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雪豹の真実
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「アキーク、アルカトって誰ですか?」
うつ伏せのまま僕が少し上半身を起こすと枕元で蝋燭の火がゆらりと揺れた。
「また妬いてるのか?」
僕の下に居るアキークが呆れたように笑う。
「違います。ただ……」
「俺の昔の名だ」
「アキークの?じゃあアキークという名は?」
「アキークはオニキスという黒い天然石のことだが、俺の先祖に一人だけ突然変異の黒豹が居たらしい。その人がアキークと呼ばれていた。見たことはないんだが子供ながらに惹かれてな、勝手に名前を拝借して本当の名は捨てたんだ」
「王家を出たのは小さい頃ってことですか?」
「いや、家を出たのは前王が死んだ時だ。それから:表(おもて)でもアキークと名乗るようになった。それで自由を追い求めていたら、自然と:海賊(コルサーン)になってたってわけだ」
「自由……」
「ナキ、もしかして今更俺と番になったのが嫌だとか言わないよな?」
またアキークの両耳がキョロキョロと挙動不審の瞳のように動いている。
「言いませんよ。僕はあなたを愛しているんですから」
お互いの額と額をつけ、僕はゆっくりと瞬きをした。
とても幸せで、とても満たされている。どうしてだろう、アキークと居ると何の不安も感じない。ああ、僕はやっと自由になれたんだ……。アキークと番になれたんだ……。
「ナキ、俺もお前を愛してる」
やっと、あなたの声で聞くことが出来た。この声が好き、この瞳が好き、この人の心が好き。
僕はこの人と:海賊(コルサーン)として生きていく────。
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