上 下
24 / 30
08 共闘作戦!?

8-3

しおりを挟む

 明里が『軽く』用意したのは三百グラムほどのパスタだった。
 自家製らしいミートソースにマッシュルームとピーマンとトマトを加えたもので、麺は二ミリを超える太いものだった。
 結局昇も少量を茹でてもらい、明里と一緒にテレビ近くのテーブルでの夜食となった。
 明里は火照った体を大きなロングTシャツで包み、左右に括っていた髪は解いてバスタオルで巻いて、頭の上に乗せている。
 エリーが持っていた端末を操作し、テレビに状況を映し出す。日本地図――関東近辺が拡大表示され、昇も明里も画面に視線を移す。
「さっき、調べてみたわ」
 フォークを動かしながら聞く二人に、エリーが話す。
「浅賀くるみ、こと『アルブム・スクミィ』が占有したエリア――ポイントが現在これだけあるわ」
 白い光点が六個、点灯する。
「もうこんなに!? だって、まだ二日でしょ?」
「昇のが、ここ」
 明里の驚きには答えず、エリーは続ける。
 地図上に黄色の光点が三個灯る。
「チアリィ――明里さんのが、これだけね」
 オレンジの光が四点、地図上に点く。
 合計十三個の光点はそれぞれ、近かった。
 特に白いものは昇の黄点を囲むような位置に、線を描いている。
「なるほど――スクミィを狙っていることが容易に想像できるな」
 ヒューが頷く。「明里のエリアを奪ったのも、そのためだろう。明里――」
「怒るよ、ヒュー」
 明里がフォークの先をヒューに向け、ヒューは黙る。
 明里の皿はほぼ空になっていた。
「これから、あの子がどこに行くか、よね」
 昇と明里の最後の一口は、ほぼ同時だった。
 明里が皿を引き上げ、水で簡単に流してからテーブルに戻る。ウェットティッシュで口を拭き、それを昇にも勧めた。
「ふたつ、考えられるわ」
 エリーが言う。
「アルブム・スクミィの狙いが『昇のエリアの包囲』なら、次に狙いそうなポイントへ行って待ち伏せするのがひとつ。
 もうひとつは、占有エリアへ攻め込み、防衛に来るだろう彼女を迎え撃つか」
「――どっちもどっちね」
 薄い色のリップスティックを塗りながら、明里は画面の光点を片目を閉じて追っていた。
「ひとつめは、ポイントが二箇所以上あるから待ち伏せが空振りになるかも。
 ふたつめは、防衛に来ないかも知れないし、さっき昇くんがしてた『塞護措置』済みかも」
 昇は眼鏡を直して明里を見る。
「意外? これでも高校生だよ、ちょっとは考えるって」
 明里はそう言って、昇の唇にもリップスティックを付ける。
「昇くんはどうする?」
「んもっ……ぼ、僕は」
 リップスティックを塗られて、ややオレンジピンク気味の艶をまとった唇を昇は舐める。
「僕は――攻める方がいいと思う……思います」
 昇は、ためらいがちに言った。
「魔力を弱くしたら、浅賀さんが正気に戻るかも知れない――から」
 それで、と三人の注目をあびて昇はやや焦りを見せつつ続ける。
「もし『塞護措置』されてたら他の所に行くか、待ち伏せに切り替える、とか……。エリーはポイントの場所、判るんだよね?」
 エリーが「まあ、ね」と頷くのを見て、明里も首を縦に振る。
「ま、それが妥当なところよね。どこに行くか、手分けするかはともかくとして――」
 明里はそこで、昇に膝がつく場所まで近寄る。
 風呂上がりの熱気の残りと、リンスと明里の体から生まれる甘さのある香りが昇の鼻腔をくすぐり、昇の鼓動と頬の赤みを一瞬で高めた。
「の・ぼ・る、くん――いや、のぞみちゃん、あたしはのぞみちゃんの事が聞きたいなぁ」
 猫のように体を柔らかく曲げ、昇を見上げる位置から明里が言う。
「あたし『女の子モード』ののぞみちゃんと話したいなぁ」
 昇は頬をひくひくと震わせて、笑顔とも狼狽ともとれる表情を見せていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

お兄ちゃんは今日からいもうと!

沼米 さくら
ライト文芸
 大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。  親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。  トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。  身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。  果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。  強制女児女装万歳。  毎週木曜と日曜更新です。

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

二十歳の同人女子と十七歳の女装男子

クナリ
恋愛
同人誌でマンガを描いている三織は、二十歳の大学生。 ある日、一人の男子高校生と出会い、危ないところを助けられる。 後日、友人と一緒にある女装コンカフェに行ってみると、そこにはあの男子高校生、壮弥が女装して働いていた。 しかも彼は、三織のマンガのファンだという。 思わぬ出会いをした同人作家と読者だったが、三織を大切にしながら世話を焼いてくれる壮弥に、「女装していても男は男。安全のため、警戒を緩めてはいけません」と忠告されつつも、だんだんと三織は心を惹かれていく。 自己評価の低い三織は、壮弥の迷惑になるからと具体的な行動まではなかなか起こせずにいたが、やがて二人の関係はただの作家と読者のものとは変わっていった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

☆男女逆転パラレルワールド

みさお
恋愛
この世界は、ちょっとおかしい。いつのまにか、僕は男女が逆転した世界に来てしまったのだ。 でも今では、だいぶ慣れてきた。スカートだってスースーするのが、気になって仕方なかったのに、今ではズボンより落ち着く。服や下着も、カワイイものに目がいくようになった。 今では、女子の学ランや男子のセーラー服がむしろ自然に感じるようになった。 女子が学ランを着ているとカッコイイし、男子のセーラー服もカワイイ。 可愛いミニスカの男子なんか、同性でも見取れてしまう。 タイトスカートにハイヒール。 この世界での社会人男性の一般的な姿だが、これも最近では違和感を感じなくなってきた。 ミニスカや、ワンピース水着の男性アイドルも、カワイイ。 ドラマ やCM も、カッコイイ女子とカワイイ男子の組み合わせがほとんどだ。 僕は身も心も、この逆転世界になじんでいく・・・

トリビアのイズミ 「小学6年生の男児は、女児用のパンツをはくと100%勃起する」

九拾七
大衆娯楽
かつての人気テレビ番組をオマージュしたものです。 現代ではありえない倫理観なのでご注意を。

処理中です...