獅子王の番は雪国の海賊に恋をする

純鈍

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死の予知夢

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 船の修理のために僕らは港に暫く停泊することになった。アルカマル領のハーラ港という場所だ。魔石の力を使えば直ぐに直せるらしいけれど、木材が無いらしい。この海で木製の船に乗っているのはアキークくらいだから。

「たまには陸地もいいっすよね」

「シャラール、人から何かを盗むなよ?」

「分かってるっすよ」

 いつ振りの陸なのか、シャラールさんはやけに嬉しそうに駆けて行き、人混みに消えていった。

「アキークも他の船を襲ったりするんですか?」

 僕は、まだその場面に遭遇していないし「人から盗むな」なんて海賊らしくないことを言うから思わず確認してしまった。

「時と場合による。俺は自由と平和を愛する:海賊(コルサーン)だからな。金が無くなったら孤島に宝を探しに行く」

「それ、海賊なんですか?」

「笑うなよ」

 人に笑うなと言っておいて、アキークは僕の頭を撫でながら楽しそうに笑った。この人のそばに居られることが、とても嬉しい。

「アルシャムスがまだ優勢らしいぞ?アルカマルは大丈夫なのか?」

 港に着くと、そんな噂ばかりを耳にする。アキークはどうやって噂を流したのだろうか。

『ナキとの番を解消した途端に国が滅ぶ、番である限りアルシャムスの優勢は続く』

 アルシャムスの王はその噂を信じているのか僕は未だに番を解消されていない。首の噛み跡は残っているし、精神的ショックを受けていないのが、その証拠だ。

 王はまだ僕を探しているだろうか。
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