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第3話 天邪鬼
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「姑獲鳥だな。悪いあやかしじゃないが、封印されてる」
女の人に近付いて、つるに手を翳し、先生は何かを感じ取ったようだ。
「悪いあやかしじゃないのに、なんで封印されているんですか?」
何も悪いことをしていないなら封印される理由がない。ここで一体、何があったのだろうか?
「姑獲鳥は身寄りのない子を拾って育ててくれる優しいあやかしだったんだが、大昔、子供を見境なく喰らう悪いあやかしだと勘違いされて、陰陽師に封印されてしまったんだ」
先生の悲しそうな表情が封印されている姑獲鳥の表情と重なる。先生に説明してもらって僕が見た映像の謎が解けた。姑獲鳥さんの周りに子供がたくさん居たのはそういうことだったんだ。
「先輩、姑獲鳥さんはどうして子供を呼んでいたんでしょう? ただ、子供が好きで子供に会いたかったんですかね?」
後ろに立って様子を伺っていた透キヨさんが尋ねてきた。
「それもあるとは思うが、長い年月が経って、封印が弱まったことによって姑獲鳥自身が人間を呼んで封印を解除してもらおうとしていたんだと思う。ただ力が弱くて子供しか呼べなかったんだ」
「それで子供たちはいつもこのつるを持って帰ってきていたんですね」
僕は納得した。子供でも一応人間だから少しずつつるを千切っていけば封印は弱まっていく。今ここに残っているのは細いつるが一本と綱くらい太いのが一本だ。
「で、どうしますか? 先輩」
「この封印はあやかしの俺たちではどうしようも出来ない。ただ、この感じだと近いうちに勝手に解けるだろう。だから、俺が心を操ってこれ以上子供を呼ばないようにする」
先生は前に少しなら他人の心を操れると言っていた。どうやら、それはあやかしに対しても同じようだ。
「先生、僕がつるの一本を切ります」
一本と言ったのは、子供たちが一本ずつしか切らなかった理由があるからではないかと思ったからだ。切るのに体力を持っていかれる、とか。
「ああ、切ってやってくれ」
先生は優しい顔で僕にそう言って、姑獲鳥さんに向き合った。
女の人に近付いて、つるに手を翳し、先生は何かを感じ取ったようだ。
「悪いあやかしじゃないのに、なんで封印されているんですか?」
何も悪いことをしていないなら封印される理由がない。ここで一体、何があったのだろうか?
「姑獲鳥は身寄りのない子を拾って育ててくれる優しいあやかしだったんだが、大昔、子供を見境なく喰らう悪いあやかしだと勘違いされて、陰陽師に封印されてしまったんだ」
先生の悲しそうな表情が封印されている姑獲鳥の表情と重なる。先生に説明してもらって僕が見た映像の謎が解けた。姑獲鳥さんの周りに子供がたくさん居たのはそういうことだったんだ。
「先輩、姑獲鳥さんはどうして子供を呼んでいたんでしょう? ただ、子供が好きで子供に会いたかったんですかね?」
後ろに立って様子を伺っていた透キヨさんが尋ねてきた。
「それもあるとは思うが、長い年月が経って、封印が弱まったことによって姑獲鳥自身が人間を呼んで封印を解除してもらおうとしていたんだと思う。ただ力が弱くて子供しか呼べなかったんだ」
「それで子供たちはいつもこのつるを持って帰ってきていたんですね」
僕は納得した。子供でも一応人間だから少しずつつるを千切っていけば封印は弱まっていく。今ここに残っているのは細いつるが一本と綱くらい太いのが一本だ。
「で、どうしますか? 先輩」
「この封印はあやかしの俺たちではどうしようも出来ない。ただ、この感じだと近いうちに勝手に解けるだろう。だから、俺が心を操ってこれ以上子供を呼ばないようにする」
先生は前に少しなら他人の心を操れると言っていた。どうやら、それはあやかしに対しても同じようだ。
「先生、僕がつるの一本を切ります」
一本と言ったのは、子供たちが一本ずつしか切らなかった理由があるからではないかと思ったからだ。切るのに体力を持っていかれる、とか。
「ああ、切ってやってくれ」
先生は優しい顔で僕にそう言って、姑獲鳥さんに向き合った。
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