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第3話 天邪鬼
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◆ ◆ ◆
「はぁ……、疲れた」
夜八時過ぎ、大浴場の湯船に浸かりながら透キヨさんが正直な言葉を口からこぼした。隣に浸かっている僕もそう思う。紗友さんは人使いが荒すぎる。
「先輩、ほんとにあの子と結婚するんですか?」
「いや、だから結婚する気はないって」
冗談を言うな、と先生は怖い顔をする。
「ま、良いですけど。――あ、子供居ますね」
「ああ、幼稚園の年長組と小学校の低学年って感じか」
大浴場にはおじいさんが多かったけれど、父子という感じの人たちも居た。
「さっき外に女の子も二人居ましたよ。一人は中学生くらいで、もう一人は幼稚園に入ったばかりくらいに見えました」
透キヨさんはよく見ているなぁ、と僕が思ったときだった。
「外国の人、あんた、どこから来たんだ?」
近くに浸かっていた八十歳くらいのおじいさんが先生に話し掛けてきた。
「いや、じいさん、俺、ここ地元なんだ」
「地元か、そうか、すまんな」
気まずそうに謝っておじいさんがお湯から出ていく。僕は普通に話しているから先生の容姿は気にならなくなったけれど、他の人から見たら先生は外国人なんだ。金髪、碧眼、白い肌……どうして先生はこの容姿で昔から日本に居るのだろう?
「さて、透キヨ、山行くぞ」
「え! 風呂入ったあとに行くんですか?」
先生がザバッと湯船から立ち上がって宣言すると透キヨさんはギョッとした顔をした。
「気持ちが切り替わると思ってな、入っただけだ。風呂なんて、また戻ってきてから入り直せば良いだろう?」
「先輩、鬼ですね……」
「まあ、鬼だしな」
天邪鬼、それは鬼であった。ということで、先生と透キヨさんは部屋で黒い警察官の服に早着替えして、目立たないように部屋の窓から出ていった。先生には「新海、先に寝てても良いからな」と言われたけれど、まだ寝るには早いので夏休みの宿題をやることにする。
「はぁ……、疲れた」
夜八時過ぎ、大浴場の湯船に浸かりながら透キヨさんが正直な言葉を口からこぼした。隣に浸かっている僕もそう思う。紗友さんは人使いが荒すぎる。
「先輩、ほんとにあの子と結婚するんですか?」
「いや、だから結婚する気はないって」
冗談を言うな、と先生は怖い顔をする。
「ま、良いですけど。――あ、子供居ますね」
「ああ、幼稚園の年長組と小学校の低学年って感じか」
大浴場にはおじいさんが多かったけれど、父子という感じの人たちも居た。
「さっき外に女の子も二人居ましたよ。一人は中学生くらいで、もう一人は幼稚園に入ったばかりくらいに見えました」
透キヨさんはよく見ているなぁ、と僕が思ったときだった。
「外国の人、あんた、どこから来たんだ?」
近くに浸かっていた八十歳くらいのおじいさんが先生に話し掛けてきた。
「いや、じいさん、俺、ここ地元なんだ」
「地元か、そうか、すまんな」
気まずそうに謝っておじいさんがお湯から出ていく。僕は普通に話しているから先生の容姿は気にならなくなったけれど、他の人から見たら先生は外国人なんだ。金髪、碧眼、白い肌……どうして先生はこの容姿で昔から日本に居るのだろう?
「さて、透キヨ、山行くぞ」
「え! 風呂入ったあとに行くんですか?」
先生がザバッと湯船から立ち上がって宣言すると透キヨさんはギョッとした顔をした。
「気持ちが切り替わると思ってな、入っただけだ。風呂なんて、また戻ってきてから入り直せば良いだろう?」
「先輩、鬼ですね……」
「まあ、鬼だしな」
天邪鬼、それは鬼であった。ということで、先生と透キヨさんは部屋で黒い警察官の服に早着替えして、目立たないように部屋の窓から出ていった。先生には「新海、先に寝てても良いからな」と言われたけれど、まだ寝るには早いので夏休みの宿題をやることにする。
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