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第1話 悪商人
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「先生、ここ、警察署なんですか?」
「ああ」
「先生、警察官なんですか?」
「ああ、まあ、そんなところか」
「へぇ……え? 教師で警察官なんですか? 潜入捜査ですか?」
「まあ、落ち着けよ。カツ丼食うか?」
「いや、いらないです」
びっくりしてカツ丼どころではない。先生はどうして何食わぬ顔でいるのだろうか。
「先生、ちゃんと説明してもらえませんか?」
僕は膝の上に置いた自分の両手をぎゅっと握った。
「なら取引といこう。お前も何か隠してることあるよな?」
「なんのことですか?」
どきりとした。先生が言っているのは、きっと誰かの過去や未来を見るこが出来る僕の能力のことだ。僕は自分の能力のことが誰かにバレるのを避けてきた。みんなに気味悪がられるからだ。小学校低学年のときに何度か失敗したことがある。失敗すると僕は一人ぼっちになってしまう。
「隠しても俺には分かるぞ? お前、何か変な能力を持ってるんだろう?」
まっすぐな碧い瞳が僕を見つめている。
「能力ってなんですか? そんなもの持ってません」
「持ってない? なら、どうして俺が他人の心を見れるって知ってた?」
「へ?」
僕はポカンという顔をしてしまった。
「お前の心だけが見えないんだよ。俺は他人の心が見える。対象の人間に自分で〝俺は他人の心が見える〟と言えば効果は確実なものになって、一生その人間の心を見られるようになるが、先に知られていると効果が無くなる。ちなみに誰かが俺の能力をバラそうとすると勝手に口が閉じてバラすことは出来ない。お前はどうやって俺の能力のことを知った?」
先生が最初に僕の顔を見て感心したような表情をしたのはこれが理由だったんだ。僕は先生との出会いのシーンを元から見ていたから先生の能力を知っていた。だから、先生の能力は僕には効かない。
「さあ? たまたまじゃないんですか?」
僕はとぼけたように言った。バレると面倒臭そうだと思ったからだ。
「ここにもどうやって入り込んだ?」
「それも、たまたまじゃないんですかね?」
このままとぼけていれば先生も諦めてくれるだろう。僕がそう思ったときだった。
「分かった。他人の過去と未来が見えるんだろう?」
先生が真顔で正解を言い放ってきた。
「なっ」
「図星か?」
「ど、どうして……」
「心が見えないから適当に言ってみただけだ。当たったのか。運が良いな、今日は」
はっはっはー、と陽気に笑いながら先生が行儀悪くデスクに両足を乗せてきた。
「さて取引だからな。こちらのことも教えよう」
誰かに何かを教える格好ではないけれど、先生は説明を始めた。
「ああ」
「先生、警察官なんですか?」
「ああ、まあ、そんなところか」
「へぇ……え? 教師で警察官なんですか? 潜入捜査ですか?」
「まあ、落ち着けよ。カツ丼食うか?」
「いや、いらないです」
びっくりしてカツ丼どころではない。先生はどうして何食わぬ顔でいるのだろうか。
「先生、ちゃんと説明してもらえませんか?」
僕は膝の上に置いた自分の両手をぎゅっと握った。
「なら取引といこう。お前も何か隠してることあるよな?」
「なんのことですか?」
どきりとした。先生が言っているのは、きっと誰かの過去や未来を見るこが出来る僕の能力のことだ。僕は自分の能力のことが誰かにバレるのを避けてきた。みんなに気味悪がられるからだ。小学校低学年のときに何度か失敗したことがある。失敗すると僕は一人ぼっちになってしまう。
「隠しても俺には分かるぞ? お前、何か変な能力を持ってるんだろう?」
まっすぐな碧い瞳が僕を見つめている。
「能力ってなんですか? そんなもの持ってません」
「持ってない? なら、どうして俺が他人の心を見れるって知ってた?」
「へ?」
僕はポカンという顔をしてしまった。
「お前の心だけが見えないんだよ。俺は他人の心が見える。対象の人間に自分で〝俺は他人の心が見える〟と言えば効果は確実なものになって、一生その人間の心を見られるようになるが、先に知られていると効果が無くなる。ちなみに誰かが俺の能力をバラそうとすると勝手に口が閉じてバラすことは出来ない。お前はどうやって俺の能力のことを知った?」
先生が最初に僕の顔を見て感心したような表情をしたのはこれが理由だったんだ。僕は先生との出会いのシーンを元から見ていたから先生の能力を知っていた。だから、先生の能力は僕には効かない。
「さあ? たまたまじゃないんですか?」
僕はとぼけたように言った。バレると面倒臭そうだと思ったからだ。
「ここにもどうやって入り込んだ?」
「それも、たまたまじゃないんですかね?」
このままとぼけていれば先生も諦めてくれるだろう。僕がそう思ったときだった。
「分かった。他人の過去と未来が見えるんだろう?」
先生が真顔で正解を言い放ってきた。
「なっ」
「図星か?」
「ど、どうして……」
「心が見えないから適当に言ってみただけだ。当たったのか。運が良いな、今日は」
はっはっはー、と陽気に笑いながら先生が行儀悪くデスクに両足を乗せてきた。
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誰かに何かを教える格好ではないけれど、先生は説明を始めた。
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