天乃ジャック先生は放課後あやかしポリス

純鈍

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第1話 悪商人

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 ◆ ◆ ◆

 ププーッ

 近くからクラクションの音がして、僕はハッと我に返った。

「危ねぇだろうが!」

 運転手がそう怒鳴って、僕の前をトラックが横切っていった。

 南浦中学一年、新海智也《にいのみともや》。今、僕は学校に向かってジリジリと照りつける通学路を歩いているところだ。

 僕には時折、人の過去や未来がフラッシュバックするように見えるときがある。視点もそれぞれ。自分の意思ではどうすることも出来ず、勝手に僕の頭の中で再生されるのだ。

 天乃ジャック先生……、おそらく僕はこれからあの人に会うことになるのだろう。

 ちなみに僕のクラスは——、学級崩壊している。

 学校の校門を通って、靴箱で上履きに履き替え、ドアを開けて騒がしい教室の中に入っていく。立って談笑している女子たちや椅子に後ろ向きに座って机に落書きをしている男子たちが、ちらっと僕の方に視線を向けてきた。そして、すっと目をそらす。

 僕は教室のちょうど真ん中にある自分の席に座った。

 このクラスではいじめがある。まず標的になったのが、窓際の一番後ろの席に座っていた遠藤昌子。名前が古くさいから、なんて酷い理由だ。彼女は一年の一学期中盤くらいから学校に来なくなった。

 二番目に標的になったのはクラス担任の冬木先生。黒縁眼鏡をかけた若い女の先生だった。声も小さくて気が弱い先生だったから新しい年度が始まって一ヶ月後くらいには誰も先生の言うことを聞かなくなって学級が崩壊、さらに先生への悪質ないじめもプラスされ、一年の一学期の終わり頃、つまり、今から三日前に先生は学校を辞めた。

 学級が崩壊してもみんなが教室に来る理由、それは家に居てもつまらないからだ。学校の授業はつまらない。でも、学校に来ればうるさい親の顔は見なくて済むし、退屈しのぎにはなる。そんな生徒ばかりだ。その中で僕が学校に来る理由といえば……
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