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第3話 天邪鬼

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「新海は危険だから留守番だ」
「良かった……」

 行かなくて良いと聞いて僕はほっとした。自分で言うのもなんだけど、僕だって子供だから山に行ったら怖い思いをするかもしれない。

「明代さん、俺たちは今から様子見がてら食事処に行ってくるよ」
「昼は紗友が手伝ってるはずだから、まかないを出すように連絡しておくよ」
「ありがとう」

 先生と話をして明代さんは先に部屋から出て行った。

「昼飯食いに行くぞ」

 僕と透キヨさんの顔を順番に見て、先生は嬉しそうに言った。最近、あやかしである先生たちは本当は食事をしなくても大丈夫なのだと教えてもらった。

 でも、先生たちがご飯を食べるのは単純に美味しいものを味わいたいからなのだそうだ。人生ならぬ妖生の楽しみの一つと言えば良いのだろうか?

「先輩、いつからここの手伝いをしてるんでしたっけ?」

 部屋を出て、廊下を歩きながら透キヨさんが急に気になったのか先生に尋ねる。昼を過ぎてしまったからか、宿泊客は外に出ているようで、廊下では誰ともすれ違わなかった。

「始めから」
「それって先々代の女将さんのときからってことですよね? 先輩、バケモノだと思われてませんか?」

 僕も二人の会話を聞いていてびっくりしてしまった。明代さんはすでに五十歳を超えてそうだから先々代からと考えると、この旅館は創業百年は優にいっているのではないだろうか。そうなると、旅館の人たちは年を取らない先生のことをどう思っているのだろう?

「ちょっと年取らないやつと思われてるかもな」
「いや、さすがにおかしいと思われてるでしょう?」

 先生は悪戯に笑ったけれど、透キヨさんの意見はごもっともだ。

「俺は別にここの人たちに関しては自分の正体を隠してないよ。まあ、守り神みたいに思われてる」

 なるほど、ここの人たちは先生の存在を普通に認めているのか。良いな、そういうの。

「先生って、なんのあやかしなんですか?」

 そういえば聞いたことがなかったな、と思って何気なく尋ねてみた。
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