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第1話 悪商人
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「――遠藤昌子だ」
「……!? どうして、そこで遠藤が出てくるんですか?」
「遠藤が学校に来なくなった理由は、いじめだけじゃない。実は彼女にも会いに行ったんだが、可哀想に両目を失っていた。悪商人にやられたんだ」
哀れみの目がくっと細められる。
「冬木先生は遠藤から話を聞いて、みんなへの復讐のためにそれを使ったと?」
「そういうことだ」
先生は静かに頷いた。一つ、僕の中に疑問が浮かぶ。
「遠藤は真面目そうだったのに、どうしてあんなところに行ったんでしょう?」
「塾帰りに、とある男に話しかけられ、途端に心を操られたみたいに廃工場に行きたいと思って、気が付いたら足が動いていたらしい」
「それって先生じゃないんですか?」
先生が「みんな、ちゃんと授業受けろよ?」と言ったときから、クラスのみんなが授業をちゃんと受け始めたのがずっと怪しかったんだ。
「人聞きの悪いこと言うなよ。確かにちょっとは人の心を操れるが、俺じゃない」
――否定しないんだ?
「その男の見た目は?」
先生の発言は聞かなかったことにして、尋ねてみる。
「暗かったから分からなかった。やつは陰に居たらしい」
まるで先生は自分が見たような口ぶりで答えた。心を見るってそういうことなのだろうか?
「気になりますね。冬木先生はどうなるんですか?」
「どうもならない。俺たちはあやかしポリスだ。人間の悪さについては深く関われない。あの噂は残るだろうが、もうあそこに悪商人はいない。あそこは、ただの心霊スポットみたいな感じになるだろうな」
ふぅーっと先生は少し悔しそうに息を吐いた。
「そうですか。……あの、諸江や遠藤の目は戻らないんですか?」
「遠藤のことを心配するのは分かるが、いじめっ子のことも心配してやるのか?」
僕の言葉を聞いて、突然、先生はキラキラとした瞳を僕に向けた。
「……!? どうして、そこで遠藤が出てくるんですか?」
「遠藤が学校に来なくなった理由は、いじめだけじゃない。実は彼女にも会いに行ったんだが、可哀想に両目を失っていた。悪商人にやられたんだ」
哀れみの目がくっと細められる。
「冬木先生は遠藤から話を聞いて、みんなへの復讐のためにそれを使ったと?」
「そういうことだ」
先生は静かに頷いた。一つ、僕の中に疑問が浮かぶ。
「遠藤は真面目そうだったのに、どうしてあんなところに行ったんでしょう?」
「塾帰りに、とある男に話しかけられ、途端に心を操られたみたいに廃工場に行きたいと思って、気が付いたら足が動いていたらしい」
「それって先生じゃないんですか?」
先生が「みんな、ちゃんと授業受けろよ?」と言ったときから、クラスのみんなが授業をちゃんと受け始めたのがずっと怪しかったんだ。
「人聞きの悪いこと言うなよ。確かにちょっとは人の心を操れるが、俺じゃない」
――否定しないんだ?
「その男の見た目は?」
先生の発言は聞かなかったことにして、尋ねてみる。
「暗かったから分からなかった。やつは陰に居たらしい」
まるで先生は自分が見たような口ぶりで答えた。心を見るってそういうことなのだろうか?
「気になりますね。冬木先生はどうなるんですか?」
「どうもならない。俺たちはあやかしポリスだ。人間の悪さについては深く関われない。あの噂は残るだろうが、もうあそこに悪商人はいない。あそこは、ただの心霊スポットみたいな感じになるだろうな」
ふぅーっと先生は少し悔しそうに息を吐いた。
「そうですか。……あの、諸江や遠藤の目は戻らないんですか?」
「遠藤のことを心配するのは分かるが、いじめっ子のことも心配してやるのか?」
僕の言葉を聞いて、突然、先生はキラキラとした瞳を僕に向けた。
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