上 下
60 / 87
第3話 天邪鬼

しおりを挟む
 ◆ ◆ ◆

「はぁ……、疲れた」

 夜八時過ぎ、大浴場の湯船に浸かりながら透キヨさんが正直な言葉を口からこぼした。隣に浸かっている僕もそう思う。紗友さんは人使いが荒すぎる。

「先輩、ほんとにあの子と結婚するんですか?」
「いや、だから結婚する気はないって」

 冗談を言うな、と先生は怖い顔をする。

「ま、良いですけど。――あ、子供居ますね」
「ああ、幼稚園の年長組と小学校の低学年って感じか」

 大浴場にはおじいさんが多かったけれど、父子という感じの人たちも居た。

「さっき外に女の子も二人居ましたよ。一人は中学生くらいで、もう一人は幼稚園に入ったばかりくらいに見えました」

 透キヨさんはよく見ているなぁ、と僕が思ったときだった。

「外国の人、あんた、どこから来たんだ?」

 近くに浸かっていた八十歳くらいのおじいさんが先生に話し掛けてきた。

「いや、じいさん、俺、ここ地元なんだ」
「地元か、そうか、すまんな」

 気まずそうに謝っておじいさんがお湯から出ていく。僕は普通に話しているから先生の容姿は気にならなくなったけれど、他の人から見たら先生は外国人なんだ。金髪、碧眼、白い肌……どうして先生はこの容姿で昔から日本に居るのだろう?

「さて、透キヨ、山行くぞ」
「え! 風呂入ったあとに行くんですか?」

 先生がザバッと湯船から立ち上がって宣言すると透キヨさんはギョッとした顔をした。

「気持ちが切り替わると思ってな、入っただけだ。風呂なんて、また戻ってきてから入り直せば良いだろう?」
「先輩、鬼ですね……」
「まあ、鬼だしな」

 天邪鬼、それは鬼であった。ということで、先生と透キヨさんは部屋で黒い警察官の服に早着替えして、目立たないように部屋の窓から出ていった。先生には「新海、先に寝てても良いからな」と言われたけれど、まだ寝るには早いので夏休みの宿題をやることにする。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

処理中です...