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二人だけの朝
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◆ ◆ ◆
「ん……」
薄いカーテン越しの明るい光で目が覚めた。もう朝か……、と思いながら、ゆっくりと目が開き、頭が覚醒していく。
「ひっ!」
まさか寝起きでこんな短ぇ悲鳴みてぇなもんが自分の口から出るとは思わなかった。
昨晩俺をぐっちゃぐちゃにしやがった男が隣で気持ち良さそうに眠っていたのだ。
「ん……? ああ、おはよう……」
数秒後、俺が起きて動いたことに気が付いたのか、男はもぞもぞと起き出して、寝起きとは思えないほど穏やかな表情で俺に挨拶をしてきた。
「……っ」
なにも言葉が出ずに、わなわなと唇が震える。
その様子を見てか否か、男は少し申し訳なさそうな顔で口を開いたのだが
「すまない、つい、やり過ぎてしまった。はじめての君にあんなに激しく……」
「うるせぇ! 俺の身体になにしやがった!」
男の言葉に顔がぶわっと熱くなり、俺はガバッと勢い良く起き上がって、男を睨み付けた。
「はじめてで、もうそんなに動けるのか、すごいな。頑丈だね」
感心したように男は言った。
はじめてはじめて言うな! くそ、たしかに、腰とかいろいろと痛ぇよ! だが、いまはそんなことを気にしてる場合じゃねぇ!
「答えろよ! あんたがなにかしたんだろう? じゃなきゃ、あんな……、あんな……」
もう言葉にするのも恐ろしい。血吸われただけで発情するとか、俺が変態みてぇじゃねぇか。
ああ、もう、なんで俺も受け入れちまったかなぁ……!
「んー? 私、なにかしたかな?」
惚けながら男が俺に近付いてくる。
「こっち来んな、殴るぞ?」
拳をつくって、俺はじりじりとデカいベッドの上で後ずさった。
それでも男の動きは止まらず
「こっち来んなって!」
俺は再度吠えた。このまま近付いて来やがったら、まじで殴ってやる。
「ふふっ」
突然、動きを止めて、男が笑った。
「なに笑ってやがる?」
嘲笑ではなく、その笑みがあまりにも嬉しそうで、拍子抜けする。
「怯えた子犬みたいで可愛いなと思って。あんまりそっちに行くと落ちてしまうよ?」
「なっ」
完全なる不意打ちだった。
ふわっと真正面から抱き寄せられて、小さい餓鬼をよしよしとなだめるみてぇに頭を撫でられる。
瞬間、自分の頭に獣の耳が出てしまったのを感じて、俺は慌てて奴から身体を離し、その両耳を両手で押さえた。キッと睨み付けてやったが、視線が合わない。
「うんうん、嬉しいね。いい子だね」
奴の視線がなんかやけに下のほうに向いてるな、なに見てやがんだ? と思ったら、ぶんぶんと動く俺の尻尾だった。
「なっ」
目を見開いて、今度はガバッと片手で自分の尻尾をシーツに押さえつける。
なにやってんだ、俺の身体……! こんな変態野郎に尻尾なんか振るな!
