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第3話 天邪鬼
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◆ ◆ ◆
一階の一番端っこにある食事処に宿泊客の姿はなかった。その理由を僕らのテーブルにまかないのお蕎麦を運んできてくれた紗友さんが、「お昼は過ぎちゃったし、外に食べに行く人も多いから」と説明してくれた。
「いただきます」
僕らがお蕎麦を食べ始めても紗友さんは僕らの席の横にぴったりとくっ付いて離れようとしなかった。冷たい麦茶を飲みながら紗友さんの様子を伺う僕……と透キヨさん。彼女の視線は天乃先生にジッと向けられている。そして、ついに彼女は口を開いた。
「天乃くん、私と結婚して」
「ゴフッ」
僕は飲んでいた麦茶を吹き出した。透キヨさんはなんとか堪えたようだった。
「新海、何してんだ? 大丈夫か? ――紗友、都会に行きたいからってな、好きでもないやつにそういうこと言うもんじゃないぞ」
近くに置いてあった台ふきんで僕のティーシャツを拭きながら先生は紗友さんに文句を言った。
「好きだもの」
汚れてしまった台ふきんを持って、紗友さんはふいっと厨房の方に消えていってしまった。
「ごほんっ……紗友さん、嘘吐いてるんですか?」
息を整えながら僕が控えめに聞くと先生は首を横に振った。
「いいや、どちらも正しい」
どちらも、というと『都会に行きたいこと』と『先生のことが好きだ』ということの両方が正しいということになる。先生は心を見ることが出来るから、これは確実に紗友さんが考えていることだ。
「先輩、モテますねぇ」
「人の考えていることが分かるから、自分のことをよく理解してくれる人だと思って惚れられることが多い。みんな思い込みだ」
まだ二人はそんな話をしている。話を聞いていても大人の恋愛事情なんて僕には分からなくて、お蕎麦を食べながら自然と視線が窓の外に向かう。
――あれ? あんなところに人が……。
一階の一番端っこにある食事処に宿泊客の姿はなかった。その理由を僕らのテーブルにまかないのお蕎麦を運んできてくれた紗友さんが、「お昼は過ぎちゃったし、外に食べに行く人も多いから」と説明してくれた。
「いただきます」
僕らがお蕎麦を食べ始めても紗友さんは僕らの席の横にぴったりとくっ付いて離れようとしなかった。冷たい麦茶を飲みながら紗友さんの様子を伺う僕……と透キヨさん。彼女の視線は天乃先生にジッと向けられている。そして、ついに彼女は口を開いた。
「天乃くん、私と結婚して」
「ゴフッ」
僕は飲んでいた麦茶を吹き出した。透キヨさんはなんとか堪えたようだった。
「新海、何してんだ? 大丈夫か? ――紗友、都会に行きたいからってな、好きでもないやつにそういうこと言うもんじゃないぞ」
近くに置いてあった台ふきんで僕のティーシャツを拭きながら先生は紗友さんに文句を言った。
「好きだもの」
汚れてしまった台ふきんを持って、紗友さんはふいっと厨房の方に消えていってしまった。
「ごほんっ……紗友さん、嘘吐いてるんですか?」
息を整えながら僕が控えめに聞くと先生は首を横に振った。
「いいや、どちらも正しい」
どちらも、というと『都会に行きたいこと』と『先生のことが好きだ』ということの両方が正しいということになる。先生は心を見ることが出来るから、これは確実に紗友さんが考えていることだ。
「先輩、モテますねぇ」
「人の考えていることが分かるから、自分のことをよく理解してくれる人だと思って惚れられることが多い。みんな思い込みだ」
まだ二人はそんな話をしている。話を聞いていても大人の恋愛事情なんて僕には分からなくて、お蕎麦を食べながら自然と視線が窓の外に向かう。
――あれ? あんなところに人が……。
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