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第1話 悪商人
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「諸江、今朝、お前の親から俺あてに電話があったんだが……」
出席を取り終えた先生は諸江の方を見て言った。途中で言葉を切るのは、なんだか困ったことがあったからだろうか?
諸江の方を見てみると、なんだかニヤニヤしている。もしかすると、昨日言っていた通り、彼は自分の親に先生のことを言いつけたのではないだろうか? だから意地悪な表情で諸江は先生のことを見ているのでは?
——可哀想な先生。赴任二日目でクビになってしまうのかもしれない。
先生が再度口を開いたのは、僕がそう思ったときだった。
「息子をどうぞよろしくお願いします、って言われたよ」
ははっ、と爽やかに笑いながら先生は「改めてお願いされると照れるなー」と付け足した。
「なっ!」
諸江はそんなはずはない、という顔をしていた。おそらく、ちゃんと親には言いつけたのだろう。でも、どんなトリックを使ったのか、先生には通用しなかった。丸め込まれた。
「よろしくな、諸江」
そう優しく笑う先生を見て、ひそひそと何かを噂する声が聞こえてきた。クラスの女子たちだ。
「先生、よく見たらめっちゃイケメンじゃない?」
ひそひそと噂される中から、僕の耳はそんな言葉を拾い上げた。黄色い声というやつだ。クラスの女子が先生の格好良さに気が付いたのだ。
「さて、朝礼を終わりにしようと思うんだが、何か聞きたいとか言いたいとか、あるやついるか?」
女子たちの声に気が付いているのか、いないのか、先生はそんなことを言った。その貴重な機会を逃すまい、と女子たちのほとんどが手を挙げる。その光景に男子たちは驚いたような顔をした。
「こんなにいるのか? じゃあ、七瀬」
「か、彼女はいますか?」
僕の右隣に座っている七瀬さんが控えめに尋ねた。定番のやつだ。
「いない。次、望月」
つまらないほどの早さで即答して、先生は次を指名した。
「ずばり、好きなタイプは!」
先生の目の前に座る望月さんが元気に尋ねる。
出席を取り終えた先生は諸江の方を見て言った。途中で言葉を切るのは、なんだか困ったことがあったからだろうか?
諸江の方を見てみると、なんだかニヤニヤしている。もしかすると、昨日言っていた通り、彼は自分の親に先生のことを言いつけたのではないだろうか? だから意地悪な表情で諸江は先生のことを見ているのでは?
——可哀想な先生。赴任二日目でクビになってしまうのかもしれない。
先生が再度口を開いたのは、僕がそう思ったときだった。
「息子をどうぞよろしくお願いします、って言われたよ」
ははっ、と爽やかに笑いながら先生は「改めてお願いされると照れるなー」と付け足した。
「なっ!」
諸江はそんなはずはない、という顔をしていた。おそらく、ちゃんと親には言いつけたのだろう。でも、どんなトリックを使ったのか、先生には通用しなかった。丸め込まれた。
「よろしくな、諸江」
そう優しく笑う先生を見て、ひそひそと何かを噂する声が聞こえてきた。クラスの女子たちだ。
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ひそひそと噂される中から、僕の耳はそんな言葉を拾い上げた。黄色い声というやつだ。クラスの女子が先生の格好良さに気が付いたのだ。
「さて、朝礼を終わりにしようと思うんだが、何か聞きたいとか言いたいとか、あるやついるか?」
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「こんなにいるのか? じゃあ、七瀬」
「か、彼女はいますか?」
僕の右隣に座っている七瀬さんが控えめに尋ねた。定番のやつだ。
「いない。次、望月」
つまらないほどの早さで即答して、先生は次を指名した。
「ずばり、好きなタイプは!」
先生の目の前に座る望月さんが元気に尋ねる。
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