76 / 87
第3話 天邪鬼
23
しおりを挟む
「なんで? 先生だって姑獲鳥さんを操ったはずなのに……」
どうして先生の能力が効いていないのだろうか。
「僕と兄さんはね、同じ天邪鬼でお互いに能力を共有してるんだよ。兄さんの本当の能力は心を見る能力のみ。だから、心を操る僕の能力を借りてるだけの兄さんが僕に勝てるわけがないんだよ。いくらだって上書き出来る」
先生の話をする亜蘭さんはとても嬉しそうだった。僕には、彼がまるで運動会のかけっこで一着になって喜ぶ子供のように見えた。
「でも、君は面白いね。僕は何も出来ない。なんで僕らの能力を知ってるの?」
変わらぬ表情で亜蘭さんは僕を見た。
僕は亜蘭さんのことを知らなかった。でも、亜蘭さんは先生と能力を共有しているから先生が能力を先に知られれば亜蘭さんの能力も効かなくなるのだろう。
「どうして僕を呼んだんですか?」
僕は彼の質問に答えなかった。質問に答えずに質問で返した。単純に彼に自分のことを教えたくないと思ったからだ。
「君を呼べば兄さんが来ると思ったから。僕は兄さんと一緒に幸せになりたいんだ」
怒ったのか、一瞬で亜蘭さんの表情が冷たいものに変わる。僕が質問に答えなかったからというわけではないらしい。
「それ、兄さんにもらったんだよね? 僕のだよ。僕の兄さんだ」
亜蘭さんは僕の首から掛かっている勾玉を指さして言った。彼が怒っているのは自分の兄を僕に取られたと思い込んでいるからだった。
「こ、これ? どうぞ」
震える手で僕は自分の首から勾玉を外し、亜蘭さんに差し出した。ゆっくりと真っ赤に光るそれに亜蘭さんの手が伸びていく。勾玉を受け取れば、きっと少しは落ち着いてくれるだろう、と僕が思ったときだった。
どうして先生の能力が効いていないのだろうか。
「僕と兄さんはね、同じ天邪鬼でお互いに能力を共有してるんだよ。兄さんの本当の能力は心を見る能力のみ。だから、心を操る僕の能力を借りてるだけの兄さんが僕に勝てるわけがないんだよ。いくらだって上書き出来る」
先生の話をする亜蘭さんはとても嬉しそうだった。僕には、彼がまるで運動会のかけっこで一着になって喜ぶ子供のように見えた。
「でも、君は面白いね。僕は何も出来ない。なんで僕らの能力を知ってるの?」
変わらぬ表情で亜蘭さんは僕を見た。
僕は亜蘭さんのことを知らなかった。でも、亜蘭さんは先生と能力を共有しているから先生が能力を先に知られれば亜蘭さんの能力も効かなくなるのだろう。
「どうして僕を呼んだんですか?」
僕は彼の質問に答えなかった。質問に答えずに質問で返した。単純に彼に自分のことを教えたくないと思ったからだ。
「君を呼べば兄さんが来ると思ったから。僕は兄さんと一緒に幸せになりたいんだ」
怒ったのか、一瞬で亜蘭さんの表情が冷たいものに変わる。僕が質問に答えなかったからというわけではないらしい。
「それ、兄さんにもらったんだよね? 僕のだよ。僕の兄さんだ」
亜蘭さんは僕の首から掛かっている勾玉を指さして言った。彼が怒っているのは自分の兄を僕に取られたと思い込んでいるからだった。
「こ、これ? どうぞ」
震える手で僕は自分の首から勾玉を外し、亜蘭さんに差し出した。ゆっくりと真っ赤に光るそれに亜蘭さんの手が伸びていく。勾玉を受け取れば、きっと少しは落ち着いてくれるだろう、と僕が思ったときだった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説





サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる