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第2話 駄菓子化し
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チチッ
「……?」
突然、足下を小さな灰色のネズミが走っていって、僕はハッと我に返った。
僕の視線の先には薄汚れたカーテンがある。ずっと映像で見てきたものだ。向こう側で青く光っているのは、きっと、さっき見た点滴のパックだ。
男が戻ってくる気配はない。カーテンの向こう側に消えた子供たちが居る。ちゃんと先生に言えば良かった、と今さら後悔しても遅い。僕に出来ることをしなくちゃ。どこか隠れる場所を探して逃げ出すタイミングを見つけるとか……。
ごくり……。
緊張から思いっきりつばを飲み込み、ゆっくりと立ち上がって、そのままカーテンに近付いていく。そして、カーテンを少しだけ開けて僕は隙間に潜り込んだ。
「森田……」
各ベッドには森田と八人の子供たちが拘束されていた。一体何をされているのか、僕には分からない。そこで思ったのは〝僕は誰の映像を見ていたのか〟ということだった。
森田の位置から予測して視線を移動していく。
――ここだ。
辿り着いた場所には一つの空のベッドがあった。誰もいないけれど僕はさっき、ここの視点からの映像を見た。まさかな……、と思って恐る恐る両手をベッドの上に伸ばしていく。
――見えない誰かが居る! ……透キヨさんだ!
そう思って、僕は慌てて透キヨさんの口元を手探りで探した。透キヨさんは口を塞がれると透明から戻れなくなる、という先生の話を思い出したのだ。
「透キヨさん……!」
口に貼られていたガムテープを剥がすと、スプレーで描かれるように透キヨさんの姿が現れた。腕に繋がれている点滴のようなものも一緒に現れる。
「……?」
突然、足下を小さな灰色のネズミが走っていって、僕はハッと我に返った。
僕の視線の先には薄汚れたカーテンがある。ずっと映像で見てきたものだ。向こう側で青く光っているのは、きっと、さっき見た点滴のパックだ。
男が戻ってくる気配はない。カーテンの向こう側に消えた子供たちが居る。ちゃんと先生に言えば良かった、と今さら後悔しても遅い。僕に出来ることをしなくちゃ。どこか隠れる場所を探して逃げ出すタイミングを見つけるとか……。
ごくり……。
緊張から思いっきりつばを飲み込み、ゆっくりと立ち上がって、そのままカーテンに近付いていく。そして、カーテンを少しだけ開けて僕は隙間に潜り込んだ。
「森田……」
各ベッドには森田と八人の子供たちが拘束されていた。一体何をされているのか、僕には分からない。そこで思ったのは〝僕は誰の映像を見ていたのか〟ということだった。
森田の位置から予測して視線を移動していく。
――ここだ。
辿り着いた場所には一つの空のベッドがあった。誰もいないけれど僕はさっき、ここの視点からの映像を見た。まさかな……、と思って恐る恐る両手をベッドの上に伸ばしていく。
――見えない誰かが居る! ……透キヨさんだ!
そう思って、僕は慌てて透キヨさんの口元を手探りで探した。透キヨさんは口を塞がれると透明から戻れなくなる、という先生の話を思い出したのだ。
「透キヨさん……!」
口に貼られていたガムテープを剥がすと、スプレーで描かれるように透キヨさんの姿が現れた。腕に繋がれている点滴のようなものも一緒に現れる。
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