天乃ジャック先生は放課後あやかしポリス

純鈍

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第3話 天邪鬼

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「なんで? 先生だって姑獲鳥さんを操ったはずなのに……」

 どうして先生の能力が効いていないのだろうか。

「僕と兄さんはね、同じ天邪鬼でお互いに能力を共有してるんだよ。兄さんの本当の能力は心を見る能力のみ。だから、心を操る僕の能力を借りてるだけの兄さんが僕に勝てるわけがないんだよ。いくらだって上書き出来る」

 先生の話をする亜蘭さんはとても嬉しそうだった。僕には、彼がまるで運動会のかけっこで一着になって喜ぶ子供のように見えた。

「でも、君は面白いね。僕は何も出来ない。なんで僕らの能力を知ってるの?」

 変わらぬ表情で亜蘭さんは僕を見た。

 僕は亜蘭さんのことを知らなかった。でも、亜蘭さんは先生と能力を共有しているから先生が能力を先に知られれば亜蘭さんの能力も効かなくなるのだろう。

「どうして僕を呼んだんですか?」

 僕は彼の質問に答えなかった。質問に答えずに質問で返した。単純に彼に自分のことを教えたくないと思ったからだ。

「君を呼べば兄さんが来ると思ったから。僕は兄さんと一緒に幸せになりたいんだ」

 怒ったのか、一瞬で亜蘭さんの表情が冷たいものに変わる。僕が質問に答えなかったからというわけではないらしい。

「それ、兄さんにもらったんだよね? 僕のだよ。僕の兄さんだ」

 亜蘭さんは僕の首から掛かっている勾玉を指さして言った。彼が怒っているのは自分の兄を僕に取られたと思い込んでいるからだった。

「こ、これ? どうぞ」

 震える手で僕は自分の首から勾玉を外し、亜蘭さんに差し出した。ゆっくりと真っ赤に光るそれに亜蘭さんの手が伸びていく。勾玉を受け取れば、きっと少しは落ち着いてくれるだろう、と僕が思ったときだった。
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