天乃ジャック先生は放課後あやかしポリス

純鈍

文字の大きさ
上 下
28 / 87
第2話 駄菓子化し

しおりを挟む
「わぁ!」
「ひっ!」

 急に目の前に青白いしわくちゃの顔が現れて、僕は声にならない悲鳴を上げてしまった。

「だから、やめろって言っただろ!」

 先生がしわくちゃの顔をがしっと掴んで、僕から引き離した。

「うわーんひどいー。だって、子供に居座られたら仕事にならないんだもん。だから、いつもこうやって長居するやつは追い返してるのよ」

 さらっと絵の具が水に溶けるように、しわくちゃの顔が若くて綺麗な女性の顔に変わる。よく見ると頭には三毛猫の耳が生えていて、先生たちと同じ黒い警察官の制服を着ていた。赤茶色の髪が少し派手だ。

「こいつは俺の助っ人だから、そんなことはしなくて良い。それより、他の地区の情報は入っていないか?」
「待って、それなら自己紹介くらいさせてよ。どうも、猫……バアです」

 自己紹介をさせてくれ、と言っておきながら自分の名前を紹介するところになると、自分からババアと言いたくなかったのか猫バアさんの声が落ち込んだ。それでも手を差し出してくれたので、僕もちゃんと自己紹介することにした。

「新海智也です。よろしくお願いします」

 静かに差し出された手を握り返す。

「ほらな、やめておけば良かったのに」

 クスクスと笑いながら先生は奥の方に向かっていった。そこには跳び箱があって僕は少し違和感を覚える。なんで校庭側の体育倉庫に体育館で使う跳び箱が一つだけ置いてあるのだろう?

「邪魔するぞ」

 先生は跳び箱に近付いて、横からパカッと開いた。まさか、そんな開け方をするとは思わなくて目が点になる。でも、一つだけ置かれた跳び箱の謎は解けた。

「ちょっと先に入らないでよ」

 僕の手をパッと離して、猫バアさんは先生のもとに駆け寄った。よく転ばないで走っていけるな、と僕は思った。

「どうぞ」

 跳び箱の中に入っていきながら猫バアさんが言った。その後に先生、そして、僕と続いていく。最初は天井が低かったけれど進んでいくうちに高くなって広い部屋に出た。

「え、ここって……交番ですか?」

 驚いた。体育倉庫の奥は交番になっていたのだ。街中で見かける交番とまったく同じ作りだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...