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第1話 悪商人
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「別に心配してません。気になるだけです」
「お前は優しいな。大丈夫、悪商人は商品を集めている段階だったから、署に居るあやかしの特別な力を使えば目玉は元通りに戻るよ」
――良かった……。
「何も言ってませんよ?」
僕は心の中で「良かった」と言ったはずなのに、先生が何か言いたそうな顔でニヤニヤしてるものだから、ムッとした顔をした。
「良かった、って顔に出てるぞ?」
「なっ」
心が見えなくても先生にはバレてしまうこともあるようだ、反省。
「ん? 透キヨ、隠れてても分かるぞ? 仲間に入りたいのか?」
僕が唖然とした顔をしていると、急に先生が何もないところに向かって話し掛け始めた。屋上の扉が開いた気配はしなかったけれど、誰かが僕らの後ろに立っているらしい。
「やっぱ何度試してもダメかぁ。先輩は心が見えちゃうから俺の存在にすぐ気付いちゃうんですよね。というか、仲間には別に入りたくありません」
突然、声が聞こえたと思ったらシューッとスプレーで描いたみたいに男の人が目の前に現れた。昨日、先生と居た人だ。今日も黒い警察官の制服を着ている。
「見えちゃうってなんだ? 立派な能力だろう? そんな簡単みたいな言い方するなよな」
小さい子がすねてるときみたいな顔で先生が言う。
「はいはい。ああ、これが例の……」
そう言いながら、男の人は物珍しそうに僕の方を見た。
「これって言うな。新海だ」
「よろしく新海くん。俺、透キヨ、透明人間」
スッと僕の方に右手が差し出される。
「新海智也です。昨日はありがとうございました」
その手を握り返して、僕は透キヨさんの顔をまじまじと見つめてしまった。
昨日は気が動転していて、ちゃんと顔を見られていなかったけれど、ちょっと目つきが悪いヤンキーみたいな人だなと思ってしまった。短めの黒髪や服装はちゃんと整えられてるんだけど、雰囲気が少し怖い人って感じだ。
数秒間、お互いに無言で見つめ合ってしまい、急にパッと向こうから手が離れていった。そして、透キヨさんの視線が先生の方に向く。
「先輩、俺にもうあんなことさせないでくださいよ? ロッカーに入って得体の知れないバケモノのフリをするとか最悪です。俺、でかいガキ嫌いなんですよ」
突然、昨日、ロッカーに入っていたバケモノの正体が判明した。
「そのでかいガキ本人がいる前で言うな」
「てっ!」
透キヨさんは先生に頭を叩かれ、その場にしゃがみ込んだ。ちょっと可哀想だ。
「体罰っすよ? 先輩」
頭を両手で押さえながら、そう文句を言う透キヨさんを放ったらかしにして
「さて、新海、お前を一人にしない作戦を決行しよう」
まるで仕上げだ、とでもいうように先生はにっこりと笑った。
「お前は優しいな。大丈夫、悪商人は商品を集めている段階だったから、署に居るあやかしの特別な力を使えば目玉は元通りに戻るよ」
――良かった……。
「何も言ってませんよ?」
僕は心の中で「良かった」と言ったはずなのに、先生が何か言いたそうな顔でニヤニヤしてるものだから、ムッとした顔をした。
「良かった、って顔に出てるぞ?」
「なっ」
心が見えなくても先生にはバレてしまうこともあるようだ、反省。
「ん? 透キヨ、隠れてても分かるぞ? 仲間に入りたいのか?」
僕が唖然とした顔をしていると、急に先生が何もないところに向かって話し掛け始めた。屋上の扉が開いた気配はしなかったけれど、誰かが僕らの後ろに立っているらしい。
「やっぱ何度試してもダメかぁ。先輩は心が見えちゃうから俺の存在にすぐ気付いちゃうんですよね。というか、仲間には別に入りたくありません」
突然、声が聞こえたと思ったらシューッとスプレーで描いたみたいに男の人が目の前に現れた。昨日、先生と居た人だ。今日も黒い警察官の制服を着ている。
「見えちゃうってなんだ? 立派な能力だろう? そんな簡単みたいな言い方するなよな」
小さい子がすねてるときみたいな顔で先生が言う。
「はいはい。ああ、これが例の……」
そう言いながら、男の人は物珍しそうに僕の方を見た。
「これって言うな。新海だ」
「よろしく新海くん。俺、透キヨ、透明人間」
スッと僕の方に右手が差し出される。
「新海智也です。昨日はありがとうございました」
その手を握り返して、僕は透キヨさんの顔をまじまじと見つめてしまった。
昨日は気が動転していて、ちゃんと顔を見られていなかったけれど、ちょっと目つきが悪いヤンキーみたいな人だなと思ってしまった。短めの黒髪や服装はちゃんと整えられてるんだけど、雰囲気が少し怖い人って感じだ。
数秒間、お互いに無言で見つめ合ってしまい、急にパッと向こうから手が離れていった。そして、透キヨさんの視線が先生の方に向く。
「先輩、俺にもうあんなことさせないでくださいよ? ロッカーに入って得体の知れないバケモノのフリをするとか最悪です。俺、でかいガキ嫌いなんですよ」
突然、昨日、ロッカーに入っていたバケモノの正体が判明した。
「そのでかいガキ本人がいる前で言うな」
「てっ!」
透キヨさんは先生に頭を叩かれ、その場にしゃがみ込んだ。ちょっと可哀想だ。
「体罰っすよ? 先輩」
頭を両手で押さえながら、そう文句を言う透キヨさんを放ったらかしにして
「さて、新海、お前を一人にしない作戦を決行しよう」
まるで仕上げだ、とでもいうように先生はにっこりと笑った。
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