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第2話 駄菓子化し
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「うえっ」
がっしりと黒い男に頭をわし掴みにされて、僕の口から変な声が出た。そのまま引きずられるようにして、店の奥に連れていかれる。横にコンクリートが剥き出しの階段が見えたとき、男の動きがピタリと止まった。
「おじさんの母親はねぇ、駄菓子屋をやっていたんだけど、子供が駄菓子を頻繁に万引きするから店が潰れちゃったんだよ。だからねぇ、おじさんは子供が大嫌いなんだ」
僕に背を向けている駄菓子屋のおじさんが笑いながら言う。たったそれだけ、おじさんが言うためだけに黒い男は動きを止めたんだと僕は理解した。
「やだ、やだよ!」
男はまた動き出して、僕を無理矢理階段の下に引きずっていく。足が階段の段差に引っ掛かって痛かったけれど、止まることはなく、今度は銀色の金属の扉が開かれた。
「うわっ」
勢いよく床に転がされる。床はひんやりとしていた。
「……」
男は黙って僕をジッと見た後、黒く染まった白衣のポケットを確認し、何かが無いと思ったのか、別の扉の向こう側に消えた。
「……っ」
――あれ? このオレンジ色の花のタイル見たことがある。
そう思った瞬間、僕の脳裏に誰かの映像がまた再生される。こんなときに誰かの映像を見るなんて、と思ったけれど、僕にはどうすることも出来なくて、ただ映像を見る。
くくりつけられたベッドの上から周りを見ると、他のベッドの上に数人の子供たちがいた。腕には点滴のようなものを繋がれ、管の先にあるパックには何やら青く光る液体が入っている。
これは僕が今まで見てきた誰かの映像の続きだ、と気付いた。そして、子供たちの中に森田の姿を発見した。
がっしりと黒い男に頭をわし掴みにされて、僕の口から変な声が出た。そのまま引きずられるようにして、店の奥に連れていかれる。横にコンクリートが剥き出しの階段が見えたとき、男の動きがピタリと止まった。
「おじさんの母親はねぇ、駄菓子屋をやっていたんだけど、子供が駄菓子を頻繁に万引きするから店が潰れちゃったんだよ。だからねぇ、おじさんは子供が大嫌いなんだ」
僕に背を向けている駄菓子屋のおじさんが笑いながら言う。たったそれだけ、おじさんが言うためだけに黒い男は動きを止めたんだと僕は理解した。
「やだ、やだよ!」
男はまた動き出して、僕を無理矢理階段の下に引きずっていく。足が階段の段差に引っ掛かって痛かったけれど、止まることはなく、今度は銀色の金属の扉が開かれた。
「うわっ」
勢いよく床に転がされる。床はひんやりとしていた。
「……」
男は黙って僕をジッと見た後、黒く染まった白衣のポケットを確認し、何かが無いと思ったのか、別の扉の向こう側に消えた。
「……っ」
――あれ? このオレンジ色の花のタイル見たことがある。
そう思った瞬間、僕の脳裏に誰かの映像がまた再生される。こんなときに誰かの映像を見るなんて、と思ったけれど、僕にはどうすることも出来なくて、ただ映像を見る。
くくりつけられたベッドの上から周りを見ると、他のベッドの上に数人の子供たちがいた。腕には点滴のようなものを繋がれ、管の先にあるパックには何やら青く光る液体が入っている。
これは僕が今まで見てきた誰かの映像の続きだ、と気付いた。そして、子供たちの中に森田の姿を発見した。
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