獅子王の番は雪国の海賊に恋をする

純鈍

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獅子王の番

02

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 ◆ ◆ ◆

「すみません!門を開けてください!」

 僕は城の大きな外門を力一杯に叩いた。

「人間如きが何の用だ?」

 一人の獣人が上の方から訊ねてきた。獅子特有の:鬣(たてがみ)が風で靡いている。この感じは開けてくれそうにない、と思った。大きなパーティーのために城に手伝いに来たことはあったけれど、何もない時に来たことはないし、僕は有名人でもない。

「じゃ、じゃあ、開けてくれなくても良いです!もうすぐ、この城の見張り台のどこかに砲弾が飛んできます!今すぐに避難してください!」

「どこかって、どこだ?」

「どこって……、あの……」

 見張り台は四方にあるっていうのだけは知ってるんだけど、どこって……、そうだ、ロタス!

「ロタスっていう人間が居る見張り台です!」

「嘘を吐くな!人間!」

 獅子らしい咆哮が僕に向けられた。あまりの迫力に身体がビクリと反応する。

「嘘じゃないんですって!」

「どうして分かる?貴様、怪しいな」

 どうしたら信じてくれるのか分からない。この世には魔石というものが存在しているけれど、それを扱えるのは獣人の中でほんの一部の者だけで能力持ちはそれよりも遥かに少ない。そういう能力なんですって言っても信じてくれない気がする。でも言わないとロタスが死んでしまう!

「僕には、これから起こることを予知する能力があるんです!」

「人間如きの話など信じられるか!」

「どうして────」

 僕の声は爆音に掻き消された。ついに見張り台が砲撃されたのだ。今起こったことを頭では理解しているはずなのに、声も出せないし身体も動かせなくなった。

「何があった?」

 外門の上の見張りが門の内側に訊ねている。そこに報告に走ってきた兵が居るようで「北の見張り台が何者かによって砲撃されました!その場に居た兵は全滅したとのこと!」という張り上げた声が聞こえた。

「……嘘だ、ロタス……」

 あまりの衝撃に僕は膝から崩れ落ちた。そこに上から一人の兵士が飛び降りて来た。僕を怪しんでいた獣人だ。

「貴様を拘束する」

 ドスンと着地し、獣人は僕の両腕に鎖をつけた。

「ロタス……」
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