天乃ジャック先生は放課後あやかしポリス

純鈍

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第1話 悪商人

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「見てない。見てないのに……っ」

 僕は泣きそうになった。先生の未来は見てなかったのに、警察署でふざけて言ったことが本当のことになってしまった。僕と諸江がそうさせてしまったんだ。

「この馬鹿! 危ないところには近付くなって言っただろうが!」
「っ……!」

 大きな声を出されてびくりと身体が跳ねる。

「ごめ、ごめんなさい……」

 ポロポロと涙を流しながら僕は先生に謝った。

「諸江に無理矢理連れて来られたのは分かってる。でもな、お前も孤独から逃れるためにわざと自分から来たんだろう? 心が見えなくても俺には分かるぞ?」
「どうして……」

 そうだ。その通りだ。僕は一人が嫌だった。家でも学校でも孤独で、いじめっ子にいじめられる日々。危ないことをすれば誰かが気にして構ってくれると思ったんだ。

「悪いあやかしがいるってお前には俺が直接教えただろう? それにもかかわらず、お前はここに来た。みんなにも朝礼で妖怪やバケモノは本当に存在すると教えたが、他の奴らはここに来なかっただろう? 逃げただろう? みんなそうなると思ったんだよ。なのに諸江とお前は……」

 あれは先生の作戦だったのか。悪いあやかしのいる場所に生徒たちを近付けさせないために、わざと「本当に妖怪やバケモノは存在する」という新たな噂を僕ら生徒たちの前で作ったんだ。

「まったく……、心配したんだぞ?」

 先生は深く息を吐いて僕の顔を覗き込んできた。その表情は本当に僕を心配してくれていたみたいで、とても温かくて申し訳なくなった。

「ごめんなさい……っ」

 僕はまた泣きながら謝った。

 大人にこんなに真剣に怒られたのも、こんなに真剣に心配してもらったのも久しぶりだった。

「大丈夫、お前は一人じゃないよ」

 薄暗い廃工場で先生にもらった言葉は、とても明るく光っていた。
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