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第3章 北の大国フェーブル
第120話 ロゼの帰還【完】
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ふたたび、シュウィツア一行から離れて農村部の人が歩ける程度の細い道を進むウルマノフ一行。
「なあ、お前はそれでいいとして、姉さんの方は大丈夫なのかな?」
ヴォルフが再びサフィニアに尋ねた。
「大丈夫かって?」
「ヴィオレッタ嬢を虐めていたやつらが罪に問われたのはいいが、彼女が家族に恵まれず一人である状態は変わらないじゃないか。血のつながりはなくてもせっかく姉妹でうまくいきそうな矢先に……」
「なによ、そんなにあたしがついてくるのが嫌なの?」
「そうじゃねえよ」
ヴォルフとサフィニアが問答をしていた矢先、彼らのそばに突然人が現れた。
「あ、ロゼ、やっと来た、遅かったわね」
クロとロゼは互いのいる場所に瞬間移動できる、その能力を使ってフェーブル王宮に残っていたロゼがようやく彼らのと頃にやってきたのだった
「ごめんね、みんなが無事国境を超えるまでフェーブル王を見張ってたから。ほら、急に気が変わってヴィオレッタを引き留めたりしたらあれでしょ」
ロゼが説明をした。
「警戒していたのか」
ヴォルフが言った。
「ええ、王妃の進言とは言え『王命』とか言ってヴィオレッタを束縛しようとした人だもの。それに息子との婚約は無しになったけど、ダリア王妃を失った国王が直接ヴィオレッタを娶ることもできる、それに気づいたらまずいと思ってね」
「年甲斐もなく求婚するクソジジイもいたしね」
「でも、ダリアの告白を聞いてそれを消化するのでいっぱいいっぱいだったようで、それは杞憂に終わったわ。ただ、私がカレンに会ったことあるってうっかり漏らして、そしたら彼女の話を聞きたがってなかなか離してくれなかったのよ」
「カレン?」
「エルシアン王国の王太子妃、フェーブル王の第一王女なのよ」
「もうちょっと早ければ、ユーベルたちとも話ができたのにね」
クロが惜しそうに言った。
「まあ、仕方がないわ。事件は無事解決したんだしなんだかんだで幸せになれるでしょう、あの二人は」
「それってロゼの勘?」
「ええ、まあ」
「ロゼはそういうけど、それはちょっと楽天的かもしれないわよ。ユーベルはヴィオレッタにぞっこんみたいだけど、ヴィオレッタの方は、今回の件もせいぜい王家の人間の義務でやったくらいに解釈しているのよ」
「あらら」
「お姉さまってダメンズ好きではなかったけど、激ニブ女子だったのね」
サフィニアが二人、いや一人と一匹の話に加わってきた。
「あの兄さんも前途多難だな」
ヴォルフも加わって感想を漏らした。
「若いもん同士、すれ違いながら歩み寄るのも人生じゃ」
老魔導士ウルマノフも言った。
精霊ロゼがかつて人間だった頃のなじみだった人々はもうこの世にはいない。
その代わり彼らの血を引く若者たち、自分と同じく虐待や男女の裏切りや前世の記憶に悩んだ者たちの力に、ほんの少しだがなることができた。
そんな精霊ライフも悪くない。
ロゼは相棒クロをサフィニアから受け取りながら感じるのであった。
ー完ー
【作者あいさつ】
ヴィオレッタとユーベルどうなった?
たぶん大丈夫でしょう。
精霊ウルマフこと老魔導士ウルマノフは、精霊仲間には正体が知られているけど、人間たち(サフィニアやヴォルフやその他)にはあくまで人間として通していましたね。さっさと正体ばらして帰っていったネイレスとは大違い。
それは、まあ、各々の性格や信条の違いです。
なにはともあれ、ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。
「なあ、お前はそれでいいとして、姉さんの方は大丈夫なのかな?」
ヴォルフが再びサフィニアに尋ねた。
「大丈夫かって?」
「ヴィオレッタ嬢を虐めていたやつらが罪に問われたのはいいが、彼女が家族に恵まれず一人である状態は変わらないじゃないか。血のつながりはなくてもせっかく姉妹でうまくいきそうな矢先に……」
「なによ、そんなにあたしがついてくるのが嫌なの?」
「そうじゃねえよ」
ヴォルフとサフィニアが問答をしていた矢先、彼らのそばに突然人が現れた。
「あ、ロゼ、やっと来た、遅かったわね」
クロとロゼは互いのいる場所に瞬間移動できる、その能力を使ってフェーブル王宮に残っていたロゼがようやく彼らのと頃にやってきたのだった
「ごめんね、みんなが無事国境を超えるまでフェーブル王を見張ってたから。ほら、急に気が変わってヴィオレッタを引き留めたりしたらあれでしょ」
ロゼが説明をした。
「警戒していたのか」
ヴォルフが言った。
「ええ、王妃の進言とは言え『王命』とか言ってヴィオレッタを束縛しようとした人だもの。それに息子との婚約は無しになったけど、ダリア王妃を失った国王が直接ヴィオレッタを娶ることもできる、それに気づいたらまずいと思ってね」
「年甲斐もなく求婚するクソジジイもいたしね」
「でも、ダリアの告白を聞いてそれを消化するのでいっぱいいっぱいだったようで、それは杞憂に終わったわ。ただ、私がカレンに会ったことあるってうっかり漏らして、そしたら彼女の話を聞きたがってなかなか離してくれなかったのよ」
「カレン?」
「エルシアン王国の王太子妃、フェーブル王の第一王女なのよ」
「もうちょっと早ければ、ユーベルたちとも話ができたのにね」
クロが惜しそうに言った。
「まあ、仕方がないわ。事件は無事解決したんだしなんだかんだで幸せになれるでしょう、あの二人は」
「それってロゼの勘?」
「ええ、まあ」
「ロゼはそういうけど、それはちょっと楽天的かもしれないわよ。ユーベルはヴィオレッタにぞっこんみたいだけど、ヴィオレッタの方は、今回の件もせいぜい王家の人間の義務でやったくらいに解釈しているのよ」
「あらら」
「お姉さまってダメンズ好きではなかったけど、激ニブ女子だったのね」
サフィニアが二人、いや一人と一匹の話に加わってきた。
「あの兄さんも前途多難だな」
ヴォルフも加わって感想を漏らした。
「若いもん同士、すれ違いながら歩み寄るのも人生じゃ」
老魔導士ウルマノフも言った。
精霊ロゼがかつて人間だった頃のなじみだった人々はもうこの世にはいない。
その代わり彼らの血を引く若者たち、自分と同じく虐待や男女の裏切りや前世の記憶に悩んだ者たちの力に、ほんの少しだがなることができた。
そんな精霊ライフも悪くない。
ロゼは相棒クロをサフィニアから受け取りながら感じるのであった。
ー完ー
【作者あいさつ】
ヴィオレッタとユーベルどうなった?
たぶん大丈夫でしょう。
精霊ウルマフこと老魔導士ウルマノフは、精霊仲間には正体が知られているけど、人間たち(サフィニアやヴォルフやその他)にはあくまで人間として通していましたね。さっさと正体ばらして帰っていったネイレスとは大違い。
それは、まあ、各々の性格や信条の違いです。
なにはともあれ、ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。
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