上 下
6 / 41
寮の部屋まで一緒なんて聞いてません!

しおりを挟む
 ◆ ◆ ◆

 生徒たちが続々と寮に帰っていく。
 でも、東条くんと京極くんの足は違う建物に向かっているみたい。
 いつまでこの捕らわれた宇宙人みたいな感じでいなければならないのか。

「きゃー! 東条様よ!」
「京極様も! こっち向いてー!」

 歩いているだけでこの黄色い声。
 入学初日でこの人気。
 天使と悪魔界って一体どうなってるの?

「あー、めんどうくせぇ」

 ぼそりと東条くんが言ったのが聞こえた。
 ええ、聞こえてます、私にはバッチリと。

 それからきゃーきゃー言われながら、綺麗で大きな建物に入っていく。
 なんか西洋の博物館みたいな立派な建物なんですけど、ここはなんなんですか?
 入口には黒服の方々みたいのが立ってたんですけど?

「おー、もう来てたか」

 中に入ると広くて綺麗なエントランスがあって、高級ホテルのラウンジみたいにソファとテーブルが置かれていた。

 そこに優雅に座っていたのが、天使組であり生徒会書記と補助である西園寺くんと伊集院くん。

 ――ん?

「僕たちのクラスはスムーズに説明が終わったからね」

 西園寺くんが立ち上がって、私たちの前に立つ。

「もしかして、その子が例の?」

 伊集院くんもこっちに来て、私のことを見た。
 近くで見ても目がまん丸で可愛い顔をしている。
 って、例のって、なに?

「ああ、こいつが俺たちの親衛隊隊長だ」

 東条くんが私を前に出した。

 ああ、それのことですね。形だけですよね?

 そう思うけど、なんか今はしゃべったらいけない気がして、私は口を堅く閉じた。

「まさか、今年は一人とはね」

 優雅な動きで西園寺くんが私をまじまじと見る。
 そんなに見ても、何も変わりはしないんですけど。
 私が分身したりとかもないんですけど。
 やっぱり一人っておかしいですよね?

「加賀美のやろうが決めたんだから仕方ないだろ」

 呆れたように東条くんが溜息を吐いた。

「まあ、いいじゃん? 早く部屋割り決めようぜ」

 京極くんが言って、四人の視線が集まる。

 え?

「誰が、こいつと同じ部屋になるか……」

 東条くんの言葉で理解する。
 私、もしかして、この豪華な寮でこの四人と暮らすんですか?

 しかも、今の言い方だと私が誰かと同じ部屋になるって。

「待ってください。部屋ならいっぱい……」

 そう思って吹き抜けになってるところから上と下にある部屋を見る。
 あ……、と思った。

「気付いたか? 四部屋しかねぇんだよ」

 東条くんが冷たい声で言う。
 それは俺も嫌なんだよ、と言っているようだった。

「ちょっと一瞬いいですか?」

 右手の人差し指を立てて、言う。愛想笑い付きで。

「あの、ほんと一瞬なんで」

 じりじりと後ろに下がって……私は寮を飛び出した。

 ――生徒会メンバーと寮まで一緒なんて聞いてないんですけどぉぉぉおぉ!

「加賀美せんせいぃい、寮の部屋まで彼らと一緒なんて聞いてないですよぉぉぉ?」

 私は腹の底から唸るような声で加賀美先生に詰め寄った。
 自作の休憩室でお休みになられてる場合じゃないんですよ!

「ん? 腹でも減ったのか? 食堂で飯でもおごってやろうか」

 ソファに寝そべった加賀美先生が私の頭を乱暴に撫でる。

「そんな犬や猫みたいに接しないでください!」

 ぺちっと先生の両手を叩いて、私は立ち上がった。
 私は真剣なのだ。
 だって、男四人の中に女の子一人って……。
 バレてないからって……。

「まあまあ、行こうぜ。腹減ってたら話も出来ないだろ」

 暢気に立ち上がって、先生が部屋から出ていく。
 私はとてとてとその後を追った。
 お腹減った……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

訳あり新聞部の部長が"陽"気すぎる

純鈍
児童書・童話
中学1年生の小森詩歩は夜の小学校(プール)で失踪した弟を探していた。弟の友人は彼が怪異に連れ去られたと言っているのだが、両親は信じてくれない。そのため自分で探すことにするのだが、頼れるのは変わった新聞部の部長、甲斐枝 宗だけだった。彼はいつも大きな顔の何かを憑れていて……。訳あり新聞部の残念なイケメン部長が笑えるくらい陽気すぎて怪異が散る。

大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot
児童書・童話
 薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。 「シチュー作れる?」  …………へ?  彼女の正体は、『森の魔女』。  誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。  そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。  どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。 「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」 「あ、さっきよりミルク多めで!」 「今日はダラダラするって決めてたから!」  はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。  子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。  でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。  師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。  表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。

【完】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~シリーズ2

丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴* ▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?   ▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

処理中です...