くそ、犬としての本能を最高に満たされてしまって、複雑な気持ちになる。
「ああ、そうだ、お腹減っただろう? すまないね、私ばかり満たされてしまって。君の好きなものをなんでも作ってあげよう」
なんともない、という顔で男が俺の頬をするりと撫でる。
「……あんた、料理出来るのか?」
考えてみたら、あんなことがあって昨日の昼から何も食ってなかった。
期待するつもりはなかったが、気が付いたら期待しているような言葉を溢していた。
「まあ、長く生きてるからね。それなりに一人でなんでも出来るさ」
俺に背を向けてベッドから降り、男はそう言いながら着ていたバスローブをばさりと脱ぎ捨てた。
それから、椅子に掛かっていた派手なワインレッドのシャツと黒いパンツズボンを身につけ、「それでなにが食べたい?」とこちらを振り返った。
無造作な髪から覗く瞳にもう炎はないが、どきりとする。
「肉……」
控えめにモゴモゴと発音するのは照れじゃねぇ。遠慮ってやつだ。
「そう言うと思った」
俺の配慮なんて知らねぇだろう男は俺の顔を見て、嬉しそうにニコッと笑った。話を流された。
「ん……」
薄いカーテン越しの明るい光で目が覚めた。もう朝か……、と思いながら、ゆっくりと目が開き、頭が覚醒していく。
「ひっ!」
まさか寝起きでこんな短ぇ悲鳴みてぇなもんが自分の口から出るとは思わなかった。
昨晩俺をぐっちゃぐちゃにしやがった男が隣で気持ち良さそうに眠っていたのだ。
「ん……? ああ、おはよう……」
数秒後、俺が起きて動いたことに気が付いたのか、男はもぞもぞと起き出して、寝起きとは思えないほど穏やかな表情で俺に挨拶をしてきた。
「……っ」
なにも言葉が出ずに、わなわなと唇が震える。
その様子を見てか否か、男は少し申し訳なさそうな顔で口を開いたのだが
「すまない、つい、やり過ぎてしまった。はじめての君にあんなに激しく……」
「うるせぇ! 俺の身体になにしやがった!」
男の言葉に顔がぶわっと熱くなり、俺はガバッと勢い良く起き上がって、男を睨み付けた。
「はじめてで、もうそんなに動けるのか、すごいな。頑丈だね」
感心したように男は言った。
はじめてはじめて言うな! くそ、たしかに、腰とかいろいろと痛ぇよ! だが、いまはそんなことを気にしてる場合じゃねぇ!
「答えろよ! あんたがなにかしたんだろう? じゃなきゃ、あんな……、あんな……」
もう言葉にするのも恐ろしい。血吸われただけで発情するとか、俺が変態みてぇじゃねぇか。
ああ、もう、なんで俺も受け入れちまったかなぁ……!
「んー? 私、なにかしたかな?」
惚けながら男が俺に近付いてくる。
「こっち来んな、殴るぞ?」
拳をつくって、俺はじりじりとデカいベッドの上で後ずさった。
それでも男の動きは止まらず
「こっち来んなって!」
俺は再度吠えた。このまま近付いて来やがったら、まじで殴ってやる。
「ふふっ」
突然、動きを止めて、男が笑った。
「なに笑ってやがる?」
嘲笑ではなく、その笑みがあまりにも嬉しそうで、拍子抜けする。
「怯えた子犬みたいで可愛いなと思って。あんまりそっちに行くと落ちてしまうよ?」
「なっ」
完全なる不意打ちだった。
ふわっと真正面から抱き寄せられて、小さい餓鬼をよしよしとなだめるみてぇに頭を撫でられる。
瞬間、自分の頭に獣の耳が出てしまったのを感じて、俺は慌てて奴から身体を離し、その両耳を両手で押さえた。キッと睨み付けてやったが、視線が合わない。
「うんうん、嬉しいね。いい子だね」
奴の視線がなんかやけに下のほうに向いてるな、なに見てやがんだ? と思ったら、ぶんぶんと動く俺の尻尾だった。
「なっ」
目を見開いて、今度はガバッと片手で自分の尻尾をシーツに押さえつける。
なにやってんだ、俺の身体……! こんな変態野郎に尻尾なんか振るな!
くそ、犬としての本能を最高に満たされてしまって、複雑な気持ちになる。
「ああ、そうだ、お腹減っただろう? すまないね、私ばかり満たされてしまって。君の好きなものをなんでも作ってあげよう」
なんともない、という顔で男が俺の頬をするりと撫でる。
「……あんた、料理出来るのか?」
考えてみたら、あんなことがあって昨日の昼から何も食ってなかった。
期待するつもりはなかったが、気が付いたら期待しているような言葉を溢していた。
「まあ、長く生きてるからね。それなりに一人でなんでも出来るさ」
俺に背を向けてベッドから降り、男はそう言いながら着ていたバスローブをばさりと脱ぎ捨てた。
それから、椅子に掛かっていた派手なワインレッドのシャツと黒いパンツズボンを身につけ、「それでなにが食べたい?」とこちらを振り返った。
無造作な髪から覗く瞳にもう炎はないが、どきりとする。
「肉……」
控えめにモゴモゴと発音するのは照れじゃねぇ。遠慮ってやつだ。
「そう言うと思った」
俺の配慮なんて知らねぇだろう男は俺の顔を見て、嬉しそうにニコッと笑った。話を流された。
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