38 / 87
第2話 駄菓子化し
16
しおりを挟む
◆ ◆ ◆
森田のことが分かったのは給食の時間になってからだった。
「大変だ!」
普段一緒に給食を食べるはずの担任の先生、つまり天乃先生が教室に来なくて、今日の日直である前林が職員室に呼びに行った、と思ったら慌てて帰ってきた。
「森田、昨日から家に帰ってないんだってさ。俺、職員室で先生たちが話してるの聞いてきちゃった」
前林は噂好きの男子で、興奮したようにクラスみんなの前で言うものだから、森田のことは一瞬でクラス中に広がった。クラスの中には森田失踪を怖がる生徒や「あいつも不良になったか」と思う生徒、そして、「まさか、あの駄菓子屋さんが悪いあやかし……?」と思う僕が居た。
あのとき勾玉が赤く光らなかったから、まさかとは思うのだけれど、もしかしてあの駄菓子屋のおじさんが悪いあやかしで、お菓子をあげた子供たちを後で何らかの方法で見つけ出して、どこかに連れ去っているのでは?
「おーい、どうした? 給食の時間始まってるだろ?」
前林が騒いで数分後、天乃先生はなんともないような顔をして教室に入ってきた。
「えー、先生のこと待ってたんですよ」
「先生、一緒に給食食べましょ?」
などと、みんな口々に言うけれど、誰も森田について先生に尋ねようとする人はいなかった。多分、みんな、真相を知るのがちょっと怖かったんだと思う。
「お、そうか、悪い悪い。――ほい、じゃあ、いただきます」
先生はみんなの心の中が見えて、みんなが森田のことを知って気にしているのを理解しているはずだ。でも、何も言わない。普通に自分の席について、いただきますの挨拶をしただけだった。
「新海、ちょっと良いか?」
挨拶をして数秒後、先生は僕を廊下に呼び出した。どんな顔をして話したら良いか分からなくて、僕はちゃんと普通の表情でいられているだろうか? と不安になる。
森田のことが分かったのは給食の時間になってからだった。
「大変だ!」
普段一緒に給食を食べるはずの担任の先生、つまり天乃先生が教室に来なくて、今日の日直である前林が職員室に呼びに行った、と思ったら慌てて帰ってきた。
「森田、昨日から家に帰ってないんだってさ。俺、職員室で先生たちが話してるの聞いてきちゃった」
前林は噂好きの男子で、興奮したようにクラスみんなの前で言うものだから、森田のことは一瞬でクラス中に広がった。クラスの中には森田失踪を怖がる生徒や「あいつも不良になったか」と思う生徒、そして、「まさか、あの駄菓子屋さんが悪いあやかし……?」と思う僕が居た。
あのとき勾玉が赤く光らなかったから、まさかとは思うのだけれど、もしかしてあの駄菓子屋のおじさんが悪いあやかしで、お菓子をあげた子供たちを後で何らかの方法で見つけ出して、どこかに連れ去っているのでは?
「おーい、どうした? 給食の時間始まってるだろ?」
前林が騒いで数分後、天乃先生はなんともないような顔をして教室に入ってきた。
「えー、先生のこと待ってたんですよ」
「先生、一緒に給食食べましょ?」
などと、みんな口々に言うけれど、誰も森田について先生に尋ねようとする人はいなかった。多分、みんな、真相を知るのがちょっと怖かったんだと思う。
「お、そうか、悪い悪い。――ほい、じゃあ、いただきます」
先生はみんなの心の中が見えて、みんなが森田のことを知って気にしているのを理解しているはずだ。でも、何も言わない。普通に自分の席について、いただきますの挨拶をしただけだった。
「新海、ちょっと良いか?」
挨拶をして数秒後、先生は僕を廊下に呼び出した。どんな顔をして話したら良いか分からなくて、僕はちゃんと普通の表情でいられているだろうか? と不安になる。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる