獅子王の番は雪国の海賊に恋をする

純鈍

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獅子王の番

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 太陽の国アルシャムス、そこで僕は産まれた。僕の両親は人の国からの流れ者だった。貧しかったけれど、とても幸せだった。両親は二年前に相次いで病気で亡くなり、今や僕は一人ぼっちだ。

 獅子、つまりライオンの獣人が主に暮らしているこの国で、人間である僕は『なんでも屋さん』の手伝いをして、肩身の狭い思いをしながら生きている。

 オメガである僕は小柄で力仕事も碌に出来ない。三ヶ月に一度の:発情(ヒート)も厄介で、僕は一生こんな生活を送っていくんだ。

 そう思っていた……。

「……っ」

 僕は突然の頭痛に顔をしかめた。お金持ちの客から貴金属を預かって、店の作業台で磨いている時だった。誰にも言っていないけれど、僕には:他人(ヒト)とは違った、ある能力がある。その能力は時間も場所も選ばず勝手に発動され、いつも僕を悩ませる。困った能力だ。

「嘘……」

 急に夢を見るみたいに僕の脳裏に映像が流れ始める。アルシャムスの城の見張り台に遠方から一発の砲弾が撃ち込まれるというものだった。赤い炎を纏った砲弾だ。

「大変だ」

 城の見張り台には友人である人間のロタスが居る。

「どうした?おい!ナキ、どこに行くんだ?」

 獅子獣人の店主リフヤが僕を呼び止めたけれど、僕は慌てて店を飛び出した。

 ────僕の困った能力とは『予知』である。 
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