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獅子王の番
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しおりを挟む「ナキ様、お食事の時間です」
ある夕刻、いつものように使用人が僕の部屋に夕食を運んできた。閉じ込められては居るものの、使用人達は僕を王族のように丁重に扱う。食事も高級な食材を使用したものだ。ただ、貧しい暮らしをしてきた僕には正直言って合わない。肉ばかりなんて、全く嬉しくないのだ。
「何か、見られましたか?」
席に着き、食事を取っていると監視の獣人に尋ねられた。毎回、夕食の時に何かを予知したかと訊かれる。残念ながら僕はこの力を自分ではコントロール出来ないから見えることは少なくて「いいえ」と答えることが多い。でも、今日は……
「いいえ」
そう答えた瞬間に、外で何かが二回青く光った。
「なんだ?」
疑問に思った監視が窓に近付く。
────あと一回光ったら……移動!
「……っ」
外で何かが光った瞬間、僕は後ろの扉の方に転がった。
「ぐあっ!」
突然、青い炎を纏った砲弾が窓を抉り取り、監視と共に下に落ちていった。直ぐに爆音と地響きを感じる。
予知していた通りだった。グズグズしていられない。これはきっと隣国からの砲撃だ。どうにか隣国に捕虜として連れ去られたことにして、ここから脱せられないだろうか。
「仕方ない……」
僕は自分の長い髪を切って置いて行くことにした。真っ黒で真っ直ぐな髪の人間は、この国にさほど居ないから直ぐに僕のものだと分かるだろう。ただ、ロタスから貰った髪飾りだけは置いて行けなかった。
「よし」
戦火の中、僕は窓からこっそり部屋を抜け出し、城壁に掘られた彫刻に足を掛けながら下に降りた。そこから裏の森に抜けるのは簡単だった。戦いは城の北方で行われていたからだ。南側の門は見張りが居なかった。皆、戦力として北側に集められたのだろう。
南側に国はない。僕は遠回りになるけれど北にある雪国アルカマルに亡命することを決めた。
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