってくれるから」
私の視線に気が付いたのか、西園寺くんが説明してくれた。
――西園寺くん、桁違いだった!
とりあえず、ぺこっと軽く頭だけ下げておいた。
ぺこっと頭を下げ返されて、あ、良い人なんだ、と思った。
あの人も天使なのかな。
「ああ、ただケーキとかは仕込みが必要だから、本日のケーキとかしかないんだけど」
思い出したように西園寺くんが言った。
「いえ、あの、大丈夫です。なんでも好きです」
高級食材とか食べたことないから分かんないけど、貧乏な私はなんでも食べないといけなかったから好き嫌いがない。
「じゃあ、中堂さん、コースで出してもらっていいですか? デザート重視で」
いつもそうしてるのか、西園寺くんの言葉に無言で頷いて、中堂さんは料理を準備し始めた。なんだか落ち着かない。
「そんなに緊張しなくて良いんだよ? ここを家だと思って良いんだから」
白いクロスのかかったテーブルにつきながら、西園寺くんは私に言った。
「正直、無理です。初めての体験にドキドキしています」
私も彼の真似をしながら椅子に座り、何かを言った。
緊張して、無理しか覚えてない。
だって、お金持ちのお家になんて遊びに行ったことはないんですって。
もういま、私、表情なくしてますって。
「君は本当に正直で面白いな」
目の前に座っている西園寺くんが楽しそうでなによりだ。
この後、どんどん見たこともないような料理が出てきて、緊張で味なんか分からないだろうと思ったけど、食べてみたら美味しくて、ほっぺがふにゃふにゃになった。
最後に出てきたケーキの盛り合わせなんて、いまの自分が男子であることを忘れて堪能してしまった。男の子って、甘いもの苦手な子多いのに、私はやってしまった。
「甘いものを喜んでくれたみたいで、僕は嬉しかったよ」
西園寺くんは甘いものが好きらしい。
だったら、私甘いもの好きで良かったかな。
「美味しかったです。ごちそうさまでした」
私の言葉に西園寺くんは静かに頷いて、中堂さんのほうを向いた。
「中堂さん、お疲れさまでした」
「はい、坊ちゃん」
――喋った。
私はぺこっと頭を下げて去っていく中堂さんを暫く見つめてしまっていた。
「中堂ばっかり見てないで、僕のことも見てもらっていいかな?」
「へ?」
いつの間にか、私の横に移動していた西園寺くんが王子様みたいに片膝をついて、こちらを見上げていた。
――ちょっと拗ねながらもすごいキラキラしてる! もう逆に目が痛い!
「お風呂、一緒に入るかい?」
「は? い、いえ、遠慮しておきます」
完全なる不意打ちだ。
お風呂タイムは好きですけど、ここは拒否させていただきます。
「いいじゃないか、男同士だし、恥ずかしがることはないだろう?」
首を傾げながらそんな風に言うなんてあざと天使過ぎます。
でも、まずいんですって! 女なんですって! 私!
「西園寺くんの裸を見るなんて、恐れ多いです! 目が取れてしまいます!」
私は両目を両手で隠しながら大きな声で言った。
いや、もうどうにでもなれ、くらいの勢いで言った。
「そう、そんなに言うなら仕方ないね。僕のこと、そんな神々しいものだと思ってくれてるんだ。ありがとうね」
あー、なんか逆に喜ばせてしまったみたいです。
でも、諦めてくれたからよしとします。
そして、西園寺くんは先にお風呂に入っていきました。
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