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死の予知夢
03
しおりを挟む僕は船首から海に飛び込んだ。氷の割れ目に落ち、深く深く沈んで行く。すぐに冷たいという感覚は無くなった。上も下も分からない。真っ暗で誰も居ない。もう誰も追って来てはくれない。
「……キ」
遠くから何かが聞こえる。
「ナキ!」
「……っ」
ハッとした。蝋燭の火が見える。
「どうした?:魘(うな)されてたぞ?」
そう言ってアキークに顔を覗かれ、今が夜なのだと思い出した。ここはハーラ港の小さな宿の一室。
「いえ、少し怖い夢を見ただけです」
一瞬でさっきのことを思い出す。あれは予知夢だ。夢として見る予知は実際に事が起こるまでに時間がある。きっと、アキークは僕と一緒に居たから……あんなことに。
────もう、あの船には乗ってはいけない。あなたと一緒には居られない。
「大丈夫だ、俺がそばに居る。お前が望めば、いつだって」
離れなければいけないのに、どうしてあなたはそんなことを言うのだろうか。そんな風に僕を抱きしめるのだろうか。その口で嘘でも、嫌いだと言ってほしい。その腕で突き放してほしい。
この声が好き、この瞳が好き、この人の心が好き。でも、僕は行かなければならない。好きだからこそ、愛しているからこそ、あなたから離れなければ……。
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