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第3話 天邪鬼
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「姑獲鳥さん!」
きっと何をしても敵わないだろうけど、僕は二人に近付いて亜蘭さんの腕を掴もうとした。でも、「待ってく……ださい」と先に姑獲鳥さんが苦しそうに言葉をもらした。
「なに?」
亜蘭さんが不機嫌そうな顔をする。そして、仕方なくといった様子で少し手の力を弱めたように見えた。
「……あなたは、あのときの子でしょう? 私が勘違いされて人間に封印されていなければあなたたち兄弟を救ってあげられていたかもしれません。飢えや寒さに苦しんで死ぬことはなかったかもしれません。私が悪かったのです。本当にごめんなさい」
別に姑獲鳥さんが悪いわけではないのに、彼女は優しい母のように涙を流しながら亜蘭さんに謝った。それなのに亜蘭さんは「そんなこと気にしてないよ」と笑った。
「じゃあ、なんで姑獲鳥さんにひどいことをするんですか!」
亜蘭さんがまた手に力を込めようとしているのが見えて、僕は彼の腕を自分の両手で必死に掴んだ。けれど、ビクともしない。赤い勾玉の光で亜蘭さんの姿がさらに狂気的に見える。彼の視線は僕ではなく、姑獲鳥さんに向けられ続けていた。
「僕はさ、子供が幸せでいるのが許せないんだよ。この女がいると子供たちが幸せになってしまうんだ。だから、この女を操って人間を呼んで誰かが封印を解いてくれるのを待ってた。封印があったら僕はこの女に触れないからね。最初は封印が強くて女の能力では子供しか呼べなかった。でも、封印が徐々に解けてきて、やっと大人を呼べた。あの人間の女が封印を解いた。これでこの女を始末できる」
その言葉を聞いて、先生たちは紗友さんを止められなかったんだと思った。
いいや、それよりも
きっと何をしても敵わないだろうけど、僕は二人に近付いて亜蘭さんの腕を掴もうとした。でも、「待ってく……ださい」と先に姑獲鳥さんが苦しそうに言葉をもらした。
「なに?」
亜蘭さんが不機嫌そうな顔をする。そして、仕方なくといった様子で少し手の力を弱めたように見えた。
「……あなたは、あのときの子でしょう? 私が勘違いされて人間に封印されていなければあなたたち兄弟を救ってあげられていたかもしれません。飢えや寒さに苦しんで死ぬことはなかったかもしれません。私が悪かったのです。本当にごめんなさい」
別に姑獲鳥さんが悪いわけではないのに、彼女は優しい母のように涙を流しながら亜蘭さんに謝った。それなのに亜蘭さんは「そんなこと気にしてないよ」と笑った。
「じゃあ、なんで姑獲鳥さんにひどいことをするんですか!」
亜蘭さんがまた手に力を込めようとしているのが見えて、僕は彼の腕を自分の両手で必死に掴んだ。けれど、ビクともしない。赤い勾玉の光で亜蘭さんの姿がさらに狂気的に見える。彼の視線は僕ではなく、姑獲鳥さんに向けられ続けていた。
「僕はさ、子供が幸せでいるのが許せないんだよ。この女がいると子供たちが幸せになってしまうんだ。だから、この女を操って人間を呼んで誰かが封印を解いてくれるのを待ってた。封印があったら僕はこの女に触れないからね。最初は封印が強くて女の能力では子供しか呼べなかった。でも、封印が徐々に解けてきて、やっと大人を呼べた。あの人間の女が封印を解いた。これでこの女を始末できる」
その言葉を聞いて、先生たちは紗友さんを止められなかったんだと思った。
いいや、それよりも
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