獅子王の番は雪国の海賊に恋をする

純鈍

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獅子王の番

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 ◆ ◆ ◆

 突然の友の死、悲しみに沈み何も考えられないまま兵に連れられ、気が付けば僕はアルシャムスの王の前に居た。他の獅子獣人と違い、少し赤みがかった毛の色が特徴的だ。金の瞳が僕をジッと見つめている。

「ルマン様、この者がおかしなことを言いまして」

 僕を拘束した兵が王に向かってハッキリとした声で告げる。

「おかしなこと?」

「これから起きることを予知することが出来ると。確かに先程の砲撃、この者は予知いたしておりました。ですが、私個人の意見といたしましては、この者が砲撃に加担していたのではないかと考えております」

「そんな……、好き勝手なことを言う!あなたが僕の言うことを信じてくれていれば、ロタスは死なずに済んだんです!」

 この兵が時間を無駄にしたのだ。直ぐに逃げていれば、被害は少なかったはず……。

「ロタス?ああ、あの人間か……、死んだところで我々には何の不利益もない」

「どうして……!どうして、そんなに残酷なことを言うんですか!」

「では、なんと言ってほしいのだ?可哀想だったな、とでも?」

 王は冷酷な口調で淡々と僕に訊ね、玉座から立ち上がりこちらに歩いてきた。

「違ッ……、う、く……」

 ────どうして、こんな時に……。

 ヒートを抑えるための薬が高額で買えないために、僕の身体はこんな状況でもヒートを発現した。身体の底から熱が生まれ、誰彼構わず勝手に相手を求め始める。

「貴様、ベータではなくオメガなのか。珍しい……、我輩の番にしてやろう」

 王が拘束されている僕の腕をグッと引っ張った。耳元で囁かれると背筋に電流が流れるように身体がびくびくと反応した。こんな男、好きではないのに……。

「嫌……ッ、です……!」

 熱い、身体が熱くて堪らない。誰かに、抱かれたい。この熱を吐き出したい。でも……、違う、ダメ、そうじゃない。

「その能力ごと貴様は我輩のモノだ」

「い、や……!」

 下着ごとズボンを下され、熱く硬いモノが後ろから体内に侵入してきた。
 
 ────痛い、苦しい……!

「……くっ!」

 獅子の牙が僕の首筋に突き立てられた。そこから、また別の熱が生まれる。

「番を解消されたくないだろう?ならば、我輩と共に居るのだ」

 熱に浮かされた僕の脳に、そんな言葉が刻まれた。
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