52 / 87
第2話 駄菓子化し
30
しおりを挟む
「だって、新海くんは俺のことを見つけられるんですよ?」
「単純だな、お前。でかいガキは嫌いだって言ってたじゃないか」
「確かにそうですけど……」
透キヨさんはムッとした顔をした。
「ダメなものはダメだ。お前と新海を同じ部屋に出来るわけないだろう?」
「僕ですか!?」
まさかの透キヨさんは僕と一緒の部屋が良いという話をしていた。その理由が「僕なら透キヨさんを透明でも見つけられるから」ということで、本当に単純だなと僕も思った。
「なら、三人部屋はないんですか?」
「ない」
「じゃあ、時々新海くんを貸してくださいよ」
「ダメだ。お前の心の平穏のためだけに新海は貸せない」
「あの、僕、物じゃないんですけど」
僕の顔面に苦笑いが張り付く。そして、暫しの沈黙、からの……
「――それにしても、まさか、駄菓子化しが人間と手を組んでるとはな。誰がそんな悪知恵を仕込んだんだ? 誰かが仲介しないと人間と手を組むなんてこと考えないだろう?」
先生が無理矢理話題を変えた。
「さあ? 前回も変な男が関わってるとされてますからね、そいつじゃないですか?」
「同じやつか……」
何食わぬ顔で今まで話していた会話を忘れたかのように話し合う二人に、僕は冷たい視線を送り、そして窓の外を見た。ここは病院の三階で、青い空が大きく見える。
「……?」
なんとなく下の方から視線を感じて、僕はおもむろにそちらを覗き込んでみた。外は人間が溶けてしまいそうなほど暑いというのに、黒いローブのようなものを纏った男の人がこちらを見上げていた。
黒いフードで顔面が微かにしか見えないけれど、その人は先生と同じ碧い瞳をしているように見える。
「先生、なんかこの病室をすごい見上げてくる男の人が居るんですけど……」
ジッと男の人から視線を外さずに僕は声だけを先生に向けた。
「ん? なんだ?」
すぐに先生が僕の横に来て、下を覗き込む。
「まさか、亜蘭か……!」
先生が急にがっと窓のフチを掴んで身を乗り出すので、隣に居る僕はびっくりしてしまった。
「単純だな、お前。でかいガキは嫌いだって言ってたじゃないか」
「確かにそうですけど……」
透キヨさんはムッとした顔をした。
「ダメなものはダメだ。お前と新海を同じ部屋に出来るわけないだろう?」
「僕ですか!?」
まさかの透キヨさんは僕と一緒の部屋が良いという話をしていた。その理由が「僕なら透キヨさんを透明でも見つけられるから」ということで、本当に単純だなと僕も思った。
「なら、三人部屋はないんですか?」
「ない」
「じゃあ、時々新海くんを貸してくださいよ」
「ダメだ。お前の心の平穏のためだけに新海は貸せない」
「あの、僕、物じゃないんですけど」
僕の顔面に苦笑いが張り付く。そして、暫しの沈黙、からの……
「――それにしても、まさか、駄菓子化しが人間と手を組んでるとはな。誰がそんな悪知恵を仕込んだんだ? 誰かが仲介しないと人間と手を組むなんてこと考えないだろう?」
先生が無理矢理話題を変えた。
「さあ? 前回も変な男が関わってるとされてますからね、そいつじゃないですか?」
「同じやつか……」
何食わぬ顔で今まで話していた会話を忘れたかのように話し合う二人に、僕は冷たい視線を送り、そして窓の外を見た。ここは病院の三階で、青い空が大きく見える。
「……?」
なんとなく下の方から視線を感じて、僕はおもむろにそちらを覗き込んでみた。外は人間が溶けてしまいそうなほど暑いというのに、黒いローブのようなものを纏った男の人がこちらを見上げていた。
黒いフードで顔面が微かにしか見えないけれど、その人は先生と同じ碧い瞳をしているように見える。
「先生、なんかこの病室をすごい見上げてくる男の人が居るんですけど……」
ジッと男の人から視線を外さずに僕は声だけを先生に向けた。
「ん? なんだ?」
すぐに先生が僕の横に来て、下を覗き込む。
「まさか、亜蘭か……!」
先生が急にがっと窓のフチを掴んで身を乗り出すので、隣に居る僕はびっくりしてしまった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/contemporary.png?id=0dd465581c48dda76bd4)
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる