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第2話 駄菓子化し
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「わぁ!」
「ひっ!」
急に目の前に青白いしわくちゃの顔が現れて、僕は声にならない悲鳴を上げてしまった。
「だから、やめろって言っただろ!」
先生がしわくちゃの顔をがしっと掴んで、僕から引き離した。
「うわーんひどいー。だって、子供に居座られたら仕事にならないんだもん。だから、いつもこうやって長居するやつは追い返してるのよ」
さらっと絵の具が水に溶けるように、しわくちゃの顔が若くて綺麗な女性の顔に変わる。よく見ると頭には三毛猫の耳が生えていて、先生たちと同じ黒い警察官の制服を着ていた。赤茶色の髪が少し派手だ。
「こいつは俺の助っ人だから、そんなことはしなくて良い。それより、他の地区の情報は入っていないか?」
「待って、それなら自己紹介くらいさせてよ。どうも、猫……バアです」
自己紹介をさせてくれ、と言っておきながら自分の名前を紹介するところになると、自分からババアと言いたくなかったのか猫バアさんの声が落ち込んだ。それでも手を差し出してくれたので、僕もちゃんと自己紹介することにした。
「新海智也です。よろしくお願いします」
静かに差し出された手を握り返す。
「ほらな、やめておけば良かったのに」
クスクスと笑いながら先生は奥の方に向かっていった。そこには跳び箱があって僕は少し違和感を覚える。なんで校庭側の体育倉庫に体育館で使う跳び箱が一つだけ置いてあるのだろう?
「邪魔するぞ」
先生は跳び箱に近付いて、横からパカッと開いた。まさか、そんな開け方をするとは思わなくて目が点になる。でも、一つだけ置かれた跳び箱の謎は解けた。
「ちょっと先に入らないでよ」
僕の手をパッと離して、猫バアさんは先生のもとに駆け寄った。よく転ばないで走っていけるな、と僕は思った。
「どうぞ」
跳び箱の中に入っていきながら猫バアさんが言った。その後に先生、そして、僕と続いていく。最初は天井が低かったけれど進んでいくうちに高くなって広い部屋に出た。
「え、ここって……交番ですか?」
驚いた。体育倉庫の奥は交番になっていたのだ。街中で見かける交番とまったく同じ作りだ。
「ひっ!」
急に目の前に青白いしわくちゃの顔が現れて、僕は声にならない悲鳴を上げてしまった。
「だから、やめろって言っただろ!」
先生がしわくちゃの顔をがしっと掴んで、僕から引き離した。
「うわーんひどいー。だって、子供に居座られたら仕事にならないんだもん。だから、いつもこうやって長居するやつは追い返してるのよ」
さらっと絵の具が水に溶けるように、しわくちゃの顔が若くて綺麗な女性の顔に変わる。よく見ると頭には三毛猫の耳が生えていて、先生たちと同じ黒い警察官の制服を着ていた。赤茶色の髪が少し派手だ。
「こいつは俺の助っ人だから、そんなことはしなくて良い。それより、他の地区の情報は入っていないか?」
「待って、それなら自己紹介くらいさせてよ。どうも、猫……バアです」
自己紹介をさせてくれ、と言っておきながら自分の名前を紹介するところになると、自分からババアと言いたくなかったのか猫バアさんの声が落ち込んだ。それでも手を差し出してくれたので、僕もちゃんと自己紹介することにした。
「新海智也です。よろしくお願いします」
静かに差し出された手を握り返す。
「ほらな、やめておけば良かったのに」
クスクスと笑いながら先生は奥の方に向かっていった。そこには跳び箱があって僕は少し違和感を覚える。なんで校庭側の体育倉庫に体育館で使う跳び箱が一つだけ置いてあるのだろう?
「邪魔するぞ」
先生は跳び箱に近付いて、横からパカッと開いた。まさか、そんな開け方をするとは思わなくて目が点になる。でも、一つだけ置かれた跳び箱の謎は解けた。
「ちょっと先に入らないでよ」
僕の手をパッと離して、猫バアさんは先生のもとに駆け寄った。よく転ばないで走っていけるな、と僕は思った。
「どうぞ」
跳び箱の中に入っていきながら猫バアさんが言った。その後に先生、そして、僕と続いていく。最初は天井が低かったけれど進んでいくうちに高くなって広い部屋に出た。
「え、ここって……交番ですか?」
驚いた。体育倉庫の奥は交番になっていたのだ。街中で見かける交番とまったく同じ作りだ。
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