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雪豹の真実
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しおりを挟む「アキ、ん……」
熱を帯びた瞳が僕を見つめたと思うとザラザラとした感触が僕の唇を優しくなぞった。ほんの一瞬だったけれど、それだけで背筋がゾクゾクと戦慄く。戸惑いながらも唇を薄く開いてみると熱を持った薄い舌が口の中に入ってきた。
「んん……っ」
器用に舌を絡め取られ、上顎を責められると無意識に甘い声が出てしまう。恥ずかしくなって瞳をぎゅっと閉じると、アキークの舌は控えめに僕から離れていった。
「怖いか?」
そう問われ、そろそろと閉じた瞼を持ち上げる。至近距離に魅惑の瞳があった。
魔石の力を使っているに違いない、気が付けば水はお湯になっており、シャワー室の雰囲気は湯気によって、いつもとは違っていた。とてもドキドキする。この感覚はなんだろうか。シャワーから出たお湯の所為なのか、アキークとのキスの所為なのか、自分の身体が火照って仕方がない。
「いえ……、あの、なんか身体が熱くて……でも、僕、まだ発情期じゃないのに……こんな風になったことなくて……」
発情期以外で身体がこんな風になるなんて初めてだ。ましてや、人とこんな風に触れ合ったこともない。キスだって初めてで……、でも、そんなことアキークには言えない。
「アキーク?」
突然、逞しい両腕に優しく抱きしめられた。
「ごめんな、もっと早くルマンの息の根を止めておくべきだった。指示を出せたのに……、お前にツラい思いをさせてしまった」
何のショックも残さず番は解消されたのにアキークは僕の心を心配している。:発情(ヒート)中に王に初めてを奪われてしまったこと、人と深く愛し合うことが初めてだということをアキークに察せられてしまった。
「あなたは何も悪くないです。何度も僕を助けてくれた。それに謝るのは僕の方です。……ごめんなさい」
振り回して、ごめんなさい。魔石を持ったまま消えて、ごめんなさい。あなたを好きになって、ごめんなさい。それでも……
「許されるなら、僕はあなたとずっと一緒に居たい。だから……、僕をあなたの番にしてください」
「ナキ」
「……んっ」
再び深く口付けをされながら、シャツのボタンが外され、上も下も服を剥ぎ取られていく。
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