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第2話 駄菓子化し
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◆ ◆ ◆
事件が起きたのは火曜日の朝のことだった。
「天乃! 天乃!」
僕が洗面所で歯磨きをしていると、部屋の扉を激しくノックしてくる人がいた。
「なんだ? 朝から騒がしいな」
天乃先生が扉を開けると、誰かが中に入ってきた。それが僕の居る洗面所からも見えた。
「大変なんだよ、天乃!」
慌てて部屋に入ってきたのは透キヨさんと組んでいるはずの千里さんだった。
「落ち着けよ、どうした?」
先生は驚いた顔をしながらも千里さんをなだめるように優しく静かに言う。僕はゴシゴシと音のする歯ブラシを動かして良いものなのか分からなくて動きを止めた。
「……透キヨが消えてしまったんだ」
気の抜けたように千里さんが言う。先生と僕の心に同時に衝撃が走る。
「どういうことだ? どこで消えた?」
「分からない。天乃が教師をしている学校の近くで、二人一緒に子供失踪事件の捜査をしていたんだ。それで情報がないから、猫バアの交番にでも行ってみようか、って話しになったんだけど、気が付いたら透キヨはいなくて……でも、急に消えて二日も戻らないっておかしいよね」
言いづらそうに千里さんは指をもじもじさせている。それにしても、先生と千里さんたちは同じ事件を追っていたんだ。
「それって日曜からいないってことか?」
「うん、そう」
あっさりと千里さんは言った。
「なんで早く言いに来なかった? 一応捜索したのか?」
「ごめん。無理だよ、僕の透視能力は壁一枚分くらいしか通用しない。ごめん、天乃。僕には見つけられないから、後頼んだ。ほんと、ごめん」
何度も「ごめん」と繰り返して、千里さんは部屋から慌てて逃げるように出ていってしまった。僕はその姿を見て。千里さんは透キヨさんを一方的に利用するだけ利用して捨てたんだ、と思った。最低だ。
「そりゃ、理不尽過ぎるだろ……」
頭を抱えて悩む先生。そんな彼に僕は問い掛けた。
「先生、すぐに透キヨさんを探しに行くんですか?」
遠回しに確かめたかったんだ。先生は僕や透キヨさんの能力を利用するだけ利用して見捨てないですよね? って。
事件が起きたのは火曜日の朝のことだった。
「天乃! 天乃!」
僕が洗面所で歯磨きをしていると、部屋の扉を激しくノックしてくる人がいた。
「なんだ? 朝から騒がしいな」
天乃先生が扉を開けると、誰かが中に入ってきた。それが僕の居る洗面所からも見えた。
「大変なんだよ、天乃!」
慌てて部屋に入ってきたのは透キヨさんと組んでいるはずの千里さんだった。
「落ち着けよ、どうした?」
先生は驚いた顔をしながらも千里さんをなだめるように優しく静かに言う。僕はゴシゴシと音のする歯ブラシを動かして良いものなのか分からなくて動きを止めた。
「……透キヨが消えてしまったんだ」
気の抜けたように千里さんが言う。先生と僕の心に同時に衝撃が走る。
「どういうことだ? どこで消えた?」
「分からない。天乃が教師をしている学校の近くで、二人一緒に子供失踪事件の捜査をしていたんだ。それで情報がないから、猫バアの交番にでも行ってみようか、って話しになったんだけど、気が付いたら透キヨはいなくて……でも、急に消えて二日も戻らないっておかしいよね」
言いづらそうに千里さんは指をもじもじさせている。それにしても、先生と千里さんたちは同じ事件を追っていたんだ。
「それって日曜からいないってことか?」
「うん、そう」
あっさりと千里さんは言った。
「なんで早く言いに来なかった? 一応捜索したのか?」
「ごめん。無理だよ、僕の透視能力は壁一枚分くらいしか通用しない。ごめん、天乃。僕には見つけられないから、後頼んだ。ほんと、ごめん」
何度も「ごめん」と繰り返して、千里さんは部屋から慌てて逃げるように出ていってしまった。僕はその姿を見て。千里さんは透キヨさんを一方的に利用するだけ利用して捨てたんだ、と思った。最低だ。
「そりゃ、理不尽過ぎるだろ……」
頭を抱えて悩む先生。そんな彼に僕は問い掛けた。
「先生、すぐに透キヨさんを探しに行くんですか?」
遠回しに確かめたかったんだ。先生は僕や透キヨさんの能力を利用するだけ利用して見捨てないですよね? って。
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