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第3話 天邪鬼
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「姑獲鳥、もう危険だから人間は呼ぶな。この封印は近いうちに自然と解ける。あと少しの辛抱だ。頑張れ」
僕がつるを切っている間に先生は彼女の心に語りかけ、洗脳のような術を掛けた。
「あ……」
そう言ったのは透キヨさんだ。彼の視線の先には、さっき消えた小さい姑獲鳥さんがいた。僕がつるを切ったことによって、力が少し回復したのか大人でも彼女の姿を見ることが出来るようになったのかもしれない。
「ありがとう」
小さな姑獲鳥さんはにこっと笑い、また透けるように消えていった。
「これで解決ですね。子供たちが徘徊することもなくなる」
ほっとしたように透キヨさんが言う。
「戻るか」
先生も安心したような顔をしていて、僕もつられて微笑んだ。
これで事件は解決したものだと思われた。でも、何も終わっていなくて、僕らが部屋に戻ってから問題が起きた。
「あいつ、何やってんだ?」
三人でお風呂に入り直して、いざ寝ようとなったときに先生が窓の外を見て、そう言った。けれど、僕には暗くて何も見えない。
「何か見えるんですか?」
思わず尋ねてしまった。裏には山があるはずだけれど闇に溶けてしまってすべてが黒に見えるだけだ。
「紗友が、歩いてる」
「灯りもなしに、ですか?」
僕がそう首をかしげると先生はハッとした顔で「まさか、別に目的があったのか!」と言った。
「透キヨ、行くぞ! 姑獲鳥の封印を解かれたらまずい!」
「は、はい!」
一瞬で紺の浴衣から黒い警察官の制服姿になって透キヨさんと先生が窓から外に出る。
「新海、戸締まりをしっかりして絶対にここから出るなよ?」
窓を閉める直前、先生から緊迫した表情で言われた。僕はこくりと頷いて、言われた通りに窓と戸の鍵を閉めた。これで普通なら誰も入って来られないはずだ。
「大丈夫かな、先生たち……」
電気の消えた部屋で、僕は真ん中の布団に入ってウトウトし始めた。どうやら、やっぱりつるを切るには体力を使ったらしい。ものの数分で僕は眠りの世界に落ちていた。
僕がつるを切っている間に先生は彼女の心に語りかけ、洗脳のような術を掛けた。
「あ……」
そう言ったのは透キヨさんだ。彼の視線の先には、さっき消えた小さい姑獲鳥さんがいた。僕がつるを切ったことによって、力が少し回復したのか大人でも彼女の姿を見ることが出来るようになったのかもしれない。
「ありがとう」
小さな姑獲鳥さんはにこっと笑い、また透けるように消えていった。
「これで解決ですね。子供たちが徘徊することもなくなる」
ほっとしたように透キヨさんが言う。
「戻るか」
先生も安心したような顔をしていて、僕もつられて微笑んだ。
これで事件は解決したものだと思われた。でも、何も終わっていなくて、僕らが部屋に戻ってから問題が起きた。
「あいつ、何やってんだ?」
三人でお風呂に入り直して、いざ寝ようとなったときに先生が窓の外を見て、そう言った。けれど、僕には暗くて何も見えない。
「何か見えるんですか?」
思わず尋ねてしまった。裏には山があるはずだけれど闇に溶けてしまってすべてが黒に見えるだけだ。
「紗友が、歩いてる」
「灯りもなしに、ですか?」
僕がそう首をかしげると先生はハッとした顔で「まさか、別に目的があったのか!」と言った。
「透キヨ、行くぞ! 姑獲鳥の封印を解かれたらまずい!」
「は、はい!」
一瞬で紺の浴衣から黒い警察官の制服姿になって透キヨさんと先生が窓から外に出る。
「新海、戸締まりをしっかりして絶対にここから出るなよ?」
窓を閉める直前、先生から緊迫した表情で言われた。僕はこくりと頷いて、言われた通りに窓と戸の鍵を閉めた。これで普通なら誰も入って来られないはずだ。
「大丈夫かな、先生たち……」
電気の消えた部屋で、僕は真ん中の布団に入ってウトウトし始めた。どうやら、やっぱりつるを切るには体力を使ったらしい。ものの数分で僕は眠りの世界に落ちていた。
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