天乃ジャック先生は放課後あやかしポリス

純鈍

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第1話 悪商人

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 急に僕の頭の中に映像が流れ出した。誰かの過去か未来だ。

 誰かの視点から見た景色で僕が通った道を通っている。住宅街のど真ん中、小さな十字路があってそこで『誰か』は足を止めた。そして、十字路に設置されているオレンジ色のカーブミラーを見上げる。そこに映っていたのは天乃先生だった。

「魔鏡の扉よ、悪なき正義のために開かれよ」

 先生はカーブミラーに向かって、そう唱えていた。

「うわっ」

 チリンチリンと自転車にベルを鳴らされて僕は我に返った。

 一体どういうことだろう? と元来た道を戻り、さっき見た十字路に立つオレンジ色のカーブミラーを見上げる。そこにはちょっと歪んだ僕が映っていた。たしか先生はこれの前で……

「魔境の鏡よ、悪なき正義のために開かれよ」

 先生がそうやったように、僕も唱えてみた。すると、急に鏡の部分がキラリと光って目の前がまぶしくなった。あまりのまぶしさに僕が目を開けられないでいると、ふいに声がした。

「新海?」

 僕の名前を呼ぶ声だ。まだちょっとチカチカする目をうっすらと開いてみると、僕の目の前には天乃先生が立っていた。

「お前、どうやってここに来た?」
「ここって? うわっ、なんですか、ここ!」

 驚いた顔をする先生の後ろに視線を向けてみると、そこには真っ黒な大きい建物があった。建物の形は学校の社会科見学で行った警察署に似ているなと思ったけど、この場所にはこの建物しかなかった。周りは白い煙のようなもやで覆われていて、何も見えないのだ。

「まあ、ちょっと話でもしようじゃないか」
「え」

 先生にがっと肩を掴まれて、僕は黒い大きな建物の中に連れていかれた。

 中は色々と窓口が分かれていて、よく見ると大きなやじろべえみたいな人形が各窓口に立っていた。

「ちょ、先生!」

 早くしろ、とでも言うように先生に手を引かれ、窓口以外にじっくりと中を見る余裕もなく、僕はとある部屋に引きずり込まれていた。取り調べ室だった。

 灰色のデスクを挟んでお互いに椅子に座る。切り出したのは僕からだった。
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