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第2話 駄菓子化し
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「お前、森田について何か見てないか?」
給食の時間で廊下には僕と先生しかいない。それでも先生はすごく小さな声で僕に尋ねてきた。
「いえ、何も知りません」
僕はすぐに答えた。利用されるだけ利用されて見捨てられるなんて嫌だ。だから、先生には情報を渡さないんだ。先生は、どうせ僕を利用してお金をたくさん手に入れたいだけなんだから。
「おい、どうした?」
「なにがですか?」
ぐっと眉間に皺を寄せてこちらを見てくる先生に、出来るだけ普通の顔で対応する僕。
「お前、今朝からおかしいぞ? 俺を避けてないか?」
ちょっとどきりとする。確かに僕の避け方は少し不自然かもしれない。
「いえ、別に。でも、今日から自分の家に帰ります。僕はもう先生のお手伝いは出来ません」
「どうしたんだ? 急に」
「何もありません。ただ僕はもう一人じゃないので大丈夫だと思っただけです。それに、僕はもう危ない目には遭いたくないんです。平和に過ごしたい」
先生は驚いたような顔をしたけれど、僕は自分の意見をはっきりと言った。ちゃんと言える人はかっこいいんだって、学校の図書館で読んだ地域新聞のどこかに書いてあった気がする。
「そうか……、分かった」
そう言って先生が案外簡単に諦めてくれてほっとする。もし、先生に僕の心が見えていたとしたら「お前、嘘吐いてるだろう? 金稼ぎのために手伝え。逃げるのは許さんぞ」と言われていそうだ。
「森田は一体、どこに消えたんだ……?」
ぼそりと困ったように呟きながら先生が先に教室に戻っていく。クーラーの効いていない廊下で僕は一人、汗をかきながら暫く突っ立っていた。なぜなら……、また誰かの未来か過去を見たからだ。
給食の時間で廊下には僕と先生しかいない。それでも先生はすごく小さな声で僕に尋ねてきた。
「いえ、何も知りません」
僕はすぐに答えた。利用されるだけ利用されて見捨てられるなんて嫌だ。だから、先生には情報を渡さないんだ。先生は、どうせ僕を利用してお金をたくさん手に入れたいだけなんだから。
「おい、どうした?」
「なにがですか?」
ぐっと眉間に皺を寄せてこちらを見てくる先生に、出来るだけ普通の顔で対応する僕。
「お前、今朝からおかしいぞ? 俺を避けてないか?」
ちょっとどきりとする。確かに僕の避け方は少し不自然かもしれない。
「いえ、別に。でも、今日から自分の家に帰ります。僕はもう先生のお手伝いは出来ません」
「どうしたんだ? 急に」
「何もありません。ただ僕はもう一人じゃないので大丈夫だと思っただけです。それに、僕はもう危ない目には遭いたくないんです。平和に過ごしたい」
先生は驚いたような顔をしたけれど、僕は自分の意見をはっきりと言った。ちゃんと言える人はかっこいいんだって、学校の図書館で読んだ地域新聞のどこかに書いてあった気がする。
「そうか……、分かった」
そう言って先生が案外簡単に諦めてくれてほっとする。もし、先生に僕の心が見えていたとしたら「お前、嘘吐いてるだろう? 金稼ぎのために手伝え。逃げるのは許さんぞ」と言われていそうだ。
「森田は一体、どこに消えたんだ……?」
ぼそりと困ったように呟きながら先生が先に教室に戻っていく。クーラーの効いていない廊下で僕は一人、汗をかきながら暫く突っ立っていた。なぜなら……、また誰かの未来か過去を見たからだ。
